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ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」スカラ座2009年 [劇場通い]

クリック→拡大2月-3月にローマに行くとして、せっかくだからオペラも見たいものというので、近辺のといっても、とりあえずローマ歌劇場とスカラ座の公演予定を調べた所、2月のミラノはスカラ座であのシェロー演出の「トリスタンとイゾルデ」ではないですか。となれば、息子もオペラはともかくスカラ座に入ってみたいということで、これに合わせて予定を組むしかないでしょう。

クリック→拡大で、チケット売り出し日に予約するように息子に頼みました。ローマからのネット予約ですが、「人気だからか一度に2席までしか予約ができなかったので、平土間(platea)2席と3階のボックス2席に分かれてしまった」ということでした。場所は一組は私好みの1階脇。舞台に向かって左真ん中辺でした。もう一組は舞台に一番近い3階右ボックス席ということ。お値段は新国立劇場の高いときと安いときのS席程度だったらしいですが、プラス手数料20%とのこと。

クリック→拡大ボックス席には後日談があって「予約なさった席はご提供できないので、別の席をご用意しました。開演前にボックスオフィスにお立ち寄りください」なんてメールが届いたとか。地下鉄の大聖堂駅にあるというボックスオフィスへ。チケット売り切れの人気公演とのことで、キャンセル待ちの列。「ご提供できない」理由はわかりませんでしたけど、同じ場所の2階に変更とのことで、むしろラッキーでした。舞台右手が見えない以外は歌手の表情まで見えるし、なによりオーケストラピットがばっちり。いちおう大学オーケストラ団員だった息子には最高の席だったようです。席とやはりシェロー演出のおかげでしょう。二人とも全くの初トリスタンを退屈せず、楽しめたとのこと。

クリック→拡大この「トリスタンとイゾルデ」はパトリス・シェロー演出ですから、2007年の新演出初演のとき話題になり、ネットで全編の映像を視聴しました。その時の記事がこちらにあります。この映像はすでにDVDが発売されています。HMVへ
主要な配役は、ブランゲーネ以外は新演出初演時と同じでした。トリスタンはロバート・ギャンビルとダブルキャストが組まれていて、どちらかわかりませんでしたが、これはどちらでもいい。マイアーがキャンセルだったら、私もだけど、がっかりする人が多いに違いないというところ。

クリック→拡大結果も、これはほんとにすばらしかった突出イゾルデと演出の良さ、装置の美しさ、お芝居としての舞台構成と動き全体のおもしろさで、複数の舞台映像、これを含めて2度の実演の中で、最高の「トリスタンとイゾルデ」だったと思います。スカラ座という場所が影響したかどうかは微妙。狭いホワイエの芋の子洗いには辟易。2幕後の休憩はトイレと席で過ごしました。新国同様、前の客が前に左右にとごそごそ動くのは相当視界の邪魔でした。今回は落ち着きのない特大の大男でそのせいかどうか彼の左にいた女性は2幕から消えてました。どこか別の席に移ったのでしょう。で、多少は反省したのか、ちょっぴりおとなしくなったので2幕以降はなかなか良い視界でした。

ワーグナー:トリスタンとイゾルデ
ダニエル・バレンボイム指揮
パトリス・シェロー演出
クリック→拡大スカラ座 2009年2月21日

トリスタン:イアン・ストーリー
イゾルデ:ワルトラウト・マイアー
ブランゲーネ:リオバ・ブラウン
クルヴェナル:ゲルト・グロチョスキ
マルケ王:マッティ・サルミネン
メロート:ウィル・ハルトマン

ソリストではなんといっても可憐な美しさ、少女の風情のイゾルデがダントツ。今までに視聴したマイアーのイゾルデの中で一番素敵でした。どうも大勢の観客に一瞬これがトリスタンかと思われ、違ってがっかりされた、朴訥な若者クルヴェナルはやはり魅力的。歌のほうはそこそこ。トリスタンとの関係性があまりピンとこないのはトリスタンのせいでしょう。慈愛あふれる人格者の堂々としたマルケ王。サルミネンの魅力を再確認。カーテンコールの拍手もイゾルデと共にわきました。いかにも器が小さい、ねたむ男メロートもとてもそれらしく、ちょい役ながら、存在感がありました。タミーノ@魔笛(映像)で知っている歌手。プレミエ時の映像ですでに注目でしたが、実演でも、タミーノよりメロートがはるかに似合ってよかった。

クリック→拡大演出意図がちょっとわからん・・というもどかしさありだったのが、ブランゲーネとトリスタン。ブランゲーネはかなり年配の、侍女というよりは「ばあや」扱いですが、これが私が音楽から作り上げてきているイメージ、イゾルデとほぼ同年輩のしっかりものの美人というイメージと、映像のときもそうでしたが、実演鑑賞でも、どうにも合わない。映像では気にならなかったというか、気がつかなかった、足が悪いらしくびっこを引く様子もじゃまくさい。

クリック→拡大トリスタンはもちろんというか当然ながら人物像がつかめない。背は超高いし、それなりに若者体型を一応保っているのだけど、どうにも初老か中年の分別盛り。若いイゾルデの純粋な勢いに仕方なしにおつきあいという感じがつきまとい・・イゾルデに夢中とは思えない・・これってやっぱり音楽とも台詞ともずれているとしか思えません。2幕の二重唱部分、そして3幕前半、主としてトリスタンが歌いまくる部分は他の部分との落差が大きく単調、はっきり言って退屈でした。特に3幕は何をねぼけているのやら・・という感じ。演技的にも相当大根・・でした。カーテンコールの拍手は、私の感じではそれなりで(正直それでも盛大すぎる感じ^^;;)したが、息子夫婦には一段と低調で気の毒な感じがしたそうです。「なんとなくうなだれてたよ・・」ですって??

クリック→拡大舞台装置はほんとに美しかった。特に1幕冒頭、船が霧の中を進んでくる様子は実に幻想的でした。そして、全体的な雰囲気は劇としてすばらしかった。あのトリスタンもシェローの選択なのだから、何かそれなりの意図があったのかもしれませんが、どうもわからなかったのは残念です。これでトリスタンがペーター・ホフマンみたいなテノールだったら、もう感動のあまり死んでしまうかもしれませんから、あの外見も歌も声もぼけ〜〜としたトリスタンでよかったのでしょう。

最後のカーテンコールには予期せずシェローも登場。カーテンコールの最後は、バレンボイムとシェローの二人が仲良くにこやかに、ちょっとふざけムードで登場。客席が盛り上がりました。この晩の公演が一般公演の最後だったようです。もう一度25日に予定されていた上演は招待客のみとありました。

生オペラは新国カルメン以来2度目の夫は字幕付き映像と私の強制というかもはやこのCDしかうちにはないバーンスタインのCDを普段は演歌専門のiPodシャッフルに入れて、ばっちり予習して行ったし、やはりシェロー効果、マイアーの美しさで退屈なし。トリスタンに不満なのはもうしかたがない私以外は皆さんとりあえず大満足のスカラ座詣でした。

関連記事:
劇場鑑賞トリスタンとイゾルデ ベルリン国立歌劇場東京公演
オペラ映像トリスタンとイゾルデ スカラ座2007年
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コメント 10

ディオニソス

うらやましです。スカラのオケはどうでした~??きっと、イタリアンのきらびやかで軽い音色のトリスタンだったのでしょうね。重厚で粘っこいバレンボイムとのバランスがどうだったのかちょっと楽しみです。NHKで聴いた演奏は、なかなか面白かったですけどね!
by ディオニソス (2009-03-05 07:34) 

ぴっぽ

本当にうらやましいです。さぞ素晴らしい体験だったことでしょうね。
シェローのトリスタン!
世界最高レベルの装置や照明や衣装に生で接して質感を感じてみたいです。
ご感想を読みながら、ついついため息とよだれが出ておりました。

トリスタン役がもう少し…
ということは、07年時からあんまり成長してないのかな、とその点だけは残念ですが。
もはや演技指導の時間が足りなかった、という問題でもないでしょうね(汗)。


mixiのコミュでこちらの記事をリンクさせてもらってもよろしいでしょうか?
by ぴっぽ (2009-03-05 10:47) 

euridice

ディオニソスさん
>スカラのオケはどうでした~??
>イタリアンのきらびやかで軽い音色のトリスタンだったのでしょうね。
そうですね。
バレンボイムのトリスタンはいくつも聴いていますけど、
やはりオケに合わせているような気がしました。
イタリアらしく?派手に鳴らしていると感じました。
バイロイトなどの演奏とは確かに雰囲気が違うと思いました。

息子はオケばかり見ていたみたいです。
当たり前でしょうけど、やっぱりすっごく巧いと大感激でした。
チェロなど、よく指が動くとかまで、見えたようです。

この公演がこの時期にあったのはほんとに幸運でした。

by euridice (2009-03-05 14:21) 

euridice

ぴっぽさん
ほんとにこの時期にこの公演が再演されていたのは
つくづく幸運だったと思います。

総合的にベルリン国立歌劇場の来日公演よりはるかによかったと思います。
やはり演出とトリスタン(歌はおいておいて・・)は、
視覚的にはこちらのほうが・・ですし^^;;
なんといってもマイアーが、こちらは目にも耳にもほんとに素敵でした。

>07年時からあんまり成長してない
そうなんです。全然進歩してませんね。まあ、はじめから突出してスター性のある歌手のほうがむしろ進歩、成長するのではないかと思います。それなりの人はいつまでたってもそれなり。

>mixiのコミュでこちらの記事をリンクさせてもらってもよろしいでしょうか?
もちろんです。mixiのコミュにも投稿してもいいのですけど、リンクでよろしくお願いします。
by euridice (2009-03-05 14:37) 

立花

素晴らしい鑑賞記、ありがとうございます。
楽しく読ませていただきました!
飯場のトリスタンはやっぱりそれなりでしたか(笑)。

by 立花 (2009-03-05 16:39) 

ペーターのファンです。

スカラ座でトリスタン、うらやましくて死にそうです。肝心のトリスタンが??だったようですが、マイアーのイゾルデはさぞ素晴らしかったことでしょう。
マイアーのイゾルデとホフマンのトリスタンが私の夢でした。

by ペーターのファンです。 (2009-03-05 21:31) 

euridice

立花さん
虜になるようなトリスタンにはもうお目にかかれそうもないです・・^^;;
by euridice (2009-03-06 10:07) 

euridice

ペーターのファンです。さん
ほんとに夢のようなタイミングでした。
肝心のトリスタンはどうしようもないですね・・

>マイアーのイゾルデとホフマンのトリスタンが私の夢でした。
病気になる・・ということがなければ、間違いなく実現していたと思います。
マイアーイゾルデのお相手はイェルザレムではなく、ホフマンだったにちがいありません。
by euridice (2009-03-06 10:12) 

yokochan

どうも御無沙汰をしております。
えーっ、スカラ座だ!
トリスタンだ!
すごいです。
写真もすっかり堪能しました。憧れのスカラ座、今年来日しますが、目が覚めるような高額チケットに手も足もでません。
現地で、しかもシェロー演出をご覧になるとは、そしてご家族でとは、とても素晴らしい体験をされましたね。
ボックス席には字幕が出るのですか?
ベルリンのトリスタンより素晴らしかったのですね~。
by yokochan (2009-03-08 21:14) 

euridice

yokochanさん
こちらこそ、です。

ほんとに幸運なタイミングでした。

>字幕
私は1階平土間で、前の座席の後ろに電光版がありました。英語、イタリア語、ドイツ語、フランス語だったかな? 切り替えられます。興味でちょっとつけてみましたけど、けっきょく見ませんでした。

ボックス席はどのようになっているのか詳細は聞いていませんけど、字幕はあったそうです。映画と違ってゆっくり読めてよかったそうです。

>ベルリンのトリスタンより
演出が・・だんとつよかったと思います。クプファーのは、私には全然ダメでした・・^^;; そして、マイアーが☆目が覚める☆ほどよかったです^^++ マイアーのソプラノ役は、ずっとあまりよくないと思っていたのですけど・・ 今回のイゾルデはそんな感じが全然しませんでした。

by euridice (2009-03-09 08:06) 

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