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ショスタコーヴィチ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 [オペラ映像]

バイロイト音楽祭の「パルジファル」で、買い置きのDVDを思い出しました。このパルジファル役のテノールは、目下「ムツェンスク郡のマクベス夫人」のセルゲイの第一人者だといううわさです。もうひとつのDVDでもこの役です。まず、新国のすばらしかったエレクトラで、ペーター・ホフマン・ジークムントの最後のジークリンデだったナディーヌ・セクンデがヒロイン役の映像です。この強烈なオペラは、来シーズン、新国立劇場で上演されます。

ショスタコーヴィチ:ムツェンスク郡のマクベス夫人
アレクサンダー・アニシモフ指揮
スタイン・ヴィンゲ演出
バルセロナ・リセウ劇場2002年

カテリーナ:ナディーヌ・セクンデ
セルゲイ:クリストファー・ヴェントリス
カテリーナの夫:フランシスコ・ヴァス
舅:アナトリ・コチェルガ
酔っぱらい:グレアム・クラーク
老囚人:エフゲニー・ネステレンコ

喜劇と悲劇は表裏一体。以前に視聴した映画版2つでは、このオペラが喜劇でもあるなんて全然感じませんでした。ひとつは相当の短縮版であり、もうひとつは政治的圧力によって改訂された、タイトルも「カテリーナ・イズマイロフ」だったからでしょうか。もちろん明るい喜劇ではなく相当にブラックですけど。人間というものの矛盾、いやらしさ、身勝手さなどが伝わってきます。まあ、いくら笑い飛ばそうとしても、うんざりするほど暗い、救いのないお話であるのには変わりありません。

舅の酷さはまさしく醜悪ですし、夫は絶対女嫌いのくせに、体面のために結婚したのは間違いなさそう。これで子供が出来ないのを舅にののしられるばかりか、そんなら俺がとばかりに襲いかかられるなんて、理不尽この上なし。そんな中でのカテリーナの閉塞感はわからなくもないですけど、セルゲイみたいな男に夢中になるなんてのは理解の外。裕福な商家の理性なんてものは存在しないような世界には現実的には違和感大。それでも、セクンデのカテリーナはとても存在感があって、とんでもない犯罪に手を染めていく軽薄さにはあきれ、シベリア送りの場面では、本当に同情してしまいます。

パルジファルはどうもねぇ・・のヴェントリス、セルゲイ役にはぴったんこ。まさに最低の男セルゲイでした。映画版2つのセルゲイのちょうど中間で、視覚的には一番それらしいと思います。映像版は視聴覚ともに多少美しすぎ。ゲッダの声と歌唱は品がいい。それはそれで、カテリーナが夢中になるのに納得ですから、いいのですが、セルゲイの言動は、翻訳台詞から判断するしかないのですけど、品なんてものとは無縁な男です。ソ連映画版はむさ苦しすぎ。いくらなんでも惚れないでしょって思ってしまいました。

狂言回し的酔っぱらい、えらく巧い役者じゃないのって思ったら、あのグレアム・クラーク(T)でした。ネステレンコは貫禄ですけど、物語的にはちょっと浮いてるように感じました。

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バイロイト音楽祭2008年 パルジファル
ムツェンスク郡のマクベス夫人

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コメント 3

オデュッセウス

このDVD、現在は購入不可能のようですね。こういうマイナー作品は出たときに買わないとダメですね。残念!!
by オデュッセウス (2008-08-12 22:44) 

euridice

オデュッセウスさん
タイトルをクリックでHMVにいきます。
そこでは購入可能になってます。


by euridice (2008-08-13 06:07) 

オデュッセウス

あれっ、ホントだ!!すみません、お騒がせしました(笑)。
by オデュッセウス (2008-08-13 20:22) 

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