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エウゲニー・オネーギン ザルツブルグ音楽祭2007年 [オペラ映像]

2008.9.25
クラシカジャパンで放送中です。ベルリオーズの「ベンヴェヌート・チェリーニ」と共に、初放送。日本語字幕付きで鑑賞できます。

チャイコフスキーのオペラ「エウゲニー・オネーギン」大好きというわけではないのですが、聴けば引き込まれてしまいます。なにしろ今年のザルツブルグですから、別にかまいませんけど、帝政ロシアが舞台の演出ではないです。そして、かなり刺激的に胸に迫ります。

とにかく、全ての登場人物が相当過激で退廃的ではありますが、なによりもオペラにつきもののキャラクターずれがないのがいいです。真っ黒サングラスで登場のやくざっぽいオネーギン、かっこいいですが、ちょっと薄気味悪い。嫌みな男オネーギンの面目躍如。ラリーナ夫人はいかれてます。性格円満な女主人ではない。こういう母親に育てられた娘たちが、ちょっと変なのも当然というところ。なんとなくしいたげられた人という感じの乳母は存在感抜群。レンスキーは何故か頬に傷があるけど、なかなかの好青年。こんなにすっきりしたレンスキーは珍しいかも。タチアナもオルガもごく普通の田舎娘という感じ。公爵夫人タチアナの変貌振りはちょっと弱いかも。グレーミン公爵はなんだか軽いすけべ親父のようです。
気が滅入る場面や訳のわからないところも多々。まさに現代の問題でもありますが非人間的扱いをされる人々、そしてする人の精神的荒廃。掘られた地面に横たわる乳母。水浸しの床。レンスキーの頬の傷。攻撃的な人々、暴力と乱交に至るパーティー、お決まりの薬物使用・・等々。でも、音楽と舞台が概してよく合って、引込まれます。私としては「エウゲニー・オネーギン」はそれほど気に入っている映像はないのですが、これはなかなか印象的でした。演出は、歌手いかんでよくも悪くもなる部分があると実感させられる映像のひとつでした。テレビ放送があれば、視聴、お勧めです。

チャイコフスキー:エウゲニー・オネーギン
ダニエル・バレンボイム指揮
アンドレア・ブレト演出
ザルツブルグ音楽祭2007年

オネーギン:ペーター・マッティ
タチアナ:アンナ・サムイル
レンスキー:ヨーゼフ・カイザー
オルガ:エカテリーナ・グバノヴァ
ラリーナ夫人:ルネ・モルロック
フィリッピエヴナ(乳母):エンマ・サルキッシアン
グレーミン公爵:フェルッチョ・フルラネット
トリケ:ライランド・デイヴィス


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コメント 8

ななこ

記事のアップありがとうございます!
ユーチューブが更に増えていていろいろ楽しんできました。
何故かビデオクリップが見られないのですが、euridiceさんの記事でおよその想像はつきます。
音声だけは通して聴いたのですが、やっぱり映像付で見ないとオペラの魅力は本当のところはわかりませんね。
かなり刺激的な演出でもそれに適う歌手が演ずればより印象的な舞台になるということは強く実感します。
タチアーナの手紙の場面のタイプライターには笑えましたが、時代を現代としても貴族社会は現存するのだからフィナーレのタチアーナを下着姿ではなく侯爵夫人らしい衣装にすれば田舎娘からいくらかは格好だけでも変身できたのではないかと思いますが。
音声だけですとグレーミン(フルラネット)のアリアだけがねちねちととても嫌らしくきこえました。(フルラネットの歌い方そのものではありますが)
記事を読ませていただいて納得です。
侯爵夫人としての変貌というよりグレーミンの富につられて高級娼婦に身を落としたとは・・・ひどい誤解でしょうか?
きちんと映像を見ないと変な想像ばかりふくらんでしまいます^^
by ななこ (2007-12-14 12:14) 

euridice

ビデオクリップ、やり直してみましたが、どうでしょうか。
by euridice (2007-12-14 19:35) 

ななこ

ビデオクリップ見せていただきました^^
想像以上で見なきゃよかった・・・の感もありですが。

でも音楽(歌手も含めて)と映像が合っていて違和感ありません。
それがまた怖いです。
オペラ演出におけるこの傾向はもはや歯止めが効かないという感じですね。

マッティに対する思いは一層深まりました。
テレビ放送が待たれます。
by ななこ (2007-12-14 22:13) 

蘭丸

紹介有難うございました。大変興味深い演出です。「オネーギン」は大好きなオペラなのでDVDが発売されれば買ってみてみます。
by 蘭丸 (2007-12-15 04:49) 

euridice

蘭丸さん
演奏が魅力的だから、音楽とお芝居の相乗効果があがっている感じです。
by euridice (2007-12-15 07:02) 

euridice

ななこさん、見えないビデオクリップを載せてごめんなさい。今度は見られたとのことほっとしました。やはりきちんと手順を踏まないといけませんね。自分のところでは見えてしまうのでつい・・手順を飛ばしたりしちゃいます・・

>見なきゃよかった・・・の感
特に変わっていると思ったところ中心に選びました。モスクワのパーティー場面の冒頭、ユーチューブにもあるかもしれませんが、付け加えました。(各頁、2ファイルに統一です・・)

>オペラ演出
何らかの新鮮さがないと続けられないのでしょうね。東洋の古典芸能との違いがおもしろいです。異文化ですね・・

>変貌
タチアナに目を留めて驚くオネーギンの表情にも現れていますが、伝統的な上昇による変貌という印象とはちょっと違う感じを受けますね。正式な夫婦だって、関係は様々ですから・・ なので、タチアナの変化が微妙なのは欠点ではない、つまり演出意図に合っているいんじゃないかとも思います。
by euridice (2007-12-15 07:36) 

ななこ

お手間を取らせてしまったようですみませんでした。
おかげさまで興味深い場面を見せていただくことが出来ました。

>東洋の古典芸能との違い
そうですね。
型が決まってるといっても歌舞伎などはいい役者さんですと見る度に新しい感動があると思うのですけれどね・・・
by ななこ (2007-12-16 21:41) 

euridice

とんでもないです。言ってくださると助かります。

>いい役者さん
これが・・重要ですよね〜〜
by euridice (2007-12-17 07:23) 

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