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論評集-2 [1983年刊伝記]

「連邦パルジファル」
 パルジファル、「連邦パルジファル」、彼のことを、同僚がふざけてこう呼び、そしてすぐにマスコミもまたこう呼んだ通りだった。彼は、六週間の間に、三つの「パルジファル」新演出初日をやり遂げた。ヴッパータール、ハンブルク、そしてシュツットガルト。続いて、バイロイトで「パルジファル」を五回。1976年は、彼にとって、飛躍の年になった。シェローのジークムント、ウィーンのローゲの大成功、カバンの中には、所属劇場シュツットガルトのローエングリン出演契約。「パルジファルとして三つの新演出初日、これは、ただ単に異なるオペラハウスへの三回の出演というだけではなく、様式の異なる三つのリハーサル過程を、歌手は引き受けなければならないということだ。三人の異なる演出家、三つのコンセプト、三度の新たな共演者とその他諸々の状況等々、これをどうやって処理するのか。ペーター・ホフマンとしては、無責任な答えは憚られるところだ。だが、彼が、異なる演出を識別する本質的な特徴を概観的に述べるとき、彼にとって劇場の仕事とは、演出指示にただ従うことでもなく、それを丸暗記することでもないということ、シュツットガルトとハンブルクの違いは単に異なる登場と退場という問題ではないということがわかる。<今、パルジファル役で、三回、舞台にかかわっていますが、三つの演出うちのどれかが私には易しいなどという根拠は見当たらない> ということだ。専門誌『オルフェウス』は、昨年、ペーター・ホフマンに、『若手として最高の業績のある者』という評価を与え、『ほとんど空席状態のワーグナー・テノールの専門領域を担う運命』をあてがうことを正当化した。こういう予言を成就するのは、困難な道ではあっても、ペーター・ホフマンはとるべき道を間違っていないと思う」(ルドルフ・スパーリング、1976年4月20日付けヴッパータール舞台新聞)

 「それはペーター・ホフマンの、全く初めてのパルジファルだった。まさに唖然とするほどに迫ってくる充実感」と、シュツットガルトのゲッツ・フリードリヒ演出について、クルト・ホノルカは書いた。「ホフマンはゲッツ・フリードリヒの演出概念を間違いなく満たしており、演出に合わせた動きと高い集中度は、先輩をしのいでいた。(ハンブルグで同時に全く別の演出のパルジファルを演じたホフマンは、フリードリヒとは少ししか練習できなかっただけになおさら驚かされる。このことは彼の役者としての天分を明らかに証明している)彼は目に見える、正真正銘の若々しいパルジファルだ。その衝動的な、それにもかかわらず、コントロールされていないのではない、とっさの動きにも説得力があった。そのうえ、歌もまた、若さにあふれ、習熟されたものだった。その声は、まだ完成の域には達していないものの、今日すでに、まれにみる暗く低く柔らかい、ワーグナー・テノールへと運命づける響きにおいて傑出している。ホフマンはシルヴィオ・バルヴィーゾにも間違いなく感謝してよいところだ。彼は、最高の専門家たちの中、バルヴィーゾの下で大切に扱われた。聡明な音楽家はそれ程多くのリハーサルをせずともとにかく理解し合えるものだ」(1976年3月16日付け、シュツットガルト・ニュース)

 ハンブルクでは、新演出初日(プレミエ)の後、次のように書かれている。「ペーター・ホフマンのパルジファル・デビューは、興奮でわくわくさせられた。ジークフリートのような体型、丈の短い革のシャツを着て、素足、すらりとしていて、金髪、スポーツマンらしく柔軟な動き。彼の少年らしい素朴さ、知的な反応力と心を奪う輝きは、まさに、だれもがこの役に対して夢見るタイプだ。叙情的な色合いを持つ暗いテノールの音色は申し分のない輝きがあるが、声のバランスに関しては、まだ難しさが存在する。ペーター・ホフマン自身が、まだどれ程多くを学ばなければならないかということを一番良く知っている。しかし、彼のワーグナー・テノールとしてこわいもの知らずのキャリアはもはや止められない。大オペラ劇場が31歳の歌手を争って手に入れようとしている。来シーズンは、パリ、ロンドン、サンフランシスコ、夏はバイロイトに客演することになっている。他の人が十年かけてやり遂げることを、彼は一年半で実現してしまった。そして、荷が重すぎると感じれば、何度でも否と言うだけの賢明さを充分に備えている」(1976年4月20日付け、ハンブルクの夕刊)写真の頁から
•ヘルベルト・フォン・カラヤンの下で、1980年、ザルツブルク復活
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•「舞台では公演の日に自分の能力の頂点にいなければならない。公演は先に延ばせない」(1980年、ザルツブルク復活祭音楽祭、パルジファル)
•1980年、ザルツブルク復活祭音楽祭、パルジファル、第2幕と第3幕、クンドリーは、ドーニャ・ヴェイソヴィッチ
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•「カラヤンは、私にとって、最高に偉大だ。ベルリンで『パルジファル』を録音した数週間のことは、今も忘れられない。カラヤンがいかに音楽を知っているか、いかにそれを伝える力があるか、こういうことを描写するのは困難だ。詩人じゃなければならないだろう。あるいは、『パルジファル』の中に『それは簡単には言えない』とあるようなものだ」『パルジファル』のレコード録音で、カラヤンとホフマン
•ペーター・ホフマンにアドバイスするカラヤン ~「これだけは見ておきたいオペラ」 新潮社
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