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R.シュトラウス「影のない女」新国立劇場 [劇場通い]

kage.jpgR.シュトラウス:影のない女
ドニ・クリエフ演出
エーリッヒ・ヴェヒター指揮 
東京交響楽団
新国立劇場
2010年6月1日

皇帝:ミヒャエル・バーバ
皇后:エミリー・マギー
乳母:ジェーン・ヘンシェル
バラク:ラルフ・ルーカス
バラクの妻:ステファニ・フリーデ
霊界の使者:平野 和

シーズンチケットで、今シーズンの予定がこれで終了です。最終日でした。

このオペラ、実演は初体験です。まあおもしろいと思ったのは、バイエルン来日公演のテレビ放送でした。市川猿之助演出、愛知芸術劇場での上演でした。過去記事

音楽的には、オーケストラの大音響とソプラノ二人の突き抜ける大声(美しかったです・・念のため)が最も印象的でした。とにかく凄かった。幕がおりるごとに、凄い!を連発する声が聞こえました。ソロ演奏はほんとに巧いと思いました。

上記の映像とはかなり違う感じを受けました。あの映像では、どちらかというと繊細さが印象的でした。それが気に入って、CDもいくつか聴いたものです。

舞台は、ごく単純で、装置を動かすだけのものでしたが、照明効果がよくて、美しかったし、動かし方も効果的、感動的。皇后の衣装は、デザインも色も気に入りました。エミリー・マギーの美しさが一因かもしれませんけど、とてもしっくりして、全幕眺めて飽きませんでした。彼女、立ち居振る舞いが常に美しく決まるのが、いいです。

主役のソプラノ二人は、新国立劇場のおなじみさんというところ。バラクの妻、オペラグラスでのぞくとなかなかの美人だし、表情の変化なども的確でよいのですけど、遠目だと暗い色の衣装や髪色、髪形のせいでしょうか、皇后ほど印象的ではなかったです。

皇帝はなんだかそこらのしょぼくれたおっさん風。もっとかっこよく決めてほしかったです。衣装もよくない。なぜかただ一人名前を持つ染め物屋バラクのほうが、はるかに精彩がありました。視覚的にも声的にも。

最初に登場する霊界の使者、とても印象的でした。帰り道で小耳に挟んだおしゃべりによれば、最後まであれがカイコバート大王その人だと信じていた観客もいたみたいです。確かにそう思われてもよいほどの貫禄でした。

乳母は、はじめちょっと物足りなかったけど、次第にこの演出にはぴったりと思えました。かの映像では、悪役ぶりが勝っていました。こちらは、悪意は感じられず、その最期はなんとも理不尽と感じました。むしろ教条主義によって排除されたような感じさえ・・

男女が愛し合って、夫婦相和し、子どもをつくる・・
これこそ人生の幸福・・自然の道理・・というのは、確かに間違いでもウソでもないんですけど、大音声でのプロパガンダは、やっぱりちょっと気色悪いです。子どもが健やかに育ち、人間らしい生活を維持できる社会とは言えない中では。だからこそのプロパガンダなんでしょうけど。バラクの弟たちは障害者のようですが、彼らも健全に生まれてきたのだとバラクも言っているように、人を大事にしない社会ほど、教条的になるのかもしれません。

バイエルン来日の映像とは、かなり違ったことを考えてしまいました。演出、演奏、字幕、そして見る方の状況によって、その都度、思うことがずいぶんと異なるものだと、実感しました。


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yokochan

こんにちは。
同じ最終日の公演を観劇しました。

最後だけあって、歌手もオーケストラも充分練れてきて、そして惜しげもない歌を披露してくれましたね。
音楽と歌、演奏には、ほんとうに感動しました。

シュトラウスには、家庭内を交響曲にしたり、オペラでも夫婦や親子を題材にしたりで、ドメステックな素材を恥じらいもなく明るく語ってしまうところがありますね。
私はそうしたとき、歌詞には目をつぶって、音楽のみに耳を澄ますことにしております(笑)
TBさせていただきました。
by yokochan (2010-06-02 23:52) 

euridice

yokochanさん
丁寧なブログ記事、楽しませていただいています。
舞台、はじめは、何これ?でしたけど、
照明がいいのがよかったようです。
黒子の動きもなかなか楽しめました。

>音楽のみに耳を澄ます
音だけのCDもいいですね。

TB、ありがとうございます。
by euridice (2010-06-04 08:50) 

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