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オルフェオとエウリディーチェの録音1983年 [PH]

さまよえるクラヲタ人さんのところでこの曲が、しかも、ホフマン参加のものではもちろんないのですけど、私も持っている録音(ミンコフスキ指揮2002年 これはテノールのオルフェオで、それがテレビでみた「ポッペアの戴冠」で気にいったテノール氏だったというのが聴いた理由)が、取り上げられていたので、久しぶりにそれをききながら、古い記事を上げます。

グルック作曲のこのオペラ、ギリシャ神話が題材ですから、西洋では、様々な形で登場するようです。オペラとしてもモンテヴェルディ作曲の「オルフェオ」もあります。

グルックのこのオペラには、いくつか版があるらしいです。CDを見ると、オルフェオ役は、女声(メゾソプラノやアルト)が担当しているものが、圧倒的に多いですが、男声(テノール、バリトン、カウンターテノール)のものもあります。なんでも、ウィーン版はカウンターテノール用、パリ版はテノール用に書かれているということです。

私のこのオペラのはじめては、ジャネット・ベーカーがオルフェオ役のグラインドボーン音楽祭の映像でした。オルフェオがどうしてもおばさんにしか見えなかったせいもあって、ちょっと退屈でした。その次もやはり映像で、オルフェオを男性が担当していましたが、私のイメージするオルフェオとあまりにも違っていたせいでしょうか、演出的にはけっこうおもしろかったような気もしますが、この男声がどの声種だったかさえも覚えていません。東ドイツで制作された映画版です。

そして、カウンターテノールというものを初めて耳にしたのが、時代を現代に変更したハリー・クプファー演出、コヴェントガーデンの映像です。この話、夫婦愛、音楽の力などが主題でしょうから、現代の物語としても違和感はありません。

私としては、オルフェオは魅力的な男性に見えてほしいです。その点、この映像のオルフェオは、心を奪われるというほどではないけど、許容範囲。自称男性アルトのコワルスキー氏、コンサートで実際に見たときのほうが、かっこよかったです^^; 

ただ単に音楽として聴くぶんには、女声でもかまわないし、女声が歌うアリアもとても魅力的ですが、物語としてはやはりオルフェオは男であってほしいです。

P.ホフマンの録音があるというのは、早くから知っていて、中古レコード店など徘徊したこともありますけど、出会うのは無理だろうと思っていました。しかし、インターネットのお陰ですね( ^o^ )/~~~~なんとこのレコードを持っている方に出会ったのです。

某国のネット掲示板サイトで、究極のゲテモノ録音のひとつだなんて投稿があって、どんなに奇妙なものかと、ファンとしては、ドキドキ、わくわくでレコードの針を降ろしました。何をもってゲテモノと言うのかはともかくとして、この曲に関して、こうでなければならないという思い入れが皆無だからかもしれませんが、非常に魅力的な演奏だと思います。

真偽のほどはさておき、某評論家によれば、「.........大きな危険を承知の賭けだったが、結果は芸術的な意味でも、評論家の評価においても、大成功だった」そうです。

ホフマン自身も、「........この録音はすばらしいものになった。私はめったにこういうふうには思わないのだが、この録音は誇りにしている。まるでこの役を舞台ですでに50回歌ったことがあるような感じがした。」ということです。また、オルフェオという人物については、音楽の力を行使した人として、思い入れがあるようです。

「なぜ私は歌うのか?..............それとも、歌うことは、中毒になるから、歌っているのだろうか。 麻薬というものがあるなら、オペラこそが麻薬だ。音楽は興奮剤であって、情緒を解放する。演技にはエロティシズムが内在する。おそろしいほどのエロティシズムにあふれている。声こそは、性欲を映す鏡である。オルフェオは、その声で力を行使した。なんと魅力的な力だろうか。何ものも、そして何びとも、その力から逃れるすべを知らない。多くの人は、強力な性的な放射が加わったとき、人間というものが最も深く影響されることを、認めたがらない。.........」(ペーター・ホフマン)

「このオペラでは、それまではあまり望ましくないとされていた豊かな感情表現を、もちろん声によってのみだが、おこなっている。ペーター・ホフマンは、いつも自分自身を概して批判的に扱うのだが、この録音に関しては、自分自身、とても満足しているということだ。彼としてはとびきりの大成功だと考えているそうだ。」(伝記、2003年)

いずれにしても、いろいろなタイプの音楽が好きな声で聴けるのは、単純にうれしいものです。

グルック作曲 オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」
ハインツ・パンツァー指揮
ケルン・フィルハーモニー・オーケストラ
ドルトムント楽友協会合唱団
LP Metronom 1983年

オルフェオ:ペーター・ホフマン
エウリディーチェ:ジュリア・コンウェル
アモーレ:アラン・ベルギウス
追記:2008.5.16 アラン・ベルギウス
1972年5月2日 ドイツ、ミュンヘン生まれ

父(ドイツ人)はチェリスト、母(イギリス人)はピアニスト
テルツ少年合唱団を経て、現在はチェロ奏者(ソリスト)で指揮者

参考 "We Need A Hero" 
「.....指揮者のパンツァーは、ドラマチックテノールを用いた1774年のパリ版を録音するために、力強い低音域を持つホフマンのようなヘルデン・テノールを用いたいと思ったのだ.......」



ホフマン
フィッシャーディスカウ

ベルギウス
クロフト






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コメント 16

佐々木真樹

ダメですってば! イタリア語のオペラまで音楽ファイルを置いて紹介しちゃ!
最近のCDの購入量が,ハンパじゃないのです。(聴く時間ときたら,通勤中の車の中しかないというのに。)
by 佐々木真樹 (2005-10-27 21:36) 

なつ

うわー。貴重な音源をありがとうございました!
"Che faro' senza Euridice"というと、私はテレサ・ベルガンサかヨッヘン・コヴァルスキーだったのですが、メゾ、C-T以外の声で聴くと、また新鮮です。
"Ombra mai fu"だって色々な声域の人が歌っているし、そもそもカストラートの声を再現することが不可能なんですよね。
オリジナルにこだわるのもよいけれど、要は「歌心」だと思います。

ホフマンの歌唱は男性的で、格調高い「妻恋」の歌になっていると思いました。
by なつ (2005-10-28 00:11) 

あやかしのとら

はあああやっぱりええ声やわぁ・・・・・・貴重な物を有難うございます。
by あやかしのとら (2005-10-28 06:16) 

euridice

なつさん、とらさん
きいてくださって、うれしいです( ^o^ )/~~~~

これが聴けるなんて、夢みたいでした。
インターネットのお陰です・・・
by euridice (2005-10-28 06:49) 

TARO

フィッシャー=ディースカウと言えども、さすがにこの手のレパートリーとなると、古さをかんじさせますね。
ホフマンはさすがにF=Dとは世代が違いますね。違和感はかんじさせないような。
by TARO (2005-10-28 18:56) 

佐々木真樹

右側はフィッシャー・ディースカウだったのですね。何だかどこかで聴いた声だと思っていましたけれど,何を聴いたんだろう・・
by 佐々木真樹 (2005-10-28 20:43) 

Sardanapalus

私もこのオペラでのテノール(もしくはハイバリトン?)のオルフェオは初体験です。なつさん同様、コヴァルスキーの歌うものが気に入っているのですが、声が低くなるとセクシー度が増しますね(笑)F=ディースカウのものは歌いだしで彼だと分かりました。朗々と歌ってらっしゃいますけど、この曲はホフマン氏の方が感情がこもっていて素敵だと思いました。
by Sardanapalus (2005-10-29 00:33) 

euridice

>何だかどこかで聴いた声
ひょっとして、ちょっと前の記事のドン・ジョヴァンニかも?

>コヴァルスキーの歌うもの
コヴェントガーデンの映像、おもしろいですね。はじめてカウンターテノールというものを聴きました。映像付きのほうがはるかに素敵に感じられる気がします。
by euridice (2005-11-02 21:39) 

Cecilia

TBありがとうございました!
Allan Bergius、うまいですね~!
思わずアポロンとヒュアキントスなども見てしまいました。
今はどうしているのでしょうね??
"Che faro' senza Euridice"、私もテレサ・ベルガンサで聴いたのが最初でした。
割と最近もNAXOSで聴きましたが、オルフェオは誰だったかな??
ホフマンもディースカウも素晴らしいですが、ホフマンの歌い方がリリックな感じがして好きです。

by Cecilia (2008-05-16 12:26) 

euridice

Ceciliaさん、TB承認&コメント、ありがとうございます。

>うまいですね~!
ほんとうに。
>思わずアポロンとヒュアキントスなども見てしまいました。
同様です。

>今はどうしているのでしょうね??
検索してみました。お父さんがチェリストだからでしょう。
子供時代から楽器はチェロをやっていて、今は
チェロのソリスト兼指揮者だそうです。
記事の画像をクリックすると今の写真になるようにしました^^+
by euridice (2008-05-16 18:40) 

雪太郎

「我エウリディーチェを失えり」でしたっけ?あまり知りませんが、記憶にあるのはキャスリーン・フェリア-のLPレコ-ドです。あのノーブルな深~い声が好きですが、ホフマンも中々ですね。

そう言えば・・・ホフマンはモノ-ラルですがベルギウスはステレオに聞こえます。同じレコード・・・ではないのですか?
by 雪太郎 (2009-05-19 21:37) 

euridice

雪太郎さん
単独だと女声もいいですね。確かヴィスコンティの「イノセント」の中でも女声が歌っていて心に残りました。

>そう言えば・・・
そうですか。

ここに載せた音源は全てステレオです。
ホフマンとベルギウスはもちろん同じLPからです。
LPをDVDレコーダーに録音して、パソコンに入力したものです。
その過程で何度も変換していますので、モノラルになったかもしれません。
ブログにあげてしまったファイル自体は確認する術を知らないので
とりあえずホフマンのファイルを作り直しました。
確認したところインスペクタ表示はステレオになっています。


by euridice (2009-05-20 15:13) 

ななこ

貴重な録音を聞かせていただき嬉しいです。
なんかこう「居住まいを正して聴き入ってしまう」感じです。
歌曲を聴くような気持ちとでもいうのでしょうか・・・
ホフマンはワーグナー歌手でありながらバロックオペラもフォームを崩さず歌える歌手だったのですね!
といってバロック音楽がどうあるべきかなんて全然知らないのですが、凄く禁欲的に歌ってると思いました。

いつかのジョウビタキくんもお似合いでしたが、カワセミくんも似合っていますね!
by ななこ (2009-05-22 11:55) 

euridice

ななこさん
ありがとうございます。

ひさしぶりにじっくり聴いています。
いい曲ですね。
好きな声で歌われているので
一層そう感じるのでしょうか。
by euridice (2009-05-24 13:32) 

yokochan

こんにちは。
ホフマンのオルフェオ聴かせていただきました!
バロックオペラを歌っても、ホフマンはホフマン。
剛毅でキリッとしてます。
この役は、やはり私も男声であって欲しいですが、クロフトに比べると、甘さがなく高貴さが引き立って聴こえます。
FD様もうまいもんですね。

by yokochan (2012-01-24 00:42) 

euridice

yokochan さん
クロフトのはフランス語のせいもあるのでしょうか、感じがかなり違いますね。

ホフマン参加のせっかくの正規録音、「魔笛」もですけど、CDにして発売してほしいものです。


by euridice (2012-01-24 22:40) 

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