SSブログ

カラヤンとポップス [人々]

2003年発行の伝記から引用の続きです。

「私の車に乗せたとき、ポピュラー音楽も好きかどうか質問したところ、『良いポップスなら・・・』というこたえだった。私は、反応やいかにとわくわくしながら、ピンク・フロイドの『ザ・ウオール』のカセットを差し込んだ。彼はすぐに足を上下にゆらして、拍子をとっていた。車の中というプライベートな空間では、よく笑ったり、ふざけたりした。

(この挿話はP.ホフマンのHPにも載っています。http://www.peterhofmann.com/index-erinnerungen.html
「まさに、<Classic meets Pop>という状況誕生の瞬間」だと感じたということです」パルジファルのリハーサル中、ザルツブルク祝祭劇場から、レストランに食事にでかけたときのことだそうです)

後に、ロックの演奏旅行中に、カラヤンに電話をかけたところ、技術狂の彼としては、どの程度のPPA(スピーカーの能力)を携えて旅行しているのか、すぐにも知りたいので、ぜひとも夜にコンサートに立ち寄りたいと言うことだった。カラヤンはポップ・コンサートにおけるあらゆる機械設備に非常に興味をもっていた。私は彼に『帽子をかぶってひげをつけて』潜入してはどうかと提案したが、残念なことに、彼は敗血症にかかって、緊急入院を余儀なくされてしまった。

 カラヤンは、前にも話したように、非常に孤独な人だったせいか、ポップ・コンサートに招待されるというような状況を楽しんでいた。確かに常に大勢に取り囲まれていたが、その人々は彼を完全に高みに祭り上げていた。大勢の中でのひとりぼっちだ。人々は彼のために車のドアを勢いよく開け、楽譜や青色のコートを持ってさしあげる。しかし、尊敬するあまり、常に距離を置いて接していた。いつか練習のとき、足を滑らせて転倒したことがあったが、だれもあえて近付いて手を貸そうとはしなかった。彼は自分でユーモアに紛らして、私たちの前に座り込んで、涙を流して笑っていた。その後、クルト・モルと私は手を差し出して、彼を助け起こした。『彼の』大勢の取り巻きはそんなことさえあえてする勇気を持たなかった。」(ペーター・ホフマン)


nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 4

わびすけ

押しかけてきてしまいました。今後ともどうぞよろしくお願いします。

非常に興味深いエピソードです。こんなにも孤独な人だから、
カラヤンの音楽は「空虚」に感じられるのでしょうか。
(この場合の空虚というのは悪い意味ではなく…なんというか、感情のつかめない様子です)
彼が何故このような演奏に至ったのか、知りたいと思っていました。

そしてホフマン、ピンク・フロイド聞かれるんですね!
by わびすけ (2005-07-05 11:24) 

わびすけ

それから話題が少しそれてしまいますが、

今過去の日記を少しずつ拝見しています。
ジェス・トーマスと同門だったのですね、ホフマン。
このエピソードにも大変感銘しました。ジェス・トーマスは最近聞いたケンペ/VPOのローエングリンでタイトルロールを歌っていて、もう少し聞いてみたい歌手だと思っていたのです。
by わびすけ (2005-07-05 12:01) 

euridice

わびすけさん
お越しくださり、うれしいです。
こちらこそ、よろしくお願いします。

>今過去の日記を少しずつ拝見しています
ありがとうございます。よろしくお願いします。

>ホフマン、ピンク・フロイド
え〜〜、ポピュラー音楽活動(本人はロック・ミュージックと言ってます)をオペラの片手間ではなく、平行して本格的にやり始めたことが、彼に対する批判(非難)と偏見の核になっていると思います。こういうこともぼつぼつ取り上げようかと思ってます。

>ジェス・トーマス
先見の明と、才能を見出す勘と、サポートを実践する行動力のあった方ですね。自分の苦労を、若い人に要求するのではなく、自分の苦労をさせないように援助する人って、ほんとにすばらしい人格者だと思います。もちろん歌手としても。もし興味がおありでしたら、ホームページをご覧ください。
http://www.geocities.jp/euridiceneedsahero/needahero1101.html
by euridice (2005-07-05 17:14) 

わびすけ

なにやら上の私のコメント、日本語おかしかったですね。失礼しました。

HP、拝見しました。大変勉強になりました。画面上で読むのには少し時間がかかってしまうので、プリントアウトして読ませていただきますね。
by わびすけ (2005-07-06 19:30) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0