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タンホイザー [PH]

言ってもせんない繰り言ですが、それにしても、P.ホフマンがタンホイザーを演じずに済んでしまったのが、なんとも残念です。ワーグナーのテノール役のうちで、一番後回しにしていた役だったわけです。アリア集で、「ローマ語り」を聴くことができますが、ぜひとも全曲を聴きたいという気持ちにさせられます。ということで、「ローマ語り」と「リエンチの祈り」へ、こちらからどうぞ・・・

We Need a Hero の著者の思いのあふれた(あふれすぎた?^^;)詳細な解説を紹介しましょう。もちろん、同感だからです。

  ......同じリサイタル盤に入っているタンホイザーのローマ語りは、録音されたこのモノローグの中でも明確な主張が最高にわかりやすい演奏のひとつである。ホフマンは、表現力に富んだ朗唱を音楽的で豊かなフレージングと結びつける。彼は言葉の意味を際立たせる。聴き手の心をしっかりと捕らえる独特のアクセントを独自に創り出している。

彼は、録音という実態のない条件下でさえ、心の中にある信念を具体的にまざまざと感じつつ歌う。そしてまた、彼は、ワーグナーが劇的な激しさと、美しい歌唱を同じレベルで求めていることを一瞬たりとも忘れることがない。彼はその声を、闇のような暗さから金色の輝きにいたる色調の幅広い範囲のなかで彩り、その音色は、成熟して、ゆとりがある。彼の声は、むらなのない発声で出され、終始一貫して、緊張してこわばることなくのびやかである。  

 ホフマンはこの物語を、絶望感と皮肉と精神的な苦痛の入り交じった声で始める。巡礼の旅の様子を物語るとき、このモノローグを反抗心あふれる怒りの行動の一環に組み込む。教皇に対する狂ったように激しい非難には悪魔的な力が宿っているようだ。in Venusberg drangen wir ein!(さあ、ヴェーヌスの国に私を入れてくれ)の狂乱の叫びは壮観だ。

ホフマンの歌うDa ekelte mich der holde Sang(美しい歌声が私を嫌悪感で満たした)のような旋律は忘れ難い。それは、カトリック教徒的期待が裏切られたことに対する落胆の気持ちでいっぱいだ。そして、彼自身の不安定な成り行き任せの状態が露になる。動物的な哀願の叫び声は、荒々しく、狂気に満ち、徹頭徹尾壮大だ。

ホフマンのタンホイザーは(この重要な部分で証明されているように)堂々とした強さと脆さの両方を兼ね備えている。非現実的な反抗心が際立つ人物である。その怒りは神話的様相を示し、その強い信念は魅力的で、その訴えかけは魅惑的だ。その一方で、彼は深く傷つき、猛烈に恋いこがれる、絶望的なほどに孤立したひとりの人間だ。どちらの状況でも、ホフマンのタンホイザーは抗し難い魅力を発散する。ホフマンは彼の先輩たちのだれよりも魅惑的で、破滅に至る人物だからと言って、惨めとも哀れとも感じさせず、むしろ、人を魅惑し惹き付ける、ある意味、ぞっとするような、しかし、ブレイク的なエネルギーによって気高いまでに人をひきつけてやまない官能的な性質をタンホイザーに与えることができるように思われる。(William Blake (1757-1827) イギリス  ロマン派の画家。詩人としても知られる。ロマン主義の先駆者。20世紀になって、評価された).............

急にその気になって、目下来日中のミュンヘンの「タンホイザー」に行きました。昨日、紹介した映像と同じ演出の上演です。続きます・・・

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コメント 4

ぴっぽ

ルネ・コロも確か、タンホイザー後回しにしていましたよね。
ジークフリート(ジークムント)やトリスタンより
難しいのかもしれませんね、この役って。
by ぴっぽ (2005-09-29 17:37) 

euridice

一幕の歌、装飾音付きって感じで、あの派手さが決まらないと、欲求不満になりますね・・・ ミュンヘン来日のタンホイザーがそういう感じで、なんだかもやもやしちゃいました^^;
by euridice (2005-09-30 21:49) 

Mimi

こんばんわ.
タンホイザー,ワーグナーの中で2番目に難しい役だそうです.
(1番はダントツでトリスタン)ジークフリートは声の力と体力さえもてば
なんとかなるのだそうです.
(以上,コロのトリスタン来日公演の時のグランド・オペラ誌のインタビューより
手元に現在この本がないのでちょっと違うかもしれません)
確かに1幕と3幕とで要求されるものが違いすぎますし(椿姫に通じるものがある),おいしいアリアのある恋敵役や相手役がいっぱい出てくるし,オケは大音量だし,これで魅力的に演じようと思ったら相当きついですよね.
ちなみにコーラスも難しいんだ,これが.
(巡礼の合唱を日本語で歌ったことがありますがかなり沈没していました.
なんか平気ですごい低い音とか不協和音とかいっぱいあるし.)
タンホイザーの名演に出会うこと自体が,奇跡に近いよなあと思います.
by Mimi (2005-10-01 18:50) 

euridice

Mimiさん
なるほど・・ 
興味深いコメント、ありがとうございます。
by euridice (2005-10-01 23:25) 

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