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新国立劇場「ばらの騎士」 [劇場通い]

今シーズン最後の新演出演目。「フィガロの結婚」のケルビーノ以来注目のメゾソプラノ、エレナ・ツィトコーワがオクタヴィアンで出演ということでシーズンチケット発売時から、楽しみでした。それに開幕以来、非常に評判がよいので大いに期待で、劇場へ。

前奏曲が始まった瞬間からしばらくは、直前に久しぶりにカルロス・クライバー指揮の映像を見てしまったのはちょっと失敗だったかも・・とちらっと思ってしまいましたが、そういう気持ちも次第に消えて、1幕のフィナーレには、ほろりとし、元帥夫人の立ち姿の美しさに見とれ、彼女の内面に思いを馳せました。最後のシーンの構図は、ほんとうに、とても素敵でした。学生時代に寮の廊下でしたが、窓辺に立って、同じようにタバコをふかしていたもの凄い美人のインド人女性を思い出しました。ああいうふうに美しく吸えるならどうぞ・・・なんて思ったものです。

それに1幕前半は、トリスタンとイゾルデの2幕を彷彿とさせる演奏・・・とても引きつけられました。色っぽいというか艶かしい演奏でした。

1幕の喧噪場面もおもしろかった。テノール歌手、存在感ありました。自己顕示欲過剰のテノール歌手らしさ満点ですばらしかったです。そして、オックス男爵の厚顔無恥振りと傍若無人にいらついた元帥夫人の髪型へのクレーム場面、印象的でした。ああいう雑然、騒然とした舞台の中で、ちゃんと注目するべきところに注目させるのって凄いことだと思います。映像なら、そこを映してくれるから、嫌でも注目するわけですけど。

元帥夫人、その状況と気持ちの変化が声にも視覚的にも明確に表現されてすばらしいです。若い恋人と遊ぶちょっと軽薄な彼女、時の流れを見てうろたえ、対処すべきだと覚悟する彼女、そして3幕の毅然として威厳に満ちた彼女・・・等々、その微妙な変化がちゃんと伝わってくる・・

期待のオクタヴィアン、やっぱりよかった。女っぽさはほぼゼロ。17歳の男の子でした。対する15歳のはずのゾフィーは躍動感あふれる若い娘という感じが薄いのが、正直なところ、ちょっとがっかりでした。でも、この新国の写真のカップルはとても美しいように、体格のバランス、声のバランスはとても良いです。ですから、この写真のように見るように頑張れば大丈夫でした^^! 新国ホームページの動画を見てみましたが、ゾフィーは写真や映像のほうが若く見えますね。もっと遠い席だともっとよかったかも・・・オクタヴィアンは実際に見たほうがが素敵。

4時間強という長いお芝居でしたが、3幕とも、あっという間にフィナーレを迎えました。長さを感じさせないって、やはりすばらしい上演だったということです。疲れも眠気もなくとても気持ちよく高揚した気分で劇場を後にしました。

リヒャルト・シュトラウス:ばらの騎士
新国立劇場2007年6月
ペーター・シュナイダー指揮
ジョナサン・ミラー演出

元帥夫人:カミッラ・ニールント テレビ放送「フィデリオ」で見たことがあります。
オクタヴィアン:エレナ・ツィトコーワ 新国「こうもり」のオルロフスキー、かっこよかったです。対して、女性の役は最初はちょっと違和感ありでした・・ 新国「コジ・ファン・トゥッテ」
ゾフィー:オフェリア・サラ(テレビ放送のあったスカラ座の仮面舞踏会に出ていたそうです。記事、書いていたのもすっかり忘れてました・・)
オックス男爵:ペーター・ローゼ(イギリス人らしいのに、なぜか名前がドイツ読み。ドイツ物だからそうしてくれとの要望でもあったのかしら?)
テノール歌手:水口 聡
ファーニナル:ゲオルグ・ティッヒ


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コメント 17

Cecilia

最近偶然R・シュトラウスの記事を書いていました。
新国の「ばらの騎士」よかったみたいですね。
うらやましいです。
お住まいは東京なのですか?
私が行こうと思ったら一泊はしないとだめですね~。
一度自分で運転して行ってみたいと思っています。(高速バスだと5時間ほどで新宿に着きますが・・・)
by Cecilia (2007-06-16 10:48) 

euridice

Ceciliaさん
読ませていただいてました。キリ・テ・カナワが元帥夫人の映像も見たことがあります。今回は初めて劇場での「ばらの騎士」でしたが、とても楽しめました。
一応都内への通勤圏内ですから、おかげさまで気楽に行けます。新宿に新国ができたのはけっこう運がよかったです。
>高速バスだと5時間
これは日帰りはかなりきつそうですね・・・
by euridice (2007-06-16 17:15) 

Orfeo

edcさん、こんにちは。
ジョナサン・ミラーの『ばらの騎士』、なかなかよさげですね。
彼の演出はセンシティヴで美観が保たれるので、私も大好きです。

東京の人が羨ましい・・・。
ウチからだと、高速バスで一晩・・・(爆)。
by Orfeo (2007-06-16 18:36) 

Sardanapalus

新国にしては珍しいタイプの、センスが良い上に現実味のある舞台美術と衣装ですね。さすがミラー演出。これならば見に行きたいな~と思っても、私の地元からも高速夜行バスかJRの「ムーンライト長良」で帰るか、一泊するしかないんですよね。気楽に日帰りできればいいのに~。
by Sardanapalus (2007-06-16 20:57) 

keyaki

こちらからもTBさせていただきました。

>女っぽさはほぼゼロ。
そう、そう、ぜんぜん太らない体質みたいで、ちょっとやせすぎのような気もしますが、少年に見えますよね。
今後、ブランゲーネとかフリッカとかも歌う予定のようですね。
by keyaki (2007-06-16 22:50) 

オデュッセウス

よかったですよねぇ~。オデュッセウスは基本的に歌手への評価が甘いので、ちょっと心配していたんです。安心しました。
それにしても、新国に気軽に行くことができる我々は幸せなんですね。北関東の田舎在住のオデュッセウスですが、新幹線のおかげで楽勝で日帰り可能ですからね。
ツィトコーワのブランゲーネやフリッカですか!?よさそうですね。
by オデュッセウス (2007-06-16 23:09) 

euridice

Cecilia さん、Orfeo さん、Sardanaさん
にも見てもらいたいものです・・

何度でも言っちゃいますけど、新国、劇場に足を運ぶのが難しい人のほうが多いんですから、テレビ放送、定期的にやるべきです。なんでできないのかしら????

keyakiさん、TBありがとうございます。
>ブランゲーネとかフリッカとかも歌う予定
クンドリー、似合うかも・・
by euridice (2007-06-16 23:11) 

euridice

オデュッセウスさんのコメントとしっかりかぶってしまいました。

おかげさまで、また当たり公演でした^^!
なんといっても劇場効果がありますからね〜〜

>我々は幸せなんですね。
そうです。感謝しなくては、です。
>新幹線のおかげで
通勤、通学してる人も少なくないみたいですねぇ・・
by euridice (2007-06-16 23:16) 

あるべりっひ

こんばんは。
大変素晴らしい、舞台のようですね。
半年前まで、初台、渋谷、池袋、六本木、上野、都心のいろんなホールへ簡単に出かけられる場所に住んでいました。小遣いの許される範囲でコンサートへ通いました。今は、コンサートの日帰り無理です。(幸い都心に従兄弟がすんでおり、気軽に泊まれるのですが。)
行きたくても、空席がないようです。
なにか、とっても悔しいです。
by あるべりっひ (2007-06-17 01:28) 

euridice

あるべりっひさん
お引っ越しなさったんですねぇ・・それは残念でした。

>空席がないようです。
多少はありそうですけど、売れてる席なんでしょうか。
そういえば、なんだか一段と人が多いという印象でした。それに
若い女性が目立ったような・・感じ。
by euridice (2007-06-17 06:41) 

ななこ

詳しいご報告ありがとうございました。
動画から少しはイメージをふくらませていましたが、読ませていただいてもう少し具体性を帯びてきたようです。
このオペラはどの舞台も印象に残る場面があって、それが自分の感覚に合うかどうかで好き嫌いが分かれるように思います。
マルシャリンが紫煙をくゆらすのですか?
思いがけない演出ですね。
鏡に写る自分を見つめため息と共にそれを伏せて終わるのが多いですね。
ですから、そういう演出に新鮮さを覚えます。(その構図が素晴らしかったのなら尚更のこと!)
やっぱりこの作品ではマルシャリンにその舞台の正否がゆだねられてると私は思います。

ノヴォラツスキー体制の最後の新演出舞台という記念すべき舞台、是非TV放送して欲しいものですが・・・
それにしても、完売というのに実際は空席を目にするのはなんとも勿体ないというか、特に一番高い席にそれが目立つ場合は腹が立ちます。
残る20日の公演はマチネですし、当然完売でしょうね。
何もかも放り投げて観に行きたい気分です。
新国はオペラ上演ホールとしては我が家からは一番近いのです^^
by ななこ (2007-06-17 12:10) 

おさかな♪

>雑然、騒然とした舞台の中で、ちゃんと注目するべきところに注目させるのって凄い
なるほど、そうですね!
当たり公演、うらやましいです^^。
by おさかな♪ (2007-06-17 22:05) 

euridice

ななこさん
>鏡に写る自分を見つめため息と共にそれを伏せて終わる
オットー・シェンクのはそうでしたね。見た映像は、鏡台の前に座っての幕だったので、ほんとに意外なフィナーレでした。窓をつたう雨、そして部屋の壁にもその影。お天気雨かしら・・という明るさの中に立って紫煙をくゆらす元帥夫人、部屋の外の控えの間の椅子には従僕がひとり居眠り・・

>マルシャリンにその舞台の正否がゆだねられてる
ほんとにそうですね。

>是非TV放送
するべきですよね!

>我が家からは一番近い
うちも遠いけど、他の場所よりは近いし、いわゆるアクセスが良いのがうれしいです。

>当然完売
どうでしょう。S席なら数枚はあるかもしれません.....??
by euridice (2007-06-18 07:10) 

euridice

おさかな♪さん
遠くから^^?!、ナイス&コメント、うれしいです。
by euridice (2007-06-18 07:12) 

YASU47

edcさん、ご無沙汰しています。
新国の「ばらの騎士」、17日に観に行きました。評判通りの素晴らしい舞台でしたね。TBさせていただきます。
by YASU47 (2007-06-20 22:27) 

yokochan

昨日の千秋楽公演に行ってまいりました。
シュトラウスが好きなもので、最初からうるうるとしっぱなしでした。ミラー演出はファルスタッフとともに、陰影と遠近の見事な舞台作りで、洒落たものでしたね。
私の1幕の最後のマルシャリンの姿に惚れぼれとしてしまいました。歌手もみな、素適でしたし、ワーグナー好きにとって待望のシュナイダーもツボを押えたベテランの味でありました。
ノヴォラツキー政権の総決算は大正解でありました!
TBさせていただきました。
by yokochan (2007-06-22 00:01) 

ヴァラリン

私も最終日に行って来ました。
「よい上演だった」という感想が殆どですね。
最終日だったからでしょうか、ノヴォ氏がカーテンコールに出ていらっしゃいました。お姿を拝見したのは、初めてでした。
by ヴァラリン (2007-06-22 22:03) 

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