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役についての歌手のコメント集[3] [PH]

Beethoven: Fidelioフロレスタン:ベートーベン「フィデリオ」

「レコードの仕事の開始にあたって、歌手はその時々の役に対する考えを言葉で表現すように求められる。この役は頻繁に様々な演出で歌ったが、私の考えは変わらなかった。

 私の考えでは、フロレスタンは受動的な英雄だ。彼は行動のあらゆる可能性と、その結果、生きるに値する生活の全てを奪われている。彼には、考える自由だけが残されている。これによって、慰めを見い出せると信じている。飢えと渇きに加えて肉体の衰弱が彼に激しい妄想をもたらす。彼はレオノーレが見えたと思い、失神することによって解放される。

 かろうじて生きているだけで、『影のように漂う』男に対して、休息をとった健康な歌手に全力を出し切ることを要求する、あのようなアリアを作曲するベートーベンは本当に耳が聞こえなかったに違いないと、歌手として、思うことがある。もしくは、あのアリアの終わりに、テノールが本当に疲れ果ててへとへとになれば、つまりそれが、たいていの場合、自分の意図を達成することになると、ベートーベンは思ったのかもしれない。

 生き延びようとする強い意志は、歌手としてにしろ、役者としてにしろ、少なくともどのフロレスタンにとっても最大の美徳であるとするべきだ。

 彼をして2年にわたる耐えがたい牢獄生活を生き延びさせたものは何だったのだろう。それは身の潔白を明らかにすることに対する希望であり、それはまた、政治的信念の故に牢獄にある者と犯罪者の違いを発見することでもあると思う。このテーマは疲れるだろうし、私たちの時代にこのオペラのような夫婦愛は感動をよばないかもしれないが、政治犯が存在し、『邪悪な臣下を急ぎ排除しようとする』国家がある限り、このオペラがある限り、フロレスタンという役は、今日的であるし、このオペラは生き残ると思う」(ペーター・ホフマン)
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Wagner: Der Fliegende Hollanderエリック:ワーグナー「さまよえるオランダ人」

カラヤンの希望で、1984年に発売された「さまよえるオランダ人」の録音でエリックまでも歌った。

エリックという人物には全く共感できなかったので、この役はいつも断っていた。舞台に飛び出して、『ゼンダ、言ってくれ、私はいったいどうしたらよいのだ』と叫ぶ男とはいったい何だろうか。理解できない。

そこで、私は声によってだが、エリックを、捨てられた恋人ではなく、ゼンタのことを心配する友だちとして表現しようと試みた。エリックはゼンタを愛していて、間違いから守りたいのだ。しかし、やはり舞台ではこの役は歌いたいとは思わない。」(ペーター・ホフマン)
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