モーツァルト「皇帝ティートの慈悲」 [オペラ映像]
モーツァルト最後のオペラ・セリア。レオポルド2世のボヘミア王としての戴冠式1791年9月6日の祝典用オペラとして作曲され、プラハでの戴冠式後に上演されたそうですが、王妃はつまらないと露骨に発言するやらで、失敗に終わったとか。
同じ映像ではありませんが、あらすじその他、おなじみOrfeoさんのオペラ・レビューを参考にしてください。チューリヒ歌劇場 グラインドボーン音楽祭
もうずいぶん昔に観たのが、ポネル演出の映画版ですが、王妃さまと同じ。映像は美しいけど、退屈で、なんだかよくわからないまま。「イドメネオ」のような好きなアリアもひとつもないし。
モーツァルト:皇帝ティートの慈悲
ジェイムズ・レヴァイン指揮、ウイーン・フィル
ジャン・ピエール・ポネル演出
1980年 映画版
皇帝ティート:エリック・タピー
セスト:タチアナ・トロヤノス
ヴィッテリア:キャロル・ネブレット
アンニオ:アン・ハウエルズ
セルヴィリア:キャサリン・マルフィターノ
プブリオ:クルト・リドル
キャサリン・マルフィターノが出演していることを後で知りました。改めて見ても、全然彼女に見えないです。後のトスカやサロメの存在感ゼロというところで、全然印象に残らなかったのも納得。それはともかく、主要人物のうち男性役二人を含む四人が女声ですが、みなさん美しいです。
モーツァルト:皇帝ティートの慈悲
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場合唱団
マルティン・クシェイ演出
ザルツブルク音楽祭2003年
皇帝ティート:ミヒャエル・シャーデ
セスト:ヴェッセリーナ・カサロヴァ
ヴィッテリア:ドロテア・レッシュマン
アンニオ:エリナ・ガランチャ
セルヴィリア:バーバラ・ボニー
プブリオ:ルカ・ピサローニ
オペラ慣れしたということもあると思いますが、なかなかおもしろいです。要するにここはどこ? あなたたちはだれ?状態の不条理劇という感じなのですが、少なくとも退屈はしません。
なによりも、カサロヴァのセスト、違和感がないです。眺めていて飽きません。女に振り回される優柔不断な男に、ちゃんと見えます。他の登場人物も強烈な存在感があります。
フランス映画「コーラス」の更正不能の問題少年みたいに見える皇帝は最後までその存在がいったい何なのか分かりませんでしたけど、醜悪に近い存在に見えます。閉鎖空間の精神不安定な絶対者ではあるらしいけど、ひょっとして「牢名主」かしら。
それにしても、なんだか気色悪い、もやもや感はぬぐえません。台詞、歌詞と舞台上の出来事や動作、行動が関連なさすぎとしか思えない部分は多いし、この音楽になんであの劇をしなければならないのだろうと思ってしまいます。フィナーレ、食卓に少年を寝かせるのはいったい何..... 観客も演じる歌手も精神分裂になり兼ねないんじゃないか...という感じです。
>フランス映画「コーラス」の更正不能の問題少年みたいに見える皇帝
ほんとだ、そっくりじゃないの。
精神科医が、凶暴性は直らないと太鼓判を押したのに、校長が研究に協力しましょうなんちゃって、引き受けちゃったのよね。
by keyaki (2006-11-01 14:19)
なんかこのポンネル=レヴァイン盤は、私もまるでつまんないと思いましたね。これを見て一気にポンネル熱が冷めちゃったかも。
多分演出家のせいじゃなくて歌手陣のせいかもしれないんですが。
マルフィターノはずっとリリコ・レッジェーロの役を歌ってましたね。舞台ではスザンナとか聞いてたので、ある日突然トスカを歌ってたのにはすっかり驚いちゃいました。しかもサロメまで歌ってるって言うし。
by TARO (2006-11-02 02:04)
keyaki さん、ほんと瓜二つと言ってもいいほどでしょ? ある意味で精神を病んでいる状況の典型表現なのかも..... 皇帝のほうは、凶暴性とは正反対の精神状況ですけど。
by euridice (2006-11-02 08:37)
TAROさん
やっぱり退屈なんですね..... このポネル&レヴァインの映像。まあ演出、演奏、半々のマイナス相乗効果なんでしょう。
>マルフィターノ
私は「サロメ」で認識したので、こっちが普通だし印象的^^;
その前だったと思いますが、お話の同じ場所、同じ時刻にこだわった映画版トスカをはじめて見たときは、その表情の凄さにびっくり仰天しました。なんでも意図的に「醜く撮れ」ってことだったとか。音だけ聞くと、可愛い声じゃないのぉって思ったものです。
リリコ・レッジェーロ役の彼女って、魅力的でした?
by euridice (2006-11-02 08:45)
>リリコ・レッジェーロ役の彼女って、魅力的でした?
いや、それほどでも。それに当時はマティス、ポップ、ドナートらがまだ現役でこの手の役を歌っていて、バトル、ヘンドリックスらが登場して脚光を浴びていた頃だったので、影薄かったですね。
ちなみに私がスザンナを聞いたときの伯爵夫人はヴァラディで、こちらはもう演技も含めて素晴らしい出来でした。
by TARO (2006-11-02 13:58)
TAROさん、どうもありがとうございます。
>影薄かったですね。
強烈な役のほうが似合ったわけね^^;
by euridice (2006-11-02 22:14)
「皇帝ティートの慈悲」をサンフランシスコ歌劇場で(生で)見たことがあります。
by サンフランシスコ人 (2008-05-18 05:54)
サンフランシスコ人さん
劇場でテレビ画面視聴ってこともあるんですよね。
遅刻しちゃったときとか。劇場の外でスクリーンで
見せたりするところもあるという話ですね。
by euridice (2008-05-18 08:00)