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パルジファル、カラヤンの録音&ジーバーベルク監督の映画 [PH]

Parsifal / (Sub)ワーグナーの最後の作品、なじんでしまえば、なんとも魅力的な音楽なのですが、はじめは、とっつきにくいものでした。実はレーザーディスクというものが出始め、雑誌で読んだ紹介文に引かれて、ジーパーベルク監督「パルジファル」を買ったのでした。レンタル・ビデオの映画にどっぷりのころで、普通の映画だと思い込んでいました。紹介文をちゃんと読まなかったのか、紹介文がいい加減だったのか、どっちでしょうか。再生してびっくり仰天、一体何だというわけで、お蔵ならぬ、押し入れに押し込んで、忘れました。

そして、思いがけず、オペラ鑑賞が趣味になる日が来ました。ワーグナーは、ローエングリン、ニーベルングの指環、トリスタンとイゾルデ、さまよえるオランダ人、パルジファル の順でした。バイロイト音楽祭のレーザーディスクも観たのですが、残念ながら引き込まれることはありませんでした。

ホルスト・シュタイン指揮 W.ワーグナー演出 バイロイト音楽祭 1981年収録 
パルジファル:ジークフリート・イェルザレム 
クンドリ:エヴァ・ランドヴァ 
グルネマンツ:ハンス・ゾーティン 
アンフォルタス:ベルント・ヴァイクル

このプロダクションは1976年、1981年、1988年にペーター・ホフマンがパルジファルとして出演したものと同じだと思います。パルジファルいろいろ

Richard Wagner: Parsifalそして、これこそペーター・ホフマンが出ているからという理由で買ったのが、カラヤン指揮のCD(ドイツ・グラモフォン)だったわけです。美しい曲だと思いましたが、物語が不可解なのがもどかしかった。その時、思い出したのが、あの映画。押し入れからひっぱり出して観ました。どうも顔と声が合わない感じがあるのがいけないと思い、音を消して、画面を眺めながら、カラヤンのCDを聴いてみました。これが意外によかった。ホフマンの声は、あの馬鹿っぽい少年パルジファルにも、クンドリーの接吻によっていきなり成長して優等生っぽい少女に変身したパルジファルにもぴったり合って違和感がないじゃないですか。解説にカラヤンのかバイロイトの演奏を監督は使いたかったが拒否されたとありましたが、カラヤンのがつかえていたら、ずっといい映画になっていただろうと妄想してしまいます。物語も次第に私の中でまとまりを持ち始め、音楽的感動と物語的感動が、調和し、最終的に一致しました。一人の人間の成長物語としてみるとき、奇妙きてれつな筋建ても違和感なく受け入れられます。ということは、パルジファルは、声も姿も、はじめから成熟・老成してては困るわけです。
この映画のクンドリーは一流の舞台女優が演じており、さすがに美しく、妖しく、やはり、人物像が確定しにくいこの女性に、まだ100%ではないにしても、実態を与えていると感じられます。声ですが、ミントンの声でいいのですが、CDのヴェイソヴィチのヒステリックさのほうが、より表情に調和するような気がします。
グルネマンツは、歌手が演技も担当していますが、妙に若いというか、バスにこんな形容はおかしいのですが、雰囲気的に甲高い声に違和感があります。あくまで印象です。パルジファルのゴールドベルクの声は、少年のときも、少女になるとなおさら違和感がきついです。
アンフォルタスはなんとサウンドトラックの指揮者が演じているのですが、なかなか狂おしい感じがいいです。声もよく合っています。と思って、今頃、歌手を確認したんですが、なるほどけっこう好きな歌手、ヴォルフガング・シェーネでした。CDのヴァン・ダムでも大丈夫。

アルミン・ジョルダン指揮 ジーパーベルク監督映画 1981
パルジファル:ライナー・ゴールドベルク 
クンドリ:イヴォンヌ・ミントン 
グルネマンツ:ロバート・ロイド 
アンフォルタス:ヴォルフガング・シェーネ


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TARO

全然違うジャンルですが、似たようなことを私もやったことがあります。
ケン・ラッセル監督の「クライムズ・オブ・パッション」の音楽(リック・ウェイクマンが担当して新世界よりの旋律をロック風に編曲)が、気に入らなかったので、ところどころ音声をセリフごとスパッと切ってそこにプッチーニのソプラノ・アリアをあてはめ、映像もその部分だけモノクロにしてみました。
なかなか良かったです。
by TARO (2005-07-06 10:34) 

武神妖虎

是はフランスのカフェテリア内臓(?)の映画館で見ました。
長いものでパルジファルの彷徨の際に休憩(インターヴァル)が入る感じです。
カフェテリアが自体がせせこましくなく割りに広く作ってありアメニティ度はかなり高かったです。そこでチョコチョコ前の画像が如何たらこうたらとエクスプレッソを飲みながら議論し次の開始時間まで過ごすというパターンでした。
 また脱線しましたが、これはとても好きな作品です。
エクスカリバーの熱覚めやらぬワーグナー浸りの生活を送っていた頃にこの作品と出会い最初があの血のようなジャムを流す饅頭は何?とか日本語の文献その他全くない状態で見たものですから全然理解できませんでした。
 最初見た感じはジークフリートの焼き直しというイメージがあったのですが、二階三回と通ううちに、ジークフリートの最終進化形だと思うようになりました。
 指環ではジークフリートは世界平和をもたらすのに失敗し、その失敗ゆえにブリュンヒルデが引継ぎ平穏(Ruhe)を得るものですが、ジークフリートが決して得られなかった共悩をクンドリーの口付けによって目覚め、靄に掛かったような人生が一転して晴れ渡り、客観的に眺める事の出来る知性を手に入れ、自分の使命を知った男の成長物語でありそして其の使命を果すべく還ってきた人間の賛歌であると。
 最初は例の饅頭がなんだかよく分からなかったけれどアレがアムフォルタスの疵口で癒える事のない業を背負った心も現しているのかと(後半少々思いいれすぎ勘繰り過ぎかも)クンドリーの口付け以降女性に変化するのは魂の完全化を表現しているのだろうなと、ロンギヌスの槍が途中途中で白鳥の頭に変化しているのはパルジファルの原罪かとか・・・・・中々面白かったのはワーグナーのデス・マスク上で展開するストーリィ。クリングゾルの魔宮が崩壊以後バラバラになって現れます。(これはペーター・ホール?だっけ?(記憶メモリが半分死んでますのでお許しを)ジークフリートで使ってました)
 劇場でなんも前知識も無くパルジファルを観たらアムフォルタスがやたらうなっていて前後が良く分からず仕舞いでしたでしょう。
 アムフォルタスとクンドリーの経緯が人形劇になって挿入されてたり、癒える事ない瑕が具体的な実例として表現されパルジファルの魂の変化をダブルキャストで現してあったり、是でもかというくらいの至れり、尽くせりジーバーベルクの親切ぶりはともするとパルジファルを良く知る者の反感を呼び起すかもしれませんが知らない人も知っている人も観ておいて損はありません。
by 武神妖虎 (2005-07-06 10:34) 

euridice

お入りになれたんですか?!よかった.....運がいいですよ!( ´ー`)丿

TAROさんも、こういうことをやるんですねぇ^^;
うれしくなってしまいます.......................

妖虎さん
この記事のために、とりあえず外国版があるのは知っていたので、アマゾンのDVDを検索しました。で、また妖虎さんに遭遇!ですね^^;
ご意見同感です。目下手に入るどの舞台収録映像より、はるかに本質が伝わってきますよ...................... カラヤンのCDと合わせるとなお感動が深まること請け合いです=====○`ε´○)
by euridice (2005-07-06 10:48) 

coyote

妖虎さんのコメントに「共悩」という言葉が出てきたので、便乗します。
地元で「パルジファル」の実演を観ました際に、字幕で、「共悩」の代わりに、「共苦」という言葉が使われていたので、その時は何とも歯がゆい思いをしたのです。「共悩」と言う言葉は、ワグネリアンの間では周知の言葉であり、それをわざわざ別の言葉にする必要があるのか、と。でも、しばらくして考えて見ますと、「苦」というのは、アンフォルタスが槍で刺された苦しみであり、悩みではなく、まさに苦しみ。その痛みを感じる事ができるからこそ、「共苦」なのではなかろうか、とも思うようになりました。しかし、「パルジファル」の原作にのっとった解釈ですと、パルジファルは、槍で指された傷に苦しむアンフォルタスに対して、「さぞかし痛いでしょうに」という、思いやりの言葉をかけなかったから、いったん追い出された。これは、「共悩」の感覚ですよね。さらに言うと、アンフォルタスの槍の傷の痛みにとどまらず、他者の(肉体的に限らず精神的な)傷を理解するほど成長したパルジファルを描くためには、「共苦」ではなく、「共悩」という訳語の方が、やはり適切であったのではないか、と思った今日この頃です。
その時の上演の字幕を担当したのは、著名なワーグナー研究家(特に言語部門で)だったのですが…この問題、もっと掘り下げて考える必要もあるのかも知れませんね。
by coyote (2005-07-06 14:21) 

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