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ある歌手とはだれか [PH]

映画、その他で、夢中になった登場人物は多いのですが、それを演じる人の熱心なファンになったことは、まずなかったのに、オペラを聴くようになって、ペーター・ホフマンという歌手(テノール)のファンになってしまいました。オペラ歌手やオペラに対してなんとなく持っていた偏見をくつがえした歌手でした。ある方の表現を借りれば「私にとって最初の、そしておそらく最後のアイドル歌手」というところです。ところが、間もなく、その毀誉褒貶の激しさ、まだ40歳代の1990年代にはすでにオペラに出演していないらしいことなどがわかり、何か不思議な感じがしました。

例えば、講談社新書「ワーグナー」p.216には『...ひどく波があって、悪いときには音程も何もなくなるほどだが、良いときには充分魅力がある』、同「はじめてのオペラ」p.46には、『...人気をいいことにしてロックを歌い、ツアーで飛び回るテノールも出て来る」、音楽之友社「レコード藝術」のCD評には『その凋落ぶりは...』『声のフォームを崩し..』、同「音楽の友」では1990年ホフマンに代わってバイロイト音楽祭にワーグナー・テノールとして登場した歌手について、昨年までのホフマンに比べれば良いといった批評、「マエストロに乾杯」では『突如姿を消したテノール」といった具合です。大概の音楽関連本によれば出来不出来の差が激しい歌手」という感じでした。後に導入したインターネットの海外のサイトなどでも、1990年バイロイトを去ったことを露骨に喜ぶものや、歌手としての全存在を否定するものなど相当に酷い投稿も沢山目にしました。何か客観性や冷静さを欠いているという印象を持ちましたが、それは私一人というわけではなかったようで、"why does he arouse such strong feelings?"という質問は印象的でした。もちろん、非常に肯定的な高い評価も沢山ありました。評価の違い、好悪が極端なのです。わずかな映像と録音で惚れ込んだ私としては、そういう面のある歌手なのだろうと思うしかありませんでした。

21世紀に入ってから、1983年刊の伝記が手に入り、2003年には新たな伝記が出版され、アメリカの熱烈なファンを自認する女性ジャーナリストの論文も手に入り、この歌手の半生を知ることが出来ました。そこで、主として、この三冊の出版物に基づいて、この歌手の半生と意見をまとめていきたいと思います。

参考図書:

*Marieluise Mueller PETER HOFMANN SINGEN IST WIE FLIEGEN Keil Verlag 1983

*Carla Maria Verdino-Suellwold
WE NEED A HERO! HELDENTENORS FROM WAGNER'S TO THE PRESENT...A Critical History Weiala Press 1989

*Marita Tuerschmann PETER HOFMANN SINGEN AUS LEIDENSCHAFT Henschel 2003.3

堀内修 「はじめてのオペラ」 講談社現代新書 1989年
堀内修 「ワーグナー」    講談社現代新書 1990年
石戸谷結子 「マエストロに乾杯」 共同通信社 1994年
片桐卓也 「悦楽クラシック音楽講座」 KKロングセラーズ 1990年
三枝成彰 「知ったかぶり音楽論」1991年〜1992年 週刊朝日に連載
吉田秀和 「オペラ・ノート」 白水社 1991年
三浦淳史 「続・演奏家ショート・ショート」 音楽之友社 1984年
ドナルド・キーン 中矢一義訳 「ついさきの歌声は」 中央公論社 1981年
成澤玲子 「海外ライヴの贈り物」 共同通信社 1980年


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TARO

なんだか、わくわくする導入部です。

多少のオペラ・ファンならホフマンの代表的録音は当然聞いてると思いますし、実際私も聞いてはいました。
でもその人物像はあまりよく知りませんでした。
私だけでなくeuridiceさんのサイトのおかげで、かなり多くの人がホフマンについての知識を新たにできたと思います。

今後の展開を大いに期待!!
by TARO (2005-05-08 00:21) 

euridice

TARO さん
さっそく読んでくださり、ありがとうございます。
これからもよろしく!
by euridice (2005-05-08 14:21) 

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