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ストラヴィンスキー「放蕩者(あるいは 道楽者)のなりゆき」  [オペラ映像]

Rake's Progressオペラ映像手当たり次第のころ、テレビ録画で二種類見ました。ザルツブルグ音楽祭とエクサンブロヴァンス音楽祭、どちらも1996年。ストラヴィンスキーは、クラシック音楽聞きはじめ以来、「ペトルーシェカ」と「春の祭典」はなぜか小遣いはたいてLPを買って、繰り返し聴いていたし、手塚治虫の「火の鳥」が好きだった関連で、多分、同じ題名だというだけで聴いた「火の鳥」などでおなじみの作曲家でした。で、オペラもあるんだ・・ぐらいの気分で視聴。そこそこ楽しめましたが、気に入ってはまるというほどのことはありませんでした。言葉は英語です。

『舞台は18世紀のイギリス。アン(S)の恋人で、莫大な遺産を相続した破滅型の青年トム・レークウェル(T)が、誘惑者ニック・シャドウ(Br)に惑わされ、放蕩のかぎりを尽くした末、最後には精神病院で死ぬ。その他トムのロンドンでの妻であるトルコ女ババ(A)、アンの父親トゥルーラヴ(B)、競売人ゼレム(T)などが登場する。正統的なオペラの形式にのっとった新古典主義の作品』『オペラ辞典』音楽之友社刊より

ストラヴィンスキー:放蕩者のなりゆき The rake's progress

1996年エクサンプロヴァンスザルツブルグ
指揮ケント・ナガノシルヴァン・カンブルラン
トム・レイクウェルジェリー・ハドリージェリー・ハドリー
アン・トゥルーラブドーン・アップショウドーン・アップショウ
トゥルーラブ(アンの父)ジョン・マカーディジョナサン・ベスト
ニック・シャドウ(悪魔)サミュエル・レイミーモンテ・ペダーソン
ババ(トルコ人の女)ヴィクトリア・フェルガーラジェーン・ヘンシェル



久しぶりに取り出したのは、両方でタイトルロールを演じていたテノール、ジェリー・ハドリー(アメリカ 1952.6.16-2007.7.17)が、全く同じというわけではないけれど、まるでこの役を地で行ったかのように人生を終えてしまったということを知ったからです。このテノール歌手の名前を認識したのは、バーンスタインが思い入れたっぷりに演奏会形式公演をして録音もしたというオール・アメリカ人キャストの「ボエーム」のCD(1988年)

余談ですが、これに参加した主要歌手(アンジェリーナ・ルオー、ジェリー・ハドリー、トーマス・ハンプソン、バーバラ・ダニエルズ、ポール・プリシュカ)のなかで最も一般的に、と言ってもオペラファンやクラシックファンの間のことでしょうが、名前が知られるようになったのはマルチェロ役のトーマス・ハンプソンでしょうか。

ジェリー・ハドリーは、他に「イドメネオ」グラインドボーン音楽祭のイダマンテ、スキャンダルだった「こうもり」ザルツブルグ音楽祭2001年でアルフレートを、テレビ録画で見ました。バーンスタイン作曲のミュージカル「キャンディード」の主役としても活躍、また、彼自身を主役にしたオペラも作曲されたそうです。私にとっては、とりたててどうということのないテノールでしたが、今回の事があって、リンクされたYouTubeのいくつかの映像で、知らなかったレパートリーを視聴しました。非常に表現的な熱のある歌い方をするテノールなのは、ちょっと意外で、新たな発見でした。

YouTube: チレア「アルルの女」より「フェデリコの嘆き」
YouTube: ヴェルディ 「椿姫」より三重唱

亡くなった経緯は、ライフル銃でおそらくは自殺をはかり、意識不明で発見され、生命維持装置によって存命でしたが、およそ一週間後、装置が外され、永眠・・享年55歳、ということです。報道によれば、職業的にも曲がり角にあり、鬱病を患っていたとか、家庭的には離婚、それも一因だと思いますが、経済的にも破綻していたとか。人生の初めと終わりは、究極的には選べないもの。このような結末、とかく「転落」と見なされますが、輝いていたころこそが、人生の価値、最高の時こそ永遠だと思いたいです。


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コメント 7

keyaki

生命維持装置はずしちゃったんですね。一週間がめどってことなんですね。
日本でも、7月10日、空気銃(猟銃、ライフル)で自殺をはかり、脳挫傷で助かる見込みはない、と12日に報道されていました。そのとき調べたら、6月にオーストラリアのどこかの劇場でピンカートンを歌ったことになっていました......
アメリカは、離婚すると大変みたいですよね。某有名オペラ歌手は、アメリカで稼ぐと、前の奥さんに持って行かれちゃうので、ほとんどヨーロッパで歌っている、なんて話を聞いたことがあります。
by keyaki (2007-07-20 08:38) 

ななこ

知りませんでした。
そんな悲惨なこと信じられないです。

出演してたオペラは知りませんが、バーンスタインとの関わりは深かったようですね。

日本でハンプソンとデュオコンサートやってます。
情熱的過ぎてオケと全然合ってないようなところもありましたが、美声だったしきらっと光る場面もありました。
そういえば、この頃(1998年)はハンプソンも素晴らしかったと思うのですが・・・
by ななこ (2007-07-20 23:46) 

keyaki

いろいろ彼の状況が漏れ伝わってきていますが、声に問題があって5年間歌ってなかったそうです。1999年,メトでハービソンのTHE GREAT GATSBYの主役を歌ったそうですが、その時から、すでに声に問題をかかえていたようです。
その後、離婚(ピアニストで伴奏者)とか、飲酒運転で逮捕とか....で、やっと復帰したやさきだったようですね。
ティーンエイジャーのお子さんが二人いるそうです。
本当に、お気の毒です。
by keyaki (2007-07-21 10:26) 

Sardanapalus

>テノール、ジェリー・ハドリー(アメリカ 1952.6.16-2007.7.17)
えっ、知りませんでした!ななこさん同様、私も日本でハンプソンとデュオ・コンサートをやった時の映像が記憶に残っています。ネモリーノとか、嬉々として歌っていたのに…声のトラブルを抱えていたのですね。アメリカで活躍しているんだろうな~なんて勝手に思っていました。
RIP
by Sardanapalus (2007-07-21 22:33) 

TARO

ジェリー・ハドリーがそんなことになっていたとは。
そう言われてみると、確かにここのところどこかで歌ったというようなニュースは、全く入ってきてませんでしたね。
鬱病で、自殺ですか・・・、ハドリーの歌からはちょっと連想が出来ないです。
なんとも・・・。
by TARO (2007-07-22 04:30) 

euridice

keyakiさん、ななこさん、Sardanapalusさん、TAROさん

>鬱病
やはりいろいろあったにしても、これが原因だと思います。
ほんとに難しい病気のようです。
回復してきたところが、一番自殺の危険が高いとか。
ご近所の知人夫妻もこれで自殺...でした。
まず、ご主人のほうが、長年闘病中で、
奥様に伝染。ふたり一緒に・・でした。
どちらも体育の教師で、きわめて活動的、外交的で明るいタイプ。
暗い感じの人が鬱病になるというわけではないみたいです。
by euridice (2007-07-22 07:48) 

YUKI

ハドリー、亡くなってしまったのですねぇ。
大分前になりますが、TVでハンプソンとのジョイントリサイタルを観たのを今でも忘れません。
確か、その時期にオペラ雑誌にインタビュー記事が書かれていて、"普段のハンプソンはインタビューでは哲学的な答えが多かったたが・・・"って感じでハドリーと一緒でハンプソンも楽しそうであったニュアンスのコメントが掲載されていたのを覚えています。

彼も色々あったのですね。
本当に衝撃を受けています。

私もまた後ほどBlogに記事を書く予定ですので、また書けましたらTBさせて頂きますね。
by YUKI (2007-08-01 11:35) 

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