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ホルスト・シュタイン [人々]

指揮者のホルスト・シュタイン(1928.5.2 -2008.7.27 ドイツ)の訃報を、おじゃましているいくつかのブログで知りました。享年80歳だそうです。指揮者ということ以外、何も知りませんし、写真と映像でしか見たこともありませんが、一度見ると絶対忘れない、いわば異形の人。

ペーター・ホフマンは、けっこう頻繁に、ホルスト・シュタイン指揮の公演に出演したようです。伝記などからわかるのは、ウィーン、ハンブルグでの「ラインの黄金」、バイロイト音楽祭の「パルジファル」です。ラジオ放送(1976年)の録音がこちらにあります。(期間限定につき、興味のある方はお早めに どうぞ)

ハンブルグでの「ラインの黄金」で、ホフマンが歌詞を忘れて、次に進めなくなった話が伝記にあります。ホフマンは火の神ローゲでした。ヴォータンはハンス・ゾーティン。アルベリッヒは客演歌手とあり、名前は書いてありません。多分はじめて共演した歌手だったのでしょう。この歌手に聴き入ってしまったのだとか。

ヴォータンがアルベリッヒから暴力づくで指環を奪う場面のあと、ローゲが『彼は放免ですか』と尋ね、ヴォータンが『縄目を解いてやれ』と命令する。自分が歌う番なのに、どうして静かになったのかと、まず不思議に思い、大変だ、自分の番だったと気がついたのはいいけど、歌詞を忘れて先に進まない。プロンプターはプロンプターボックスから上半身を半分突き出して歌詞をささいている。舞台は停止状態。アルベリッヒは、かわいそうにここから先はわからないんだと気の毒がり、ヴォータンもローゲの台詞がないことには次の自分の歌が歌えない。ローゲ本人は、ひたすら、どうやって先に進むべきかということだけを考えている・・・ こんな時には、全てが麻痺状態に陥っていて、だれかがうまくアドリブを入れるなんてことにはなかなかならないのだそうです。こんなときこそ、指揮者の出番。というわけで、昔からの確実なやり方で、急場を救うべく指揮台のホルスト・シュタインが歌い、舞台は発車。恐ろしかったが、同時に、わくわくしたどきどきしたそうです。

関連記事:
ラインの黄金
バイロイト音楽祭デビューのパルジファル
タグ:P.ホフマン
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コメント 8

TARO

シュタインはものすごく声が良いそうですね。
普通のリハーサルでも、朗々としたテノールの声で歌いだすことがあったみたいです。
シュタインの名前をはじめて知ったのは、バイロイトでリングを振りだした時で、私が中学生か高校生か、そのぐらいの時でした。もしかすると私の初リングはFMのシュタイン指揮によるバイロイト中継だったかもしれません。記憶に間違いが無ければ、リゲンツァがブリュンヒルデに抜擢されたときだったような。
その後ずっとバイロイトを支えてきた人ですよね。音楽ジャーナリズムの話題はブレーズ、レヴァイン、バレンボイム、シノポリとスター指揮者たちに奪われてましたけども。
by TARO (2008-08-01 00:39) 

euridice

TAROさん、こんにちは^^!
>シュタインはものすごく声が良い
へぇ・・そうなんですか。

ホフマンに関しては伝記など読む前に、
それも「ラインの黄金」が例としてあげられていましたが、
歌詞をよく忘れるというか、自分の順番を忘れるみたいなコメントが
某国投稿サイトにあったので、
こういう話を伝記で読んで、
こういう公演に当たって、気がついた客が
けっこういるんだわ・・と思いました。

どうも他の歌手の歌に耳を奪われちゃうといけないみたいです・・

>中学生か高校生か
クラシック音楽に興味を持ち始めてましたけど、
指揮者のお仕事が全然わかってませんでしたというより
存在に関心がなかったです・・
by euridice (2008-08-02 07:10) 

yokochan

おはようございます。
ホフマンとシュタインはバイロイトでの共演はなかったようですね。
シュタインのバイロイト放送で、ワーグナーを次々に楽しんできただけに、今回の逝去はとても寂しいです。
 私の方の記事は、昔々雑誌で読んだレポートの引用ですが、ジークフリートになり切るシュタインです。こけたテノールは超々ベテランのハンス・バイラーで、当時はウィーンでもジークフリート役が払底していたようです。
by yokochan (2008-08-02 09:52) 

keyaki

ホルスト・シュタインが、スイス・ロマンド管弦楽団音楽監督時代にルッジェーロ・ライモンディと共演していますので、記事を書きました。
TBさせていただきましたので。承認よろしくお願いします。
by keyaki (2008-08-02 20:33) 

euridice

yokochanさん、こんにちは^^!
>ジークフリートになり切るシュタイン
ホフマンの伝記、TAROさんのコメント、そしてこの話で
大いに納得です。この指揮者さんが前よりちょっぴり身近に感じられる
ようになりました。

>ホフマンとシュタインはバイロイトでの共演はなかったようですね。
パルジファルがあります。1976年、78年はラジオ放送されています。
映像のパルジファルがホフマンじゃないのがとっても残念です。
記事のリンク先にちょっとですが音声ファイルありますが、
記事に全曲ラジオ録音の場所をリンクしましたので、よろしければどうぞ。

TBありがとうございます。
by euridice (2008-08-02 21:10) 

euridice

keyakiさん
TBありがとうございます。
ライモンディのドン・ジョヴァンニの指揮をなさったのですね。

私のもTBしますので、よろしく!
by euridice (2008-08-02 21:15) 

ななこ

H・シュタインは一度見たら忘れられない風貌ですからいくつかの映像は記憶があります。
でも生の演奏経験としてはN響の演奏会形式「パルジファル 3幕」だけです。
ソリストが男性3人で(ポール・エルミング、マッティ・サルミネン、ウォルフガング・シェーネ)見た目は地味ですが感動した覚えがあります。
ちょうどそのNHKの放送映像が見つかって再生してみました。
1998年2月18日ですから翌年には倒れて活動休止ということなのですね。
ゆっくりとしたテンポでとても堅実な指揮です。
大きな頭にくらべ眼や鼻や口はとても小さいのですが、それぞれが本当に優しい表情を醸し出していて声には出さないけどいつも歌ってる感じです。
コーラスに対して指示を出すときはその口からテノールの声が聞こえてきそうでした。
映像を見てたら終わったとき感無量だったらしく眼が潤んでるようでこちらもじ~んときました。
ソリスト達も熱演でした。
ポールエルミングがホフマンだったら・・・ふと考えてしまいました。
声は伸びやかでよく出てるのですがそこをもう一押し・・・というところが足りないのですね。
でもその後のパルジファルと比べたらポールエルミングは決して悪くありません。







by ななこ (2008-08-03 15:50) 

euridice

ななこさん
シュタインの指揮姿、生で見たかったです^^

>ポールエルミング
読売の公演に行きましたが、
生視聴でもいまひとつ・・でした。

by euridice (2008-08-04 06:42) 

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