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カラヤンとのオランダ人&ローエングリン [PH]

Wagner: Der Fliegende Hollander2003年発行の伝記から引用の続きです。

「私たちはかなり頻繁に一緒に仕事をしたが、いつもとても素晴らしかった。カラヤンの希望で、1984年に発売されたさまよえるオランダ人の録音でエリックまでも歌った。エリックという人物には全く共感できなかったので、この役はいつも断っていた。舞台に飛び出して、『ゼンダ、言ってくれ、私はいったいどうしたらよいのだ』と叫ぶ男とはいったい何だろうか。理解できない。そこで、私は声によってだが、エリックを、捨てられた恋人ではなく、ゼンタのことを心配する友だちとして表現しようと試みた。エリックはゼンタを愛していて、間違いから守りたいのだ。しかし、やはり舞台ではこの役は歌いたいとは思わない。 

カラヤンとの最後の仕事は、ローエングリンだった。カラヤンはすでに非常に体調が悪かった。途方もない苦痛を抱えていたにちがいない。催眠状態にあるような印象だったし、スポットライトのせいだったのか、それとも何か別の理由だったのか、わからなかったが、とても奇妙に見えた。いずれにせよ、奇妙な感じの暗い影に囲まれた白眼が、ほんとうに無気味に見えた。それから間もなくカラヤンは亡くなった。」(ペーター・ホフマン)

カラヤンとのローエングリン、1984年ザルツブルク復活祭音楽祭の公演は、評論家が全員一致というほどの肯定的反響を得たということです。これはめったにないことだとか。この公演はラジオ放送があり、未発売音源が存在するということです。是非、発売してもらいたいものです。追記1984年ザルツブルク復活祭音楽祭のラジオ放送

カラヤン指揮・演出、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、テルツ少年合唱団
エルザ:アンナ・トモワ=シントウ
オルトルート:ドゥニャ・ヴィエソヴィッチ
ローエングリン:ペーター・ホフマン 
テルラムント:ジークフリート・二ムスゲルン
伝令:フランツ・グルントへーバー
国王:クルト・モル
貴族たち:フォルカー・ホルン、イムレ・レメニル、ジェイムズ・ジョンソン、アルフレート・ムフ

さまよえるオランダ人の録音は、EMIからCDが発売されています。
カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
オランダ人:ジョゼ・ヴァン・ダム
ゼンタ:ドーニャ・ヴェイソビッチ
ダーラント:クルト・モル
マリー:カヤ・ボリス
舵取り:トーマス・モーザー
エリック:ペーター・ホフマン

これは、1983年ザルツブルク復活祭音楽祭での公演に関連したスタジオ録音ですが、ゼンダ、エリックは実際に舞台に立った歌手が違います。公演ではゼンダは、カタリーナ・リゲンツァ、エリックはライナー・ゴールドベルクだったそうです。ヴェイソヴィチは出産のためということですが、ホフマンはなぜ出演しなかったのだろうと思っていました。最近になって伝記を読んで、理由がわかったわけです。

この録音、音量の幅がかなり広く、大音量で聴けばいいのですが、音を絞ると聞こえない部分が生じるというわけで、音量調節が難しいのが難点です。しかし、たとえば、序曲のめりはりの良さというか、ダイナミックさには聞き惚れてしまいます。あのティンパニーの鳴るタイミング、勢いは独特のような気がします。

もう一カ所、特に気にいっているのは、フィナーレ間近、エリックをはじめ、大勢がゼンダを引き止めようと呼びかけますが、あの合唱、そして、必死でゼンダの名を呼ぶエリックの声が合唱を超えて響くのが、なんとも言えません。

非常に暗い陰鬱な雰囲気のオランダ人も気にいっていますし、はじめのほうの能天気なダーラントとの掛け合い二重唱もたまらなく好きです。

舵取りの若々しい声も非常に美しく響きます。それに比べて抑えた感じの、より男性的なエリックの声と歌、しびれます。オランダ人の絵姿に魅入られたゼンダには虚しく響くだけというわけですが、私にはとても魅力的に響きます。


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keyaki

記事と関係なくて申し訳ありませんが、ミュージックバトンなるものが回っていまして、edcさんに回したいと思います。いくつかの質問に答えて、次の5人にバトンを回すということになっているようです。私の記事をご覧下さい。
http://blog.so-net.ne.jp/keya ki/2005-07-04
宜しくお願いします。
私のミュージックバトンの記事をTBします。
by keyaki (2005-07-06 04:34) 

わびすけ

上記のローエングリンはぜひ聴いてみたいです。最近ORFEOなどからザルツブルクやバイロイトの放送音源が復活しているので、期待したいですね。

オランダ人のほうは、そのEMIの録音とヴァン・ダムがネックでどうしても買えずに、今に至っています。カラヤンの80年代のオペラということも大きな障害です。でもいい機会ですので、手に入りましたらじっくり鑑賞してみたいです。
by わびすけ (2005-07-06 19:02) 

keyaki

>わびすけさん、はじめまして。
イタオペ専門というか、ルッジェーロ・ライモンディ専門のkeyakiと申します。ドイツものには弱いのですが、ずうずうしくedcさんのブログに顔を出しています。よろしくお願いします。
>ヴァン・ダムがネック
ということは、R・ライモンディもネック?それともご存じないのかしら? それはともかくとしまして、
実は、昨年、ライモンディがオランダ人を歌うとういうので、カラヤンのオランダ人のCDを買いました。これを選んだ理由は、私にはお馴染みの歌手、ジョゼ・ヴァン・ダム、クルト・モル、ペーター・ホフマン、三人も知っている歌手が歌っているからなのですが・・・・
単なる好奇心なのですが、ネックとか、障害とか、具体的に教えて頂ければ、嬉しいのですが。
わびすけさんは、ヒストリカル派ですか?
by keyaki (2005-07-07 19:42) 

わびすけ

>keyakiさん
はじめまして。なかなかお返事できなくて、申し訳ありません。とてもこちらのブログ重くて…先日edcさんに誘っていただいて、こちらに舞いこんできてしまいました。どうぞよろしくお願いします。

私がオペラに入ったのは普通にカラスの「椿姫」を聞いたのがきっかけですので、イタリアオペラのほうがお付き合いは長いです。ライモンディには詳しくありませんが、何点かは聞いていると思います。今思いつくのはアバド盤「ドン・カルロ」のフェリペでしょうか…最近「ドン・カルロ」聴いたので。レパートリーが広くて、非常に演技力のある方という印象です。きっとオランダ人も深い表現の歌唱になるのでしょうね。

>ヒストリカル派

そうですね…年齢のわりに古いかもしれません。もし海外在住で気軽に実演に接することができていたら違ったでしょうが、映像は見るものの、どうしてもCD中心の鑑賞になってしまって。オペラをどう聴くかにもよると思うのですが、私はセラフィンやケンペといった、歌唱を重視した歌劇場風の指揮が好きなのです。カラヤンも60年代まではライブ録音も多くて、若々しく才能にあふれていて、比較的なじめるのですが、70年代以降になってくると録音である程度演奏が加工されてしまいますし…よくも悪くも彼中心のシンフォニックなサウンドで、歌手は彼の楽器の一部、という感じが今ひとつしっくり来ないのです。

ヴァン・ダムについては、これはもう個人的に好きな歌手ではないだけです。オペラ以外に第九なども聴いていますが、だめでした。クルト・モルやホフマンは大丈夫ですが、肝心のタイトルロールが自分の好きではない歌手だと、どうしても買えなくて。高いですから、ワーグナーのオペラ(笑)。

長くなってしまい、すみませんでした。乱文、どうぞお許しください。
by わびすけ (2005-07-08 09:40) 

keyaki

>わびすけさん、本当にソネットさんどうしちゃったのでしょう。ブログ大流行りで、後手後手にまわっているのでしょうか?

ヴァン・ダムは、どちらかというと教科書的な歌唱の人と思っていましたので、ネックという意味がイマイチわかりませんでした。好みではない・・・と書いて頂ければ、あえて質問はしなかったのですが、お答え頂きまして恐縮です。

>歌手は彼の楽器の一部、という感じが今ひとつしっくり来ないのです。
それはちょっと違うと思います。歌手さん達自身、そういう風に思ってないようです。もちろんカラヤンの好みの歌手が選ばれているわけですが・・・・
そのように言われているのはムーティではなかったですか?

私もライブ録音のほうが臨場感があって好きです。
たとえば、カラヤンは舞台と平行してレコーディングする主義だったようですので、アイーダとかトスカとか両方聴けますので、私は両方楽しんでいます。

ライモンディのオランダ人は実現しませんでした。4ヶ月間全公演キャンセルだったんですよ。
by keyaki (2005-07-09 23:24) 

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