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バーンスタイン・オン・ブロードウェイ 1985年 [PH]

このCD、デボラ・サッソンにペーター・ホフマンが協力するということで行われた抜粋録音(CBS/SONY 1985年録音 マイケル・ティルソン・トーマス指揮 ロスアンゼルス・フィルハーモニック)は、仕事帰りの通り道なので毎日のように立ち寄って、棚を眺めていたレコード屋さんで偶然見つけました。あの頃は、けっこう思いがけない珍品がひっそりと棚に並んでいたものです。いつごろからか、在庫管理が良くなったようで、つまらなくなりました。

デボラ・サッソン(アメリカ、ボストン1958.8.22- )は「ウェストサイドストーリー」のマリア役で、舞台出演をしています。デボラ・サッソンは声楽を専門的に学んだ歌手で、オペラにも出演していますが、平行してミュージカルやポピュラー活動も積極的にしています。

二人の出会いについては、ホフマンの伝記によれば、1981年、ハンブルク歌劇場に客演したとき、そこで、サッソンがマリア役の「ウェストサイドストーリー」の舞台を見たホフマンが一目惚れして、ラブレターを送ったという話でした。

最近、ネット上で1988年ごろのインタビューを読みました。それによると二人の出会いにはレナート・バーンスタイン本人が直接関わっていたようです。バーンスタインは自作の「ウェストサイドストーリー」のヒロイン、マリアについて『最高にすばらしいマリアに出会いたければ、サッソンがマリアの公演に行くべきだ』とホフマンに勧めたのだそうです。ホフマンが、サッソンがマリア役の「ウェストサイドストーリー」に行ったのは、バーンスタインの勧めに従った結果だったというわけです。ちょうどバーンスタイン指揮の「トリスタンとイゾルデ」の演奏会形式公演と録音、録画を一年がかりでやっていたころでした。要するに、サッソンは「ショウボート」でブロードウェイに初出演したとき、バーンスタインに出会い、その仲介でハンブルグ歌劇場の「ウェストサイドストーリー」に出演することになったということです。そして、これが彼女のドイツでのキャリア開始でした。

ホフマンとサッソンは1983年8月結婚式を挙げました。誕生日が同じ日なので、誕生日のお祝いも兼ねた結婚式だったそうです。1990年離婚。現在も現役歌手として活躍中で、P.ホフマンのためのチャリティーショーなどにも積極的に関わっているようです。デボラ・サッソンのホームページ:http://www.sasson.de/

この録音は現在は「The Essential Bernstein」というCDの中に含まれています。
(音声ファイルは期間限定)
2. West Side Story: Prologue
3. West Side Story: Something's Coming
4. West Side Story: Maria
5. West Side Story: Tonight (Balcony Scene)
6. West Side Story: Cool
7. West Side Story: One Hand, One Heart
8. I Feel Pretty
9. West Side Story: Somewhere
10. On The Town: Subway Ride
bernst_ess.jpg11. On The Town: Some Other Time
12. Mass: A Simple Song
13. Mass: Pax: Communion ('Secret Songs')

おなじみ女性評論家の論評:

ブロードウェイのキャバレー歌手としては、親しみやすさと演劇性に恵まれている。バーンスタインのウェスト・サイド・ストーリーから抜粋した音楽の録音に接するとき、Bernstein on Broadway(ブロードウェイのバーンスタイン 1985年)におけるホフマンとサッソンの演奏ほど、すばらしい録音は存在しないと言っても過言ではない。オリジナル・キャスト・アルバムと比べてさえそうだ。ホフマンは必要不可欠なジャズのリズムに対する完璧なセンス、欠点のないディクション、息をのむほど美しい最弱音と官能的な色合いを伴う優雅な抒情性を示している。そして、テノールの高音域を楽々と自由に操っている。

マリア(Maria)は、喜びにあふれた調子で歌われ、それが永遠に続くように感じられて、いつまでも耳に残って忘れられないほど、軽やかな高い最弱音で終わる。クール(Cool)は、挑発的で生意気な感じだ。サムウェア(Somewhere)には、本当の対話のような演劇的な強度と、その理想主義を納得させる輝きがある。ミサ(Mass)のシンプル・ソング(Simple Song)で、テノールもソプラノも、この聖歌に要求される純粋な音色を表現している。オペラとバーンスタインの劇作品は、類似性が強いとも言えるし、同時に微妙に異質であるとも言える。だから、この音楽の真価であるユニークさを表現するためには、ホフマンたちのような、こういう微妙さを自由に扱える熟練した歌手たちが必要だ。

  
Maria     Cool


ところで、作曲者のことなどもとより興味の外で、ミュージカル「ウェストサイドストーリー」を初めて見たのは映画でした。正直なところ、おもしろくなかった。印象的だったのはジョージ・チャキリスの長い脚ですが、どういう役だったのか・・記憶に残りませんでした。まただいぶあとでしたが、テレビをつけたら、偶然アニタが乱暴された後の場面をやっていました。でも、しばらくどの映画をやっているのか思い出せませんでした。

というわけで、このミュージカルを本当の意味で認識したのは、バーンスタイン自身が指揮しての録音風景のレーザーディスクでした。このミュージカルの作曲者がバーンスタインだということをはじめて認識したのもこの時だったような気がします。有名な曲は、いつのまにか耳になじんではいたのですけど・・ こちらに、このメイキングフィルムに関する以前の記事があります。
「ウェストサイドストーリー」はミュージカルですけど、バーンスタインは通常クラシック分野に入れられる音楽家です。自らが指揮しての全曲録音では、オペラのスター歌手に主要な役を歌わせています。私でも知っていたホセ・カレーラス(トニー)、キリ・テ・カナワ(マリア) あんまり知らなかったけど、すぐに有名なメゾソプラノと知ったタチアナ・トロヤノス(アニタ)はとても魅力的です。コテコテのオペラ歌手の歌うミュージカルには違和感を持つ人も少なくないようです。カレーラスは英語の発音でバーンスタインにずいぶんと厳しいことを言われていますが、発音はともかく、スムーズさに欠けるというかリズムやスピードには乗れないようです。バーンスタインがいじめている「マリア」のように遅い曲はちょっと大げさかなと思う程度ですが、「サムシング カミング」のような速い曲ではつっころびそうで落ち着きません。

その点、ペーター・ホフマンもそうですが、実際にスカラ座にも出演し、録音が発売されているヴィットリオ・グリゴーロのトニーは、いかにもオペラ歌手というところがなく、しかも自然で、リズム感もなかなかだと思います。ユーチューブにもありますが、 keyakiのメモ、メモ... でも聴けます。スカラ座の上演、テレビ放送、あるいは、DVD化されたらいいのに・・ 

ペーター・ホフマンは「ウェストサイドストーリー」を舞台でやったことはありません。ミュージカルで舞台出演したのは「オペラ座の怪人」だけ。『ロックのあとは、今度はミュージカルなどという低レベルに転落するのか!』と言われたとか。時代が変わったのか、国が違うからか、それとも、「ウェストサイドストーリー」はレナート・バーンスタイン作曲だからか、スカラ座での公演だからか、グリゴーロの出演は、目くじら立てられてないみたいですね^^+ ルネ・コロが言っているように『ポップス(ミュージカルも含むかミュージカルはこれ以下らしい・・??)からクラシックへ』は、少なくとも熱狂的クラシック愛好家にとっては芸術的上昇なのかもしれません。逆、クラシック→ポップスは芸術的堕落だそうです・・???

関連記事など:
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コメント 11

ななこ

このCD愛聴盤です。

でもウエストサイドストーリーというと私は映画が何と言っても最高です。
あの頃映画館は入れ替えなしだったのではないかと思いますが(今時死語でしょうか?)2回続けて見た記憶です。
ワイズ監督とジェロームロビンス振り付けのダンスとバーンスタインの音楽(勿論バーンスタインという作曲家についてはその頃全く認知せずです)これが凄い迫力でそれまでの私の音楽感を覆された思いでした。
トニーやマリアのバラード調の歌より圧倒的なビートの効いた曲に印象的な場面が多いです。
映画では勿論歌は吹き替えでしたし、特に主役達の歌がよかったということでもなかったですし。

その後オペラ歌手によるCDを聴くことになるわけですが、映画のダンスがどうしても忘れられずカレーラスは勿論ホフマンですらイメージをつくることができないままです。

それでもこのCDはホフマンのクラシック以外の曲として大好きです。

ジョージチャキリスのダンスに圧倒され好きになって、その後「ブーベの恋人」という映画をわざわざ見に行きましたがつまらなくて全く内容は忘れました。
その時同時上映だった「アルジャーノンに花束を」が思いがけず面白かったことは覚えています。

あのダンスをオペラ歌手がどう演じるのかということに興味があります。
ミュージカルの生の舞台は見たことがありません。

by ななこ (2008-07-03 12:16) 

euridice

ななこさん
>このCD愛聴盤です。
そうですか^^++

ウエストサイドストーリーを見たのは映画だけですが、
ダンスシーンがとても印象的で、主役二人の影が薄いと思います。
記憶がはっきりしませんが、
主役二人は全然かほとんど踊らないんじゃないでしょうか?

>「ブーベの恋人」
テレビで見ましたが、つまらなかったことだけ覚えてます。
by euridice (2008-07-04 08:32) 

サンフランシスコ人

「カレーラスは英語の発音でバーンスタインにずいぶんと厳しいことを言われていますが」

英語の歌は、優しくありません。

by サンフランシスコ人 (2008-07-14 06:59) 

euridice

サンフランシスコ人さん
>優しくありません
易しくない
=容易じゃない、
つまり、難しい・・ってことですね。
by euridice (2008-07-14 08:51) 

サンフランシスコ人

例えば、今日のニュースを歌う(?)と、

"The brother of conductor James Levine says the Boston Symphony Orchestra and Metropolitan Opera music director has had surgery in New York to remove a kidney."

シンフォニー、オーケストラとか母音が非常に少ないですね。歌うのが優しくありません。
by サンフランシスコ人 (2008-07-17 02:50) 

佐々木真樹

ようやくアマゾン(本家)で、Greatest Hits BERNSTEIN というCDを見つけて購入しました。2曲しか入ってませんでした。あうう。
お薦めのはUSEDで「LPレコード」があったのですが、「海外発送しません」だったのです。
まだまだ探索の旅は続きそうです。
by 佐々木真樹 (2009-01-14 18:20) 

euridice

佐々木真樹さん
The Essential Bernstein
目下日本アマゾンのマーケットプレイス↓に在庫ありのようです。

http://www.amazon.co.jp/The-Essential-Bernstein/dp/B00000K2VL/ref=sr_1_4?ie=UTF8&s=music&qid=1231925975&sr=8-4
by euridice (2009-01-14 22:49) 

ななこ

いつ聞いてもホフマンのトニーはセクシーですね。
おとなの男を感じさせてくれます。
それでいて躍動感あふれていて。
トリスタンからトニーまで、或いはオルフェオからプレスリーナンバーまで!
本当の意味でこれほどレパートリーの広い歌手はいないですね。
ユーチューブ拝見しました。
バラがずいぶん沢山、 euridice さんのお宅のベランダですか?
オオスカシバは私も当然そう思っていましたが、何気なく検索したらメドゥセージの花で吸蜜できるほどの長い口吻を持ってるのはホウジャクではないかと?
あまり自信ありませんが。
by ななこ (2009-09-11 18:08) 

ディオニソス

懐かしいです。僕の青春時代の思い出深いLPの一つです。
バーンスタインに憧れて、そして、自分にとって永遠のトリスタンでもあったホフマンの本当に渋い歌声。

サンフランシスコ人さんもおっしゃっていましたが、カレラスのトニーを聴いて、英語の歌って本当に難しいのだなと思いましたが、当時、ホフマンの実にドイツ語っぽい歌いまわしもまた、ちょっと不思議に感じたのをよく覚えています。

本場英語の人は、ホフマンの歌どのように聴くのでしょうかね??
by ディオニソス (2009-09-11 23:25) 

euridice

ななこさん
>バラ
数種類しかないのですけど、5、6月は一斉に咲いてにぎやかでした。

>オオスカシバ
色合いが違うのがいる・・と思っていました。ホウジャクという名前は初耳で知りませんでした。検索してみました。羽が透き通っていないのは、やはりオオスカシバとしては変ですね。口吻もオオスカシバは2cmほど、ホウジャクはすごく長いんですね。ですから、マリアにつけた写真のは、最初の1匹を除いて、全部ホウジャクでしょう。ノルマのアリアにつけた写真のもそうでしょう。アヴェマリアにつけた写真で、チェリーセージの蜜を吸っている緑色のはオオスカシバだと思います。それから、第2ブログのアベリアの蜜を吸っているのも羽が透けているし、オオスカシバでしょう。
http://sanpomichi.blog.so-net.ne.jp/2008-09-05-1

ついでに第2ブログの他の記事です。
http://sanpomichi.blog.so-net.ne.jp/2008-09-30-1
http://sanpomichi.blog.so-net.ne.jp/2008-09-01-2

ありがとうございます!

今年はオオスカシバもホウジャクもまだほとんど見かけません。たまに1匹で飛んでいるのを目にしただけです。
by euridice (2009-09-11 23:38) 

euridice

ディオニソスさん

>ホフマンの英語
どの言語も発音が明瞭で聞きとりやすいと感じます。

アメリカの投稿サイトなどでは、ドイツ語なまりがきついといった書き込みも目にしました。学生時代にドイツ人教授の凄い英語を耳にした者からすれば、へぇ〜どこが?という感じです。1980年代以降に出会ったドイツ人では、あの先生のような人は皆無で、時代が変わったと感じたものです。

でも、いわゆるアメリカンあるいはヤンキーっぽい発音ではないですね。ホフマンファンのアメリカ人ジャーナリストは評論(記事内で引用したものです)の中で「彼の歌の多くは全くなまりのない英語で歌われている」と書いています。


by euridice (2009-09-12 00:05) 

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