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ヴェルディ「リゴレット」@マントヴァ [オペラ映像]

「トスカ」@ローマ、ラ・トラヴィアータ@パリなど、物語の進行するその時刻、その場所でオペラをやって、その場で映像と音声を同時収録しつつテレビで生放映するというイベントが、この9月4日、5日とイタリアのマントヴァで行われました。詳しい情報がヴィットリオ・グリゴーロ資料室にあります。ユーチューブにはあっという間に上がってますが、そのリンクもあります。

ヴェルディ:リゴレット
ri_m.jpgズービン・メータ指揮 
リゴレット:プラシド・ドミンゴ
ジルダ:ユリア・ノヴィコーヴァ
公爵:ヴィットリオ・グリゴーロ
スパラフチーレ:ルッジェーロ・ライモンディ
マッダレーナ:ニーノ・スルグラーゼ

いわゆるオペラ映画ではないのですが、経緯を知らなければ、オペラ映画に見えます。そういう意味でチューリッヒ中央駅のラ・トラヴィアータは違う印象を与えて新鮮でした。レーザーディスクの「リゴレット」は私の初視聴「リゴレット」でした。マントヴァで撮影されたオペラ映画です。

リッカルド・シャイー指揮 ウィーン・フィル
ジャン・ピエール・ポネル演出 映画版(撮影1982/録音1981)
レーザーディスク視聴
rigoletto_ld.jpg
リゴレット:イングヴァール・ヴィクセル
ジルダ:エディタ・グルベローヴァ
ジルダの乳母:フェドーラ・バルビエーリ
公爵:ルチアーノ・パヴァロッティ
スパラフチーレ:フルッチョ・フルラネット
マッダレーナ:ヴィクトリア・ヴェルガーラ
チェプラーノ伯爵夫人:キャサリーン・クールマン
モンテローネ伯爵:イングヴァール・ヴィクセル
マルッロ:ベルント・ヴァイクル(声のみ)

初めて見たのはオペラに興味を持ったころです。おもしろくて繰り返し鑑賞しました。特に重唱の場面が気に入りました。どきどき、わくわくする音楽です。ジルダが公爵の身替わりになって殺される辺りの嵐を表す合唱と重唱など、凄みがあります。あっけらかんとした公爵の女心の歌と娘の遺骸を抱くリゴレットのフィナーレも、運命 のむごさというか、人間の悲しさを余すところなく表現していると思います。

これを機に、久しぶりに再生しました。古いという感じは全然なく、演出も納得ですし、歌にわくわくします。

さて今回のその時その場所で「リゴレット」、再現リゴレットと呼ばれています。舞台装置は、実在の建物。古い建造物がそのまま残っている国だからできることでしょう。衣装扮装はもちろん台本通り、時代物。演出はとてもさらっとして毒気ゼロ。お子様にも大丈夫仕様です。公爵の館でのらんちき騒ぎ、デカダンスのデもない至極まっとうなパーティにしか見えなかったので、ちょっとがっかりしました。ポネルの映画版でさえ、かなりのはちゃめちゃ振り。ポネル以降でとても気に入った、「子どもには見せられません」のマクヴィガー演出のコヴェントガーデン上演映像は退廃の極みでした。

というわけで1幕はつまらない・・2幕も迫力不足。リゴレットの復讐への意志の高まりと、ジルダの公爵への想いの深さが迫らない。尤も、2幕初め、ジルダをさらわれて落胆する公爵が廷臣たちの仕業で、彼女が屋敷内にいることを知る・・その時の微妙な表情の変化は見事に決まっていました。悪い奴だわ〜〜と納得。そして、3幕、殺し屋兄妹登場で「リゴレット」の世界に。初体験リゴレットのポネルの映画でもそうだったのですけど、三幕の四重唱からジルダの殺害、そして公爵の寝ぼけ歌が聞こえるまでが、一番気分が盛り上がりました。殺し屋の妹、迫力でした。息もぴったりの兄妹。

主役に世紀の大物オペラ歌手を据えてこその企画だとしても、素人視聴者として言わせてもらえば、主役に納得できないのはやはり残念でした。鬼気迫るものがあってこそリゴレットだと思うのですけど、なんだかぼわ〜〜んとしてもどかしかったです。それなりのというか独自のリゴレット像も構築できていなかったと思います。そんなこと期待するのは的外れなのでしょうけど、なにしろまだまだ活躍中の現役大オペラ歌手ですから、正直期待するところもありました。その他の脇役たちも個性欠如で印象的な人はいませんでした。

やっぱりちゃんと資金協力をしているNHK、なるべく早く、BS2や教育テレビで放送してほしいものです。こういうイベントはオペラの存在を主張するのに効果絶大だと思います。


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コメント 2

keyaki

オペラに詳しい人には毒気がなくて物足りないし、ドミンゴのバリトンも違和感ありですね。
映画とはいえ、テレビ中継ということで、かなり規制をかけているように思いました。話しそのものだけでも充分衝撃的ということでしょう。
普段オペラに縁のない人たちには、好評だったようで、劇場にも行ってみようか....というコメントも見かけました。

NHKから回答がきましたので、記事で紹介しました。
まあ、時間の調整が...云々は納得できませんけど、いつかは分からないが放送はするつもりだそうです。
オペラに関しては、出資だけして、私たち視聴者に還元していないものが存在するのは事実ですから、そういうおかしなことをしないで欲しいですね。
by keyaki (2010-09-10 08:34) 

euridice

私がこのイベントでオペラを知ったらどうだったか、もう何とも言えないので残念です。でも、何かしら目新しい企画をやったり、奇抜な演出をしたり、スター性のある歌手や演出家や指揮者が登場したりする必要があるでしょう。そうでなければ、過去の遺物になってしまうでしょう。
by euridice (2010-09-12 17:09) 

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