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ニーベルングの指環 [映画]

ニーベルングの指環もともとテレビ用につくられた映画だそうです。ワーグナーのオペラ「ニーベルングの指環」と同じ題名ですが、題材に共通性があるものの、ほとんど無関係。そして、フリッツ・ラング監督の無声映画「ニーベルンゲン」とも物語の細部はけっこう違います。

まず第一に、ジークフリートとブリュンヒルデの死で終わりで、「クリームヒルトの復讐」の部分はありません。と言っても、この映画ではハーゲンがグンターを殺し、ブリュンヒルデがジークフリートの仇を討ってハーゲンを殺してしまいます。

ジークフリートは、滅ぼされた王国の、戦争で両親を失い、記憶をなくした王子で、幼い彼を助けて育てる天才的鍛冶屋は陰険なミーメではなく、人格にもすぐれた善良な人物。良い人に育てられたのでけっこうまともに育っていますね・・ブリュンヒルデとはグンターの求婚のときに初対面ではなく、その前から運命によって出会い、永遠の愛を誓っているということになっているのは、媚薬による記憶喪失で二重結婚というワーグナーのオペラの設定に、より近い設定。第一に、指環が登場すること、また、大蛇(=ドラゴン)のファーフナーがニーベルングの宝を守っているのも、アルベリッヒとハーゲンを親子としているのも、ハーゲンがグンターを殺すのも、ワーグナー寄り。でも、ハーゲンがグンターとクリームヒルトの異母兄弟かどうかは不明。違うような印象。

ワーグナーのオペラ「ニーベルングの指環」の、そして、フリッツ・ラングの「ジークフリート〜ニーベルンゲン」の登場人物の存在感にはかないませんが、この映画も、これはこれとしておもしろいです。二部構成でほぼ同じ長さです。「クリームヒルトの復讐」がない代わりに、ジークフリートの国の敗戦、両親の死、善意の鍛冶屋に助けられ成長するという前段階の物語と、ブリュンヒルデとの出会い、両親の仇討ちをして記憶を取り戻すなどのエピソードが加わっているわけです。また、明らかにフリッツ・ラングの映画やロード・オブ・リングを意識したと思われる構図もあります。

また、この映画、古い神話世界からキリスト教世界へと時代が変わったのだという気分が感じられます。ラングの無声映画やワーグナーの楽劇にはないものだと思います。呪術や魔法の古い世界を恐れる気持ちを、グンター王の弟ギーゼルヘルの恋人が代表しています。ギーゼルヘルはラングの映画では存在するだけという役どころ、ワーグナーでは登場もしませんが、この映画では、二つの世界の間に立つ者と言えそうです。

フリッツ・ラングの「ニーベルンゲン」ですが、最近紀伊国屋書店からDVDが発売されました。日本語字幕付きですが、弁士の語りはないということで、ちょっと残念。ただ以前出ていた、レーザーディスクとビデオは短縮版だったが、今回のDVDはカット無しという情報もあります。

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コメント 2

yokochan

euridiceさん、遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします。
最近子供たちとDVD映画を楽しむようになりましたので、ワーグナー・オペラへの道のほんの序の口として楽しめそうな感じです。
ワーグナーの本作が、子供にはとうてい説明不能の不謹慎な内容満載なだけに、大人になるまでこれでいいかも、です・・・・。
by yokochan (2008-01-04 23:38) 

euridice

yokochanさん、こちらこそ、よろしくお願いします。

>子供には
そうですね。子ども向けということも考えてつくられたのではないかと思います。「ニーベルンゲンの歌」ではなくて、この映画でジークフリートに出会うのもいいかもしれません・・
by euridice (2008-01-05 07:27) 

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