ヴェルディ「エルナーニ」 [オペラ映像]
メトロポリタン歌劇場で久しぶりに上演されたというラジオ放送をききました。これはオペラに興味を持ち始めたころ、仕事帰りにしょっちゅう通り道のレコード屋に寄り道していて、パッケージの舞台写真で、おもしろそうだと思って買った輸入ビデオでの視聴が初めてでした。メトロポリタン歌劇場1983年の新演出初演の舞台ですから、目下のラジオ放送のプレミエ映像ということです。メトロポリタン歌劇場のデータベースに今シーズンの舞台写真が載っていますが、まさに同じです。
メトロポリタン・オペラ1983年の映像は一見して気に入りました。豪快な剣劇。わくわくして楽しい。女ひとりを男三人で取り合う、理屈抜きのチャンバラ、時代劇。抜き身の剣を手に、侮辱への怒りと復讐を歌うシルヴァ(R.ライモンディ)、いきりたつ男たちの前に立ちはだかるエルヴィラ(ミッチェル)、そろって剣を抜きはなち、謀反を誓う男たち(合唱団)、シャール・マーニュの銅像の中から、神聖ローマ帝国皇帝として現れるカルロ5世(ミルンズ)等々、かっこいいの一言に尽きます。エルナーニ(パヴァロッティ)も魅力的です。当時の若い新進ソプラノのエルヴィラ以外は、人気歌手を集めた豪華キャストです。最初はエルヴィラが黒人歌手なのには物語上、違和感がありました。そして、オペラ慣れしていなかったこともあって、まるでお腹を膨らませ競争をしたカエルみたいな胸には唖然としました。しかも、初めの衣装が光沢のある緑色のドレスときています。でも、ベテラン男声歌手三人を相手に引けを取らない、表現力豊かで、雰囲気あふれる、すばらしいエルヴィラでした。
後にスカラ座1982年の映像をテレビで見ました。こちらもドミンゴ、フレーニ、ブルゾン、ギャウロウの豪華キャストですが、一幕のシルヴァの景気のよい歌、実は深い恨みに復讐を誓うシルヴァ大見栄を切るの場面がないのが残念です。恨みの深さと国王を前にしての豹変振り、この落差がおもしろいので、これがないと寂しいです。次の幕でもシルヴァはこういう面従腹背の変わり身の速さのお芝居的小気味良さを見せてくれます。これだけがその要因ではないでしょうけど、スカラ座の映像は、おそらく演出意図によって、全体的に豪快さ、ある種のご都合主義丸出しの荒唐無稽さが薄まって、深刻でシリアスな悲劇の様相が強まっていると思います。
1983年メトの映像については、 サイドバー「読んでいるブログ」にも載せているkeyakiのメモ、メモ... にパヴァロッティをしのぶ記事がたくさんあります。どの記事もコメントを含めてとても詳細で興味深い内容です。いくつかリンクします。ビデオクリップもあって楽しいです。メト1983年の映像は見なくてもわかっちゃう・・ほどですけど、全部視聴したくなって、DVDを買う羽目になること請け合いかな^^?!
☆☆パヴァロッティを偲んで《エルナーニ》1幕:シルヴァの恨み節の場面があります。
☆☆パヴァロッティを偲んで《エルナーニ》4幕:関連記事のリンクがあります。
今シーズン1985年以来久しぶりに再演されたというメトのエルナーニ。バリトンとバスはいくつかの映像や録音でけっこう耳にしていますが、残念ながらお二人ともあまり好きな声ではありません。テノールとソプラノは少なくとも意識して聞いたことはない歌手です。ラジオ放送録音をネットからダウンロードしてざっと聞きましたが、その限りにおいては、全体的に熱も声も薄いというか、深みに欠ける感じというか、なんとなく間が抜けてます。特に歌はのんべんだらりという感じでわくわく感欠如。バリトンとバスの区別がつきにくい感じもします。総じて個性が弱いようです。過去の二つの公演には比べようもないというべきでしょう・・ 過去の鑑賞体験は、映像ではあるし、思い出の中である意味美化されているとしても・・です。
ヴェルディ:エルナーニ
メトロポリタン・オペラ1983年の映像は一見して気に入りました。豪快な剣劇。わくわくして楽しい。女ひとりを男三人で取り合う、理屈抜きのチャンバラ、時代劇。抜き身の剣を手に、侮辱への怒りと復讐を歌うシルヴァ(R.ライモンディ)、いきりたつ男たちの前に立ちはだかるエルヴィラ(ミッチェル)、そろって剣を抜きはなち、謀反を誓う男たち(合唱団)、シャール・マーニュの銅像の中から、神聖ローマ帝国皇帝として現れるカルロ5世(ミルンズ)等々、かっこいいの一言に尽きます。エルナーニ(パヴァロッティ)も魅力的です。当時の若い新進ソプラノのエルヴィラ以外は、人気歌手を集めた豪華キャストです。最初はエルヴィラが黒人歌手なのには物語上、違和感がありました。そして、オペラ慣れしていなかったこともあって、まるでお腹を膨らませ競争をしたカエルみたいな胸には唖然としました。しかも、初めの衣装が光沢のある緑色のドレスときています。でも、ベテラン男声歌手三人を相手に引けを取らない、表現力豊かで、雰囲気あふれる、すばらしいエルヴィラでした。
後にスカラ座1982年の映像をテレビで見ました。こちらもドミンゴ、フレーニ、ブルゾン、ギャウロウの豪華キャストですが、一幕のシルヴァの景気のよい歌、実は深い恨みに復讐を誓うシルヴァ大見栄を切るの場面がないのが残念です。恨みの深さと国王を前にしての豹変振り、この落差がおもしろいので、これがないと寂しいです。次の幕でもシルヴァはこういう面従腹背の変わり身の速さのお芝居的小気味良さを見せてくれます。これだけがその要因ではないでしょうけど、スカラ座の映像は、おそらく演出意図によって、全体的に豪快さ、ある種のご都合主義丸出しの荒唐無稽さが薄まって、深刻でシリアスな悲劇の様相が強まっていると思います。
1983年メトの映像については、 サイドバー「読んでいるブログ」にも載せているkeyakiのメモ、メモ... にパヴァロッティをしのぶ記事がたくさんあります。どの記事もコメントを含めてとても詳細で興味深い内容です。いくつかリンクします。ビデオクリップもあって楽しいです。メト1983年の映像は見なくてもわかっちゃう・・ほどですけど、全部視聴したくなって、DVDを買う羽目になること請け合いかな^^?!
☆☆パヴァロッティを偲んで《エルナーニ》1幕:シルヴァの恨み節の場面があります。
☆☆パヴァロッティを偲んで《エルナーニ》4幕:関連記事のリンクがあります。
今シーズン1985年以来久しぶりに再演されたというメトのエルナーニ。バリトンとバスはいくつかの映像や録音でけっこう耳にしていますが、残念ながらお二人ともあまり好きな声ではありません。テノールとソプラノは少なくとも意識して聞いたことはない歌手です。ラジオ放送録音をネットからダウンロードしてざっと聞きましたが、その限りにおいては、全体的に熱も声も薄いというか、深みに欠ける感じというか、なんとなく間が抜けてます。特に歌はのんべんだらりという感じでわくわく感欠如。バリトンとバスの区別がつきにくい感じもします。総じて個性が弱いようです。過去の二つの公演には比べようもないというべきでしょう・・ 過去の鑑賞体験は、映像ではあるし、思い出の中である意味美化されているとしても・・です。
ヴェルディ:エルナーニ
1983年メト 映像 | 2008年3月29日メト ラジオ放送 | 1982年スカラ座 映像 | |
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指揮 | ジェイムズ・レヴァイン | ロベルト・アバド | リカルド・ムーティ |
演出 | ピエール・ルイジ・サマリターニ | ピエール・ルイジ・サマリターニ | ルカ・ロンコーニ |
エルナーニ | ルチアーノ・パヴァロッティ | マルチェロ・ジョルダーニ | プラシド・ドミンゴ |
エルヴィラ | レオーナ・ミッチェル | ソンドラ・ラドヴァノフスキー | ミレッラ・フレーニ |
カルロ | シェリル・ミルンズ | トーマス・ハンプソン | レナート・ブルゾン |
シルヴァ | ルッジェーロ・ライモンディ | フルッチョ・フルラネット | ニコライ・ギャウロウ |
リカルド | チャールズ・アンソニー | リヤン・スミス |
メトの再演の放送、私も聞きました。ウィーンでも少なくとも50年ぶりとかの演奏の放送を聞いて、練習不足だか実力不足だか、特に低声歌手ですが、????でしたので、全く期待はしていませんでしたが、期待通り、????.......歌唱のあらが目立ち過ぎで楽しめませんでした。重唱もねぇ、実力不足と練習不足のダブルパンチ。
リカルドだってね...チャールズ・アンソニーさん定年退職しちゃったのかしら?
男声3人を揃えるのが難しいから、めったに演奏されないわけですから、無理矢理上演しなくていいよ、です。
ヴェルディのこの手のオペラに関しては、1980年代以降オペラ歌手の実力は右肩下がり....が証明されたようなものです。大見得切って歌える歌手がいないですものね。
私の「エルナーニ」シリーズの力作?、リンクして下さってありがとうございます。
こちらから、シリーズ最後の記事をTBさせていただきますので、よろしくお願いします。
by keyaki (2008-04-28 10:08)
『エルナーニ』、ウィーンでも戦後は30回しか上演されていないんですね。1998年ヴィック演出、小澤征爾指揮で始まったプロダクションです。エルナーニがシコフ、ドン・カルロがアルヴァレス、シルヴァがスカンデウッツィ、エルヴィラがクライダーというキャストです。確かFMで放送されたものをエアチェックしたものがあったはずです。聴いてみたいと思いますが、対訳が……。
by オデュッセウス (2008-04-28 21:23)
エルナーニは大好きなオペラです。(スカラ座のしか聞いてませんが)
同じ頃にこれだけの素晴らしい歌手を揃えてあっちとこっちで上演されてたとは凄いですね。
keyakiさんのブログでメトのを聞かせていただきました。
当然ですがやっぱりというかさすがパヴァロッティですね。
これだけテッシトゥーラの高い曲はドミンゴにはかなり負担だったと思いますが、悲壮感漂うドミンゴの歌が私は好きです。
>深刻でシリアスな悲劇の様相
そうです。
見た瞬間(聞いた瞬間)オケの感じからして違うと思いました。
シルヴァはR・ライモンディ、いいですね!
でも、やっぱりメトのこのキャストこの舞台の中にあってこその輝きでしょうか。
DVDを是非見なくてはと思いました。
今年の再演は悲壮感も血湧き肉躍る痛快さもなくて、知らずに聞いてたら「エルナーニ」と気づかなかったと思うくらいです。
by ななこ (2008-04-28 23:11)
keyakiさん
リンクとTB、ありがとうございます。久しぶりに見ましたが
やっぱりわくわくします。
by euridice (2008-04-29 09:04)
オデュッセウスさん
ぜひDVDでお楽しみください^^+
>1998年ヴィック演出、小澤征爾指揮
ヴィック演出なんですね。さわりだけ聴きました。
シコフはいいけど、他はねぇ・・というところ。
指揮についてはノーコメント^^;;
by euridice (2008-04-29 09:06)
ななこさん
またななこさんにきっかけを与えていただきました^^+
>DVDを是非見なくてはと思いました。
ぜひ、ぜひ。スカラ座とはひと味もふた味も違うエルナーにが
楽しめると思います。
>知らずに聞いてたら「エルナーニ」と気づかなかった
そう、そういう感じですね。
これも相当違うエルナーニではあります・・。
by euridice (2008-04-29 09:09)
メトロポリタン歌劇場で一度も上演されてないヴェルディのオペラはいくつありますか。
by サンフランシスコ人 (2008-04-30 02:26)
クイズですか。
メトロポリタン歌劇場で一度も上演されてないヴェルディのオペラがいくつあるか知りません。
by euridice (2008-04-30 06:20)
クイズでないです。
by サンフランシスコ人 (2008-04-30 07:07)
>クイズでないです。
クイズではなかったのですか。
メトロポリタン歌劇場で一度も上演されてないヴェルディのオペラはあるのでしょうか。あるとすれば、何でしょうか。
(これはクイズではありません。疑問です。)
by euridice (2008-04-30 07:21)
オベルト?
by サンフランシスコ人 (2008-04-30 07:30)
サンフランシスコ人さん、euridiceさん
横から参加させていただきます。こういうのは、調べたくなる性分なもんで。
>メトロポリタン歌劇場で一度も上演されてないヴェルディのオペラはいくつありますか
答え:10作品。(改作は1作品とは数えていません)
>メトロポリタン歌劇場で一度も上演されてないヴェルディのオペラはあるのでしょうか。あるとすれば、何でしょうか。
オベルト、一日だけの王様、ロンバルディ(イェルサレム)、二人のフォスカリ、ジョヴァンナ・ダルコ、アルツィーラ、アッティラ、群盗、コルサーロ、レニャーノの戦い
ほとんど初期の作品ですが、ロンバルディ、アッティラ、二人のフォスカリが上演されていないのは意外ですね。
ザーっとメトのデータベースで調べましたので、間違いがあるかもしれませんので、参考までにということでお願いします。
by keyaki (2008-04-30 10:03)
ロンバルディは、1993年(ころ?)パヴァロッティで上演されています。
by サンフランシスコ人 (2008-04-30 11:12)
サンフランシスコ人さん、ご指摘ありがとうございます。
NYメト《ロンバルディ》(12/02/1993〜05/13/1994 全11公演)
「オベルト、一日だけの王様、二人のフォスカリ、ジョヴァンナ・ダルコ、アルツィーラ、アッティラ、群盗、コルサーロ、レニャーノの戦い」
が、メトロポリタン歌劇場で一度も上演されてないヴェルディのオペラです。
ということでいいのかしら。
by keyaki (2008-04-30 15:03)
keyakiさん、ありがとうございます。
上演してないものもあるんですね。
by euridice (2008-04-30 21:29)
調べました。サンフランシスコ市では、1851年から1899年までに(1951年/1999年ではありません。)「エルナーニ」をなんと150回も上演しています。
by サンフランシスコ人 (2008-05-02 02:25)
>1851年から1899年までに. . .「エルナーニ」をなんと150回
毎年上演したとして、3公演/年 ですね。
20世紀に入ってからはどうなんでしょう。
by euridice (2008-05-02 07:52)
「20世紀に入ってからはどうなんでしょう。」
調べます。
by サンフランシスコ人 (2008-05-02 08:13)
FMで放送されたのを録音していたんですが、ずっと聞く時間がなくてようやく今日CD化し聞きました。というか今、聞いてる最中なんですが、サンドラ・ラドヴァノフスキーがいまいちでしょうか。あ、でも2幕に入ったら少しよくなってきましたね。
ラドヴァノフスキーはヨーロッパで名まえが出だした頃の録音など、(これもFM放送録音を聞いただけですが)かなり素晴らしく、実力のあるヴェルディ歌いなのかなとおもったのですが、その後どうもいまひとつの評ばかり聞こえてきて、今回果たしてどうか興味津々だったのです。――もっとも初期ヴェルディの難しさは特別みたいで、フレーニの録音ですら全然歌いきれてない感じですけども。
METの舞台写真見ると、まるでハンプソンが主役みたいですね。
by TARO (2008-05-06 02:06)
TAROさんでしたか!^^++
>初期ヴェルディの難しさは特別みたい
そうなんですか。技術的に歌いにくいのでしょうか。
それとも、表現するのが難しいのでしょうか。
by euridice (2008-05-06 06:59)
技術的にも難しいですし、あと表現というよりテンペラメントが重要みたいです。
ヴェルディ後期やプッチーニだと音楽は緩やかに盛り上がって行って、最高音で感情もピークに達しますけども、ヴェルディ初期も含めたいわゆるプレ・ヴェルディは感情とは無関係(は言い過ぎですが)に音の跳躍が激しいですし、そういう曲に対応するには、どうやらテクニックだけでなく特別の気質も必要みたいです。
1幕のアリアをスコット(アリア集)とフレーニと比べると、フレーニはなんとも歌いこなせてない感じで、むしろ下手にすら聞こえるんですが、ラドヴァノフスキーを聞いてたら、そのフレーニですらなんて上手いんだろうと思えてきました。
by TARO (2008-05-07 00:20)
TAROさん
ありがとうございます。
なんとなくわかるような気がします・・が・・
要するに「適性」の問題でしょうか。
by euridice (2008-05-07 06:33)
昨日、メトロポリタン歌劇場からの生中継で、小澤征爾の「スペードの女王」のFM放送がありました。
by サンフランシスコ人 (2008-12-15 04:13)