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メトロポリタン・オペラ 始皇帝 [オペラ映像]

これこそ知らないお話だから、とにかく最後まで見ました。多少大げさですが、それこそ疲労困憊・・前半1幕はけっこうおもしろかったんですけど、2幕はいけませんでした。もう目新しいことも、耳新しいこともなくて、いらいら、お尻むずむずしながら物語の結末だけを追って、耐え難きを耐え・・状態で、がんばりました。

ネット上を捜せば物語もあると思いますが・・簡単にまとめるとこんなところでしょうか。かなり複雑なので、誤解があるかもしれませんが、あしからず。

中国古代史でおなじみの人物、秦の始皇帝が、たぶん正式に即位するまでのこと。なんでも幼少時、某国に人質として捕われていたんだそうです。その時、乳兄弟だった人物(ジュンリ)が長じて音楽家になっている。始皇帝はこの人物を捜し求めるが故に、彼の住む国、嚥をまずは攻撃したようです。この男を「影」と呼んで捜し求める目的は、懐かしさもあるようですが、彼に中国讃歌を作曲させたいということ。始皇帝は落馬が原因で歩けなくなった娘を溺愛しています。これが1幕ではなんだかサロメみたいな雰囲気。皇帝は戦に赴く将軍に「影」を捕まえてきたら、娘を与えると約束します。

将軍は「影」すなわちジュンリを捕虜にして凱旋。嚥は破壊され略奪され、その他大勢と一緒にジュンリの母親も殺されたことが語られます。皇帝はジュンリに作曲させるために、娘に彼を懐柔させます。皇帝はジュンリに讃歌を作曲させたら、彼を与えると約束します。行き当たりばったりの約束をするのは権力者の常ってことみたい。王女は音楽家を誘惑、二人は、少なくとも王女のほうはどうも本気で恋に落ちたらしい。肉体関係を結んだとたん、なんと王女の足が治って歩けるようになります。皇帝は奇跡を喜びますが、その原因を知るや、将軍との約束を思って怒り、悩むことになります。ここまでが1幕。

2幕は、万里の長城建設にこき使われる民衆の苦しみ。娘と将軍の結婚を遂行しようとする皇帝の策略。とりあえず将軍と王女を結婚させ、将軍の戦死を待て。その間に讃歌を作曲すれば、ジュンリを高位に上らせ、王女と結婚させるという都合の良い話。政略結婚絶対拒否の王女。皇帝の政略に乗ったふりをする音楽家。音楽家の裏切りを知って自害する王女。将軍を毒殺する音楽家。全てを呪い、舌を引き抜く音楽家。苦しむ彼を刺し殺し、讃歌を演奏させ、それが自分の意図したものでなく、苦しむ民衆の歌であることに愕然とする皇帝・・という感じで幕。特に2幕後半は、皇帝即位式の場で、隠された真実が王女や将軍の亡霊、そして音楽家の説明的台詞的歌唱によって語られるのですが、その長舌がメリハリ欠如で退屈極まりない繰り返し。もういいから、次、次!という気分。

物語はてんこもりの詰め込みで、その大半を語りに頼るのも疲れる一因でしょう。例えば、皇帝の暴君ぶりは、中国統一=他国攻略、焚書坑儒、万里の長城建設のための労役などが登場しますが、舞台で一応演じられるのは長城建設のみ。

普通のオーケストラにはない楽器をいろいろと使っているし、リズム、旋律も耳新しいし、中国風の動きや曲芸的踊りなど、そういうものが耳目を引きつけるので、けっこうおもしろいですが、それだけで最後まで退屈しないためには長過ぎます。登場人物は、みなそれぞれ役を体現していて、オペラ的うそっぽさはほとんどないのですが、やはりあの長さは持たないという感じ。

登場人物の中では、王女に注目。とても存在感がありました。やはりテレビで見た、プレヴァン作曲の現代オペラ、「欲望という名の電車」(サンフランシスコ・オペラ、アンドレ・プレヴィン指揮1998年)で、ヒロインの妹役がとても魅力的だった歌手でした。

タン・ドゥン作曲 始皇帝
タン・ドゥン指揮
チャン・イーモウ演出
メトロポリタン歌劇場2007年

始皇帝:プラシド・ドミンゴ
王女:エリザベス・フトラル
王妃:スザンナ・メンツァー
音楽家ジュンリ:ポール・グローヴス
呪術師:ミシェル・デ・ヤング
将軍:ハオ・ジャン・タン

幕間のメイキング、インタビューを入れて3時間。1幕の後、幕間のメイキングやインタビューはとても興味深く、おもしろかったです。ニューヨーク・シティ・オペラのいろいろな映像でおなじみだったビバリー・シルズが案内役とインタビュアーとして出演。ドミンゴのインタビューは楽しかったです。この記事を書きながら、keyakiさんのブログをのぞいたら、彼女の訃報が載っていて、びっくりしました。

もちろん舞台は大掛かり、衣装は豪華絢爛、化粧、かつらもばっちりで、全員役の人物になりきっています。歌唱は狂言回し役の陰陽師が中国語で歌っている(らしい)以外は英語です。オーケストラ団員が掛け声も担当しているのがおもしろいです。繰り返し鑑賞しようとは思いませんが、見てみないことには話になりません。後半までは持たなかったけれど、それなりにおもしろかったので、見てよかったです。何十年、何百年と演奏し続けられているオペラは、やはり凄いのだとつくづく思います。


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コメント 2

蘭丸

edcさんは自分よりもはるかに現代音楽の許容範囲が大きいと感じました。それでも最後まで観るのは大変だったみたいですね。現代音楽が苦手な自分はストーリーと舞台の豪華絢爛さで、どうにか最後まで観ました。一応DVDに録画はしましたが多分自分から観ることはないと思います。

又失敗するかもしれませんがTBさせて頂きました。
by 蘭丸 (2007-07-04 07:07) 

euridice

蘭丸さん
>許容範囲が大きい
そんなことはないと思います・・ たいていリズムはおもしろいと思います。だからか、興味が長くは続きません。繰り返しや音だけの鑑賞は無理ですし・・
by euridice (2007-07-04 07:35) 

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