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無声映画「ニーベルンゲン」 [映画]

ラング監督 無声映画「ニーベルンゲン」
前編「ジークフリート」


 この映画、まだオペラにはまる前に、ビデオを見ました。 オペラにはまった後、LDを見つけたので、迷わず購入しました。

nieberung.jpg ジークムント王の王子ジークフリートは、深い森の中、名刀鍛冶ミーメの下で修行しています。 このミーメ、なんとも奇怪な容貌と体つき、ほとんどグロテスク。なぜか弟子を快く思っていないようです。 ジークフリートも傍若無人、師を師とも思わぬ振るまい。 ミーメの弟子なのか、召使いなのかわからない、ミーメ同様にグロテスクな男たちに対しても、すぐ乱暴を働きます。 ジークフリートも他の連中も、なぜか半裸。 連中がうわさするブルグント王国の美しい姫に、一瞬にして恋したジークフリートは、 鍛え上げた剣を持ち、美しい白馬にまたがって、ブルグント王国を目指して旅立ちます。 陰険なミーメは脳天気なジークフリートに、 決して抜け出すことのできない恐ろしい森に迷い込む道を教えます。

 森の奥深く迷い込むジークフリート。 泉のそばに、恐ろしい大蛇ハーフナーが旅人を待ちかまえています。 足が四本、太い尻尾、蛇というより竜ですね、 ジークフリートは、ハーフナーを見るなり、襲いかかり、剣で刺し殺します。 おびただしい血が流れ、それをなめると、 小鳥の言葉がわかるようになります。 小鳥は、(火に囲まれて眠るブリュンヒルデのことではなくて、) 竜の血を浴びれば、不死身の体になれることを、教えます。 ジークフリートは泉に入り、泉に流れ込む竜の血を全身に浴びます。 ところが、竜があばれて、菩提樹の木に尻尾があたり、その震動で、 菩提樹の葉が散り、その一枚が、彼の背中に張り付きます。 そして、そこだけは血を浴びることができず、彼の弱点となります。

(ワーグナーのジークフリートは、血を浴びて不死身になるのではなく、ブリュンヒルデの力で背中以外は刀に傷つくことはなくなるのでした)

 ジークフリートは、なかなか森から抜けられず、 白馬にまたがって、深い霧の森を進みます。 ここの映像が、すばらしく美しいです。

霧の国の妖精の王アルベリッヒが、隠れ頭巾に身を隠して、待ちかまえています。
樹上から、ジークフリートに襲いかかりますが、あっさり負けて 命ごいをする羽目になります。 命を助けてくれれば、財宝を差し上げますと地底の国に案内します。 そこでは妖精たちが、北国の王の王冠をつくったりしています。

アルベリッヒはここで逆襲を試みますが、またあっさり失敗。 自身も妖精たちも、すべて、石にかえってしまいます。 ジークフリートは、すべての財宝と名高い名剣と隠れ頭巾を手に入れます。

(指環はなかったわけです・・・ 剣はブルグンドの名剣だそうです。ノートゥングやアーサー王のエクスカリバーを連想します)

その後、ジークフリートは森を脱出、諸国を遍歴し、諸公を討ち従え、 ブルグント王国に至りますが、映画では場面が一転し、ジークフリートの英雄的行為を ブルグント王国の宮廷で、吟遊詩人ヴォルカーが、物語ります。 ヴォルカーは勇猛果敢な騎士でもあることが、続編「クリームヒルトの復讐」でわかります。

(ヴォルカーはタンホイザーやヴォルフラムたちの仲間でしょうか)

折しも、ラッパが鳴り響き、ジークフリートの来訪を伝えます。 ジークフリートは12人の諸公を家来として従え、立派な身なりで、 グンター王の前に、現れます。以前の半裸状態とは、うってかわって、 なかなか斬新な模様の上等な服を身に付けています。

王の妹クリームヒルトが、ジークフリートに飲み物を勧めます。 二人は一目で、恋に落ちます。(会う前から、恋い焦がれているわけです) ジークフリートは太陽のように美しく、クリームヒルトも端正で、物腰も優雅な美人です。

(神々の黄昏では同様の行為をグートルーネがするわけですが、飲み物は薬物入りというわけです・・・ジークフリートはすでに妻帯者ですから)

ジークフリートをはじめから危険視している、グンター王の叔父ハーゲン侯は、 ジークフリートの求婚に対して、交換条件を出します。 ハーゲン侯は古武士の風格です。

グンター王は、アイスランドの女王ブリュンヒルデを妃に望んでいるが、 彼女の結婚の条件が難しい。兄の結婚の後でなければ、妹は結婚できない。 そこで、ジークフリートに王の求婚に協力してもらいたいというわけ。 グンター王も、誠実な風貌の、なかなかの美丈夫です。

(同名異人?のブリュンヒルデ登場ですが、性格的には共通性が大きいです。燃える岩山を越えなければ近付けないところも同じです)

クリームヒルトを是非とも得たいジークフリートは、協力を約束し、 三人は血の契約を交わします。

 求婚旅行の一行は、大船を仕立て、アイスランドに上陸、 都を目指します。騎士と歩兵の大編成の行軍です。 途中には火の燃えさかる岩山があります。 ブリュンヒルデ女王の占い婆は、偉大な王が求愛に訪れることを 女王に伝え、注意を促します。

ジークフリートを前にすると、火は瞬く間に鎮まり、一行は難なく火の山を超えます。

(この辺りは、神々の黄昏も同じ経緯ですね・・・)

ブリュンヒルデ女王は、一行を引見しますが、ジークフリートを王と誤認し、一目惚れ。 ジークフリートは自分はグンター王の従者にすぎないと告げます。

結婚の条件は、三つの謎を解くのではなく、 三つの競技で、女王に勝つことです。陸上競技なのが、微笑ましいです。 負けた挑戦者が命を奪われるのは、定石通りですが.......すでに、何人も命を落とした ようで、謁見の間の壁には、彼らの武具が展示されています。

  さて、三つの競技とは、大きな石を投げ、その後を追って跳び、槍を投げます。 隠れ頭巾で透明人間と化したジークフリートが グンター王に付き添って、競技を行い、勝利します。

負けた女王は、グンタ−王の妃となるべく、しぶしぶ船に乗ります。 ブリュンヒルデが愛するのはジークフリート。彼女は憂愁にうち沈みます。 慰めようと近付いたグンター王を拒絶し、うち倒し、縛り上げんとします。

(映画では、ハーゲン侯が部屋をのぞき、ブリュンヒルデは王を放しますが、 『ニーベルンゲンの歌』によると、彼女は王を縛り上げ、一晩中、壁につるしたとか!)

「そなたは、本当に私を3度うちまかした人なのか!  私はそなたの捕虜だが、決して妻にはならぬ!」と叫びます。

急に力を失い、女王より非力になった王。 なぜ自分はこんな男に負けたのかと、競技の結果に不審感をつのらせます。

ブルグント王国のウォルムスの宮廷は、花嫁の到着にわきかえります。 王の母ウーテが、花嫁を優しく迎えます。

ブリュンヒルデはジークフリートがクリームヒルトと結婚することを知り、 この国では、王の娘を従者の嫁にするのかと非難します。

グンターとブリュンヒルデ、ジークフリートとクリームヒルト、 二組の結婚式が盛大に挙げられます。

ブリュンヒルデは、王妃になったものの、王を拒み続けます。 王は落ち込み、ハーゲン侯はジークフリートを非難します。 ハーゲン侯の圧力に負けたジークフリートは、隠れ頭巾でグンターになりすまし、 ブリュンヒルデを屈服させますが、重大なミスをおかします。

 グンター王に化けたジークフリートは、ブリュンヒルデと争ううちに、 彼女の腕輪を、無意識のうちに奪ってしまいます。

(秘密を暴く小道具、こちらでは腕輪、ワーグナーでは指環というわけです)

それが、偶然のいたずらで、クリームヒルトの婚礼のベールに巻き込まれてしまいます。

(姫の部屋の調度、ベッドカバー、衣類などの、幾何学的な模様が とっても斬新で美しいのが、目をひきます。)

侍女と共に衣類の整理をしていて、ベールに見事な美しい腕輪が絡まっているのを 見つけたクリームヒルトは、さっそくそれを身につけ、ジークフリートに見せます。

さすがに事の重大さに気がついたジークフリートは、妻に一切の事情を話し、 「腕輪をしまい、このことについては誰にも話さぬように」と、口止めをします。

陰うつなブリュンヒルデ女王の下で、宮廷は暗い雰囲気に包まれます。 「あなたの妹とその夫はいつまでこの宮廷に留まるのか」と、女王は王を非難しますが、 王は「ジークフリートは大切な兄弟であり、彼が望む限りここに留まるのだ」と宣言します。

一方、幸せなジークフリート夫妻は、美しい花の咲き乱れる木の下で、愛を語らいます。 そこに王の母ウーテが、重要な礼拝に遅れないようにと、言いに来ますが、 折しも、ジークフリートがウォーデン (つまりヴォータンですね) の森で、 アルベリッヒから勝ち取った財宝が到着し、ジークフリートは宝の検分に駆けて行きます。 そして、その一部を気前よく人々に分け与えます。その様子と、 宝の山を見たハーゲン侯はますますジークフリートを甥の王座を脅かす者と 危惧し、グンター王にジークフリートを追い出すよう迫ります。

宝の分配に忙しいジークフリートをおいて、 クリームヒルトは一足先に、聖堂へ向かいます。

聖堂の鐘の音を耳にしたブリュンヒルデは、突然礼拝に行くと宣言し、 王妃の礼装で聖堂へと、急ぎ向かい、聖堂前の階段上で、 先を行くクリームヒルトを、呼び止めます。すなわち、先頭争いです。

(これはローエングリンの2幕、エルザとオルトルートの間でも見られます)

「待て、クリームヒルト! 従者の妻が、この国の女王の前を歩いてはならぬ!」 その言葉に、クリームヒルトは我を忘れます。

「ジークフリートは従者なんかじゃないわ!」

最愛の夫に対する侮辱を、誇り高いクリームヒルトは、がまんできません。 激しい憤りに、夫との約束をすっかり忘れ、求婚試合のいきさつと、 証拠の腕輪まで示して、ブリュンヒルデがグンター王に屈服した夜の真相を あらいざらい話してしまいます。

「あなたを屈服させたのは、兄ではなく、ジークフリートよ!」 そこにやってくるグンター王、「兄に聞いてごらんなさい」とだめ押し。 ジークフリートが駆け付け、我に返るクリームヒルト。もう取り返しがつきません。

ひどい侮辱に我を忘れたブリュンヒルデは、怒りに震え、自殺を図りますが、 ハーゲン侯に止められます。

 ハーゲン侯はこれを機会に、ジークフリートを排除しようと策略をめぐらせます。 ブリュンヒルデはグンター王に、ジークフリートを殺すよう迫ります。

そして、「ジークフリートが生きている限り、私は飲み物も、食べ物も口にしません」と、 宣言し、ハンストに突入。懊悩し、煩悶するグンター王。 ジンクフリートとの義兄弟の誓いを守るべきか? ブリュンヒルデへの愛を貫くべきか?

(クリームヒルトは、どちらかというと清純な印象の美人ですが、 ブリュンヒルデは、凄みのある美人です。クリームヒルトが白っぽい衣装に、 金髪なのに対して、ブリュンヒルデは黒っぽい衣装に、濃い髪色です)

王にジークフリートの殺害を執拗に迫るハーゲン侯とブリュンヒルデ。

(この辺りから狩りを利用してのジークフリート殺害も神々の黄昏と一部重なります)

グンター王は、ついに折れ、ハーゲン侯の案を受け入れます。そこで、 ジークフリート暗殺目的の大規模な狩りが催されることになります。 狩りの前日、ハーゲン侯は、姪のクリームヒルトから、言葉巧みに、 ジークフリートの弱点を聞き出します。

「明日の狩りは実は狩りではない。北の国々との戦なのだ。 不死身のジークフリートが先陣をきるだろう。」

軽率な自分に反省しきりにもかかわらず、クリームヒルトは、再びあやまちをおかします。

「叔父様、私は心配です。彼にも一ケ所だけ、刃物に傷つけられる弱点があるのです」

ハーゲン侯に夫を守ってもらおうと、夫の服の、菩提樹の葉が張り付いた位置に、 わざわざ縫い取りをして、弱点の場所を明確に知らせてしまいます。 クリームヒルトは悪い予感におののきますが、ハーゲン侯を露ほども疑いません。 彼が夫を守ってくれると信じているのでした。

森の中で大規模な狩りが行われています。 ここでもグンター王はひとり憂いに沈んでいます。(どうにも優柔不断な性格......)

のどが渇いたというジークフリートに、ハーゲン侯はすばらしい泉があるから、 あそこまで競走をしようじゃないかと持ちかけます。

泉に駆け付けて、水を飲むジークフリートの背後から、ハーゲン侯は、 クリームヒルトの縫い取りの位置をねらい、槍を投げます。 槍は正確にジークフリートの弱点を貫き、ジークフリートは、 ハーゲン侯とグンター王を呪い、クリームヒルトへの想いを胸に息絶えます。

ジークフリートの死をグンター王から聞かされたブリュンヒルデは、失意のどん底へ。 愛するジークフリートを永遠に失った悲しみのまなざしを王に向け、軽蔑の念を込め、

「うそを言ったのよ。そんなこともわからないあなたには国王の資格はない」

と言い放ちます。悔恨の念にさいなまれるグンター王。(かわいそうなグンター.....)

ジークフリートの遺体が、クリームヒルトの部屋の前に置かれます。 傷口をあらためたクリームヒルトは真相を悟り、哀しみは怒りに変わり、 叔父ハーゲン侯をはじめ、グンター王以下、一族に対して復讐を誓います。 クリームヒルトの美しい口元から、微笑みは消え、怨念と怒りの炎がともされ、 復讐の成就だけが彼女の生きる理由となります。

夫の墓所を訪れたクリームヒルトは、安置されたジークフリートの亡骸の枕元に、 うずくまっているブリュンヒルデを見い出します。胸を刺し貫き、事切れて。

(ジークフリートに殉死するブリュンヒルデ、これはワーグナーも同じ ・・・)

ここで、映画「ジークフリート」は終わります。 続編「クリームヒルトの復讐」は、復讐の鬼と化したクリームヒルトの物語となります。

ラング監督 無声映画「ニーベルンゲン」
後編「クリームヒルトの復讐」

  「ジークフリート」の続編「クリームヒルトの復讐」のはじまり、はじまりです。

クリームヒルトは兄グンター王に再三再四ハーゲンの処分を要求しますが、 グンター王はハーゲン侯との誓約を盾に、聞き入れません。

クリームヒルトは、夫の残した莫大な財宝をつかって、民衆の心を得ています。 ハーゲン侯は、そのことに危険を感じ、姪の財力を奪うべく、 財宝を盗み出して、ライン河深く、沈めます。 (ラインの黄金というわけですね・・・)

その頃、東方からフン族の王、アッティラの使い リュディガー侯(フン族ではなく、チュートン族=ドイツ人の武将です)が訪れ、 クリームヒルトに対する大王の求婚を伝えます。

兄に失望し、今また頼みの財宝を失ったクリームヒルトは、 リュディガー侯に彼女の命令には何であれ従うという誓いを立てさせた上で、 アッティラ王の申し出を受けます。

アッティラの妃となるべく東方へ旅立つ日、クリームヒルトは、 ジークフリートの討たれた泉を、白雪を踏みしめながら訪れ、 ジークフリートの血を吸った土を携えます。

再婚の目的は、復讐です。アッティラ大王と、彼に従属するチュートン族の諸侯の援助 に対する期待を胸に、クリームヒルトはフン族の地に向かいます。

フン族の国は、春たけなわ。フン族の人々は、クリームヒルト女王を歓迎します。 フン族は、騎馬民族らしく、馬にまたがって駆け回り、身軽に飛び回っています。

クリームヒルトとの初対面で、その冷たく輝く美しさを目の当たりにして、 アッティラ王は、呆然と立ち尽くします。

泥んこの地面に、自分のマントを脱いで敷きます。 そして、彼女の厳しい要求に従い、 クリームヒルトに刃向かう者には百回の死を与えると、誓います。

アッティラ大王は、美しいクリームヒルトを深く愛しますが、彼女の愛を得ることは できません。 それでも、二人の間には、玉のような王子が生まれます。

しかし、クリームヒルトには、自分の生んだ最愛の赤ん坊でさえ、復讐の継承者としか見えないのでした。世継ぎの誕生に大喜びのアッティラ王は、物語の定石通りお馴染みの

「望みのものは、何でも与えるぞ」発言。

クリームヒルトとしては、ずばり「ハーゲンの首を!」と言いたいところでしょうが、 そこは、サロメじゃないので、「兄弟たちを招待してほしい」と言います。 ハーゲン侯も間違いなく一緒に来ると確信していたみたい。

クリームヒルトの望みを入れて、アッティラ王は、彼女の一族をフン族の国に招待します。 彼女は、復讐の機会がついに来たと、決意を新たにします。

(フン族の男たちは、まるで人間には見えない、怪異さです。小さな体で、馬に乗ったり、 駆け足で、すばしこく走り回り、木に登ります。アッティラ王も、妙ちきりんな 容貌で、ひどい描かれ方で、憤慨物です。けれど、彼はだれよりも信義に厚い武将です。 人はみかけによらないと言いたいようです。優しく、礼儀正しく、寛容であると同時に厳格、 勇猛果敢、かつ、思慮深く、愛情あふれる人物として、描かれています。異形の人格者というところかしら。--ちょっとおおげさ *。*)

ハーゲン侯をはじめ、グンター王、その兄弟たちが、アッティラ王の宮廷にはるばる 大軍を率いて、客としてやってきます。歓迎の宴が連日催されます。

クリームヒルトはアッティラ王に、初対面の誓いを盾に、ハーゲン侯の暗殺を要求します。 信義にあつい大王は客人に対してそのようなことはできないと拒絶します。

「私の育った砂漠では客人は神聖だ。ハーゲン侯がわが領土の平和を尊重する限り、 その存在を脅かされることはない。砂漠の掟には従わねばならぬ」

クリームヒルトは大王の弟ブローデルをそそのかし、騒動を起こさせ、復讐を果たそうと 計画をめぐらします。 金貨をばらまき、ブローデルの仲間を扇動し、ハーゲン侯の首に莫大な恩賞をかけます。

さすがに、この時点では、兄弟たちには危害を加える気持ちはなく、狙いはハーゲンひとりです。しかし、こういう陰謀はえてして行き過ぎるものです。

夏至を祝うフン族の盛大な祭の最中に、ブローデルによって、虐殺騒ぎが引き起こされます。 すっかりくつろいで、フン族と共に、宴を楽しむブルグントの兵士たちに ブローデルの手下たちが、突如襲いかかります。

王族の宴の場でも、クリームヒルトの命で、王子が連れてこられ、皆して可愛がっていますが、 クリームヒルトは「私の復讐の担い手です」と、ハーゲン侯を挑発します。

ハーゲンもハーゲンで、「この王子が、王となって君臨するところを見ることはないだろう」 と、嫌味を言い、アッティラ王を不愉快にさせます。

フン族の襲撃の知らせが王族の宴の場に届いた混乱の中、 ハーゲン侯は、将来の禍根を断つべく幼い王子を殺害します。

ことここにいたっては、アッティラ王もクリームヒルトの復讐に巻き込まれてしまいます。 さすがのアッティラ王も、愛する王子の理不尽な死に、心には悲しみと怒りが渦巻き、 復讐の炎が燃え上がります。

フン族とブルグント王国の面々との、血で血を洗う戦いの火ぶたが切って落とされます。

(この物語では、チュートン族、つまりドイツ民族の、勇猛果敢さと、忠誠心、すべてを 犠牲にしても守り抜く信義の厚さが、徹頭徹尾、しつこいほどに描かれます)

ブルグント王国の面々は、広間にたてこもり、勇ましく闘います。

リュディガー侯に対しても、クリームヒルトは、求婚の使者として来たときの 誓いを盾に、ハーゲンの暗殺を要求します。

誓いを重んじるリュディガー侯はハーゲンと決闘すべく、広間に入りますが、 ハーゲン侯をかばった娘婿でもあるグンター王の弟を殺害する羽目になってしまいます。 そして、彼自身は、吟遊詩人でもある騎士のヴォルカーに討たれてしまいます。

クリームヒルトもアッティラ王も、何度となく、ハーゲンを引き渡せば、 他の者は助けると伝えますが、ハーゲン侯を裏切ることをよしとしない ブルグント人の忠誠心によって、すべて拒絶されます。

闘いは延々と続き、クリームヒルトの弟たち、貴族たちが次々と命を落とす中、 ハーゲン侯は、死んだのはお前の弟たちや、リュディガー侯や、家来たちばかりだ。 わしは生きているぞと姪をあざわらいます。

ついにクリームヒルトは、広間に火を放ちます。

アッティラ王は、共通の復讐相手を得て、ついに妻と心が通じたと喜びますが、 妻の冷酷な様子を目の当たりにして、恐れを感じます。

ハーゲン侯が命懸けで守ろうとしたものは、甥グンタ−の王位であり、王権でしたから、 燃えさかる火の海の中、さすがのハーゲン侯もついに、王の命を守ろうと、 自らクリームヒルトに降参しようとしますが、グンター王や、家来たちに阻止されます。

ヴォルカーの死の歌が、無気味に響きます。

アッティラに仕えるチュートン族の武将のひとりが、問いかけます。

「女王、あなたには心がないのですか」
「ありません。心はジークフリートと一緒に死にました」

燃え落ちる大広間。やむ歌声。

ハーゲンの死体を要求するクリームヒルト。

チュートン族の武将のひとりが広間にハ−ゲン侯の遺体を求めて入ります。 なんと生きている、グンター王とハーゲン侯。

炎と煙に追い立てられて、ボロボロの哀れな二人。 ジークフリートの宝のありかを、問いただすクリームヒルト。 王が生きている限り、答えないと昂然と言い放つハーゲン侯。 ならば、兄を殺せと命令するクリームヒルト。従容として死につくグンター王。

私は自分のしたことを後悔していない。 さあ、殺すがいいと、冷然として姪を嘲笑するハーゲン侯。

クリームヒルトは自ら夫の形見の剣を振るって復讐を遂げますが、その瞬間、 そのあまりの無慈悲さ、冷酷さに、アッティラ王に仕えるチュートン族の武将の怒りに燃えた剣が 彼女を刺し貫きます。

クリームヒルト、懐から、ジークフリートの血を吸った土を包んだ布の包みを取り出し、 包みを開くと、はるか故郷の森の泉のほとりから運んで来た聖なる土は、 ハ−ゲン侯の亡骸の上へ、はらはらと落ちていきます。

「さ、神聖な土よ、満足するまで、ハーゲンの血を、お飲み」と、 壮絶な復讐を遂げたクリームヒルトは、その場にくずおれ、息絶えます。

アッティラ王は報われなかった愛に思いを馳せ、悲嘆のうちに、命じます。 愛する妻の亡骸をジークフリートの墓に運べ、と。

そして、続けます。 「クリームヒルトは、生涯、ジークフリート以外のだれのものでもなかったのだ」

ここに、ジークフリートの英雄譚と死、 それに対するクリームヒルトの復讐の物語は、幕を閉じます。



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