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映像「椿姫/ラ・トラヴィアータ」 フェニーチェ2004  [オペラ映像]

ヴェルディ 歌劇《椿姫》来日公演で話題です。

「我々が通常目にする《椿姫》ではなかった。そこには、オペラ界に向けての、あるメッセージが込められていたのである。」(岸純信:ライナーノーツより)ということだそうですが、残念ながら私には「あるメッセージ」はどうも伝わってこなかったし、ヴィオレッタが大いに「感情を込めて」ひたすら「陶酔の極み」という感じで、口の開け方、顔の表情もたっぷりに歌うのがわざとらしく、そらぞらしく思える部分が多くて、なんだか、もどかしい「椿姫/ラ・トラヴィアータ」でした。

劇場ならそれほどでもないのかもしれませんが、表現過多という感じで、おまけに、とりあえず美人だけど、愛嬌のない、コワイ女という印象。柔らかい雰囲気がほとんどない。ごくたまに、はにかんだような笑顔をちらっとみせるとき、ほっとするんですど・・・一瞬です。こういうのを「華がない」というのでしょうか。

それでも、音楽そのものの持つ説得力だと思いますが、二幕の、「死にます!」のあたり、三幕の「過ぎ去った日よ、さようならAddio,del passato」のあたりは、胸が熱くなりました。それに、ヴィオレッタは、後に行くほど、より自然な感じになってきました。だから、三幕が一番納得できました。素顔に近いほうが多少可愛いです。ひょっとしたら、演出意図かもしれませんが、それなら、それで、ちょっとね・・・という気持ちです。

終始、札ビラを切るという演出で、前奏曲のときから、娼婦然とした下着姿でベッドで品を作るヴィオレッタに何人もの男たちが次々とお札を手渡し、ヴォレッタのチェストの引き出しには裸のお札が詰まっている。二幕は森の中で終始、落ち葉ならぬ紙幣が舞い、地面に積もっているのも紙幣。このお札にはヴェルディの肖像とフェニーチェ座が描かれていますが、何か伝えたいことがあるのでしょうか。単なるジョークとしても、私には何の感興も湧きません。鈍いのかな。父ジェルモンは、別れ際、おもむろに財布から大枚取り出してヴィオレッタに渡し、ヴィオレッタがそれを投げ捨てるシーンは、確かに一瞬衝撃的ではありますが、この物語の本質とするには無理があるように思います。ヴィオレッタの悲劇を、本質的なところで、貨幣経済、あるいは拝金主義と関係づけるのって、なるほど納得って気持ちにはなれませんでした。

演出家は、この間上野の森で観た「エレクトラ」と同じ人ですが、この方の演出は、私にはどうもすんなりとその意図が伝わってこないようです。

ロリン・マゼール指揮
ロバート・カーセン演出
フェニーチェ座2004.11.18 初演版

ヴィオレッタ:パトリツィア・チョーフィー
アルフレート:ロベルト・サッカ
ジェルモン:ディミトリ・フヴォロストフスキー

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コメント 7

ユルシュール

フェニーチェの来日公演、結局チケット代が高くて行けませんでした。(^^; そうでした、DVDが出ていたのですよね。
歌う時の表情……劇場ではたいして気にならないようなことでも、アップの入る映像だとものすごく気になってしまうこと、ありますね。舞台のための演技と映像のための演技とではまた、大きく違ってくるのでしょうし。
それにしても、今ではイタリアの歌劇場で上演されるヴェルディものも、しっかり「現代風演出」なのですね。しみじみ……。
by ユルシュール (2005-05-21 08:31) 

euridice

あら^^j さっそくのコメント、うれしいです。

>>舞台のための演技と映像のための演技
映画と舞台はまったく違うっていう話ですね。

舞台収録映像の場合、録画が入るからって、やり方変えてるとは思えませんけど・・・どうなんでしょ?

映像、たくさん見てますけど、椿姫に関して言えば、これほどに顔の表情が気になったのは、このヴィオレッタさんが初めてでした。アップが多い映像だったのかしら??(最近の映像は確かに、どアップが多いですね)
他のヴィオレッタさんたち、自然な感じだからって、けっして感情がこもってないなんてこと、なかったと思います。
by euridice (2005-05-21 09:19) 

おさかな♪

う~ん・・・。
ちょっと意気込みすぎちゃったのかな。。。
by おさかな♪ (2005-05-22 00:06) 

keyaki

DVD見ました。
こんなに魅力のないヴィオレッタもめずらしいっすね。とにかく、女性の可愛らしさゼロ、なんでかなぁ・・・と考えてみました。
1、表情がワンパターン(目を剥く)
2、体型が男か女かわからないスポーツ選手タイプ
3、鼻の下を伸ばして、縦に口を開けるので、口がひんまがる。
4、"Si"というだけでも大袈裟な口の開け方をする。なんか、発声練習をしているような歌い方で、最初から最後まで必死で歌っていて、聴いていて疲れる。
チョーフィは、自分の歌に終始酔っている感じでした。私って、うまいでしょ!という歌い方です。

演出も???です。最初から、金金金で、あれでは、アルフレードが札ビラを投げつける意味がない。
それに、パパ・ジェルモンの頼みをきいて、アルフレードをあきらめるところでも、空からお札がハラハラ、演出意図が??です。
ジェルモン親子は、日本人がモデルかも、深読みかな。

音楽も初演版とかだそうですが、更に野暮ったくて、豪快な感じで、一瞬トロヴァトーレ??と錯覚する場面もありましたヨ。パパ・ジェルモンがルーナ伯爵か!なーーんて。

>アップが多い映像だったのかしら??
そんなことはなかったです。舞台は暗かったですし。本当に、いかにも演技してますでしたね。もしかして、初役??
by keyaki (2005-05-22 00:12) 

euridice

概して、評判がいいですね。私もいわゆるフツーじゃない演出でも大いに納得してしまうことも少なくないですが、これはなんだか落ち着かないというか、よくわからなかったです。

>アルフレードが札ビラを投げつける
確かに、今更って感じでした。ここのところはこのオペラの最も衝撃的なシーンだと思うんですけどね。

全体的に何なんだ・・・?!というサスペンス感(?)は充分楽しめました。こういうの後で虜になる可能性があるんですね〜〜〜
(今のところ大丈夫みたい^^;)
by euridice (2005-05-22 08:23) 

keyaki

パパ・ジェルモンの行動も??でしたね。
登場の仕方が普通じゃなかったり・・・・
見た目もメガネかけさせられて、似合わないダブルのスーツでしたし。
財布から、たいした金額ではないお金を取り出して、ヴィオレッタに渡すとそれを なによ!って、投げちゃうでしょ。その時のパパのリアクションが○○新喜劇みたいでおかしかったし、メガネをハンカチで拭いたり・・・・
「椿姫」としては???でしたけど、面白いですよね。

私は、初日の演奏をネットで聴きましたが、「椿姫」としては、音だけの方がいいかも・・・です。

チョーフィってちょっとひっかかったのですが、来年早々、マドリードの「愛の妙薬」に出演なんですヨ。ライモンディのドゥルカマラ、初役の公演です。(またDVD化されるかなぁ)
ボッチェリのボエームで、ミミをやってましたが、椿姫よりはよかったですから、アデリーナは慣れた役でしょうし、いいかもしれませんね・・・なんて、共演者は好きになることにしていますから、ヘヘヘ
by keyaki (2005-05-22 10:10) 

euridice

>ボッチェリのボエーム
私もテレビで見ました。えっとね、ミミはデッシー、チョーフィはムゼッタ。こういうおきゃんな役のほうが合ってるんじゃないかしらね。

>マドリードの「愛の妙薬」に出演
あら、そうなんですか!アディーナはきっとお似合いだと思います^^ RRと共演、可愛く、小粋に、やってもらいたいものですわね〜〜 楽しみですね・・

>パパ・ジェルモン
そういえば、ホリエモンに似てませんでした? ダブルの高級スーツというのは、らしくないわけですけど・・・

>「椿姫」としては???でしたけど、面白いですよね。
そう、退屈しないというか・・
by euridice (2005-05-22 10:28) 

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