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バーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」テレビ放送 [ムービー付き音声ファイル]

テレビ映像抜粋
1幕:カーテンコール
2幕:
3幕:カーテンコール

おまけ:バイロイト1987年の「トリスタンとイゾルデ」2幕より☆ユーチューブへ

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2005-07-10-12005-07-10-2
HP:WE NEED A HERO!より

バーンスタイン指揮による「トリスタンとイゾルデ」は、コンサート形式の上演と同時に、ライヴ録音とテレビ用録画が行われ、テレビ放送されました。このことは、CDのリブレットにも書かれており、ぜひともその録画を観たいと思ったファンは多いことでしょう。もちろん私もその一人です。リブレットによれば、映画化の音源として、ゼッフィレッリが権利を獲得したということですが・・・映画化は望みなしみたいですね。

正規版ではありませんが、このテレビ録画DVDが突然某サイトに登場したのが、数年前のことです。ここの映像はほとんど見えないような代物も少なくないですから、半信半疑で注文してみました。これが、意外に良い画質。もちろん、最近の正規版DVDのように鮮明とはいきませんが、ファンとしては十分許容範囲。感激でした。

このコンサートは、歌手が正装してオーケストラの前に立つのではなく、オーケストラの後ろに高く狭い舞台を設け、背景には空をイメージした幕を張り、歌手は役にそれなりの衣装をつけて、多少の演技もするというものです。トリスタンとイゾルデは、ある意味、動きは少なくてよい心理劇ですから、これで十分という感じです。それに、なにしろ、歌手たちがそのままで十分役柄を体現しているので、舞台にあるのはベンチだけ、小道具もなしなのですが、かえって無駄がなくていいという印象。

最近私が観たコンサート形式のサロメは、もっと凝っていました。オーケストラの後ろと左側を囲むように舞台が設けられ、簡単な美しい装置もありました。歌手もかなり広範囲に動き回っての歌唱でした。テレビで観た東京シティ・フィルのワルキューレやジークフリートも同様でした。

それにしても、このテレビ放送、正規版のDVDの発売でももちろんいいのですが、なんとかテレビで放送してほしいものです。

デビュー後、おそよ十年のこのころ、P.ホフマンのキャリアは、ようやく中期に入り、マスコミ、あるいは音楽評論家たちとの蜜月もそろそろ終わりを迎えます。 あるジャーナリストが指摘している現象と言えなくもないでしょう。

「......前世紀よりも最近その傾向が強いのだが、音楽ジャーナリズムに繰り返し見られる嫌なパターンがある。私はもうすっかり慣れてしまいうんざりしているのだが、マスコミはある歌手について、センセーショナルに新発見を告げ、蜜月期間はこの歌手を擁護し、その長所に比べて、その欠点は見逃されるが、だいたいキャリアの中期にさしかかったころ、突如、同じ歌手に対して、まさにいったんは見逃されていた欠点を綿密で、厳しい検査にさらし、声楽的危機といったレベルで問題にする。そして、もし歌手が、寿命と健康と芸術性に恵まれ「成熟期」まで生き延びれば、再び賞賛し、(長いキャリアを保ったマックス・ローレンツやジョン・ヴィッカーズのように)神格化する。」(Carla Maria Verdino-Suellwold 1989年)

P.ホフマンの場合、キャリアの中期に難病を得て、訳がわからないままの不調、キャンセルなど、そして、パーキンソンの診断、オペラからの引退となったわけですから、悪評だけが残って、目立ってしまうのもやむを得ないのかもしれません。

すでに1979-80年に録音、1981年に発売されたカラヤンの「パルジファル」の録音も例に漏れずやり玉にあげられます。まだポップス活動を始める前の録音だったにもかかわらず、「ロックの発声の悪影響が見られる」とか「ペーター・ホフマンは自身の並外れたキャリアに、もはやこれ以上耐えられない」といった批評が登場。これを、踏襲している日本の評者も少なくないようです。1982年からのバイロイトのバルジファルは、ほぼ絶賛されたわけですから、録音に対する批評というのは、ちょっと奇妙なところがあります。

バーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」についても、史上最年少、初トリスタンということもあり、特に専門家の立場で批評するなら、当然、完璧などということはなかったのも確かなのでしょう。それでも、あのコンサート、そして、出来上がった録音が、多くの人に感銘を与えていることも間違いのない事実です。

批判的な評論には、「バーンスタインの厳しいリハーサルで、ついに自分の力以上のことをしようとしたが、その傑出した能力によって賞賛された」とか、「第二幕の公演で、ペーター・ホフマンは、歌詞とリズムに関して、何度も間違えた。そして、第三幕、ホフマンは、確かに、その英雄的で、バリトン的な声がトリスタン役にも運命づけられているように思われるが、彼はまだこの役を決して完璧にはマスターしていないということを証明した」「優れた演出家が彼と共に演出すれば、彼が舞台で演じ、動き回ることが許されれば、彼が、歌手としても、まさしく音楽と情景の統一体としてのドラマが最終的に要求しているように、更に徹底的に役に没入するのに役立っただろう」などというのがあったそうです。ドイツ語読解力不足のせいか、褒めているのか貶しているのか、なんとも奥歯に物が挟まったような表現です。三幕については、譜面台を使用したことも批判の対象になっています。

一方で大満足のレナート・バーンスタインの言葉もドイツ中を駆け巡ったのでした。
「レナート・バーンスタインとって、暗く、セクシーな声をしたこの偉丈夫こそ、世界一のワーグナー・テノールなのだ」(1981年7月25日付け AZ ミュンヘン)

それにしても、もっと魅力的なトリスタンが他に存在しているとは思えません。他人のことは知らず、私にはこの声こそがトリスタンです。

参考:バーンスタインの生涯 ハンフリー・バートン著 棚橋志行訳 福武書店1994年


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コメント 4

ユキタロウ

>私にはこの声こそがトリスタンです。

若々しさと強靱さを併せ持った彼の声は良いですね。

同様に、繊細さと強靱さを併せ持ったべーレンスの声こそが、私にとってのイゾルデです。

ご紹介ありがとうございます。


by ユキタロウ (2010-07-08 22:11) 

kametaro07

>私にはこの声こそがトリスタンです。
私も全く同感です。
リンデンでザイフェルトのトリスタンを聴きました。
確かに素晴らしく、現在トリスタンを歌う人の中では最高峰でしょうが、こちらでホフマンのトリスタンを聴いていたので何か物足りない・・・と思ったのでした。
リンデンで聴いた後、このU-tubeを探したのですが聴けなくなってました。
これは期間限定なのですか?
by kametaro07 (2010-07-09 00:41) 

euridice

ユキタロウさん
>べーレンスの声こそ
同感です


by euridice (2010-07-10 13:55) 

euridice

kametaroさん
ザイフェルトも一応いろいろ聴いていますけど、特別な印象がなく
それなり・・というところです。

>このU-tube
ごめんなさい。あれこれというほどでもないんですが、ちょっと・・で
しばらく非公開にしていました。限定公開というのが出来るようになったので、再公開しました。リンクを知っている人だけがアクセスできます。つまり、とりあえずこのブログに来てくださった方だけに・・ということです。また視聴してくださるとうれしいです。

by euridice (2010-07-10 14:01) 

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