SSブログ

グノー「ファウスト」ウィーン1985年 [オペラ映像]

2010.8.29
ずっと以前にベルカント・ソサエティのビデオで見て、字幕なし、ぼんやり画質でも、感動しました。隔週刊DVDオペラコレクション(デアゴスティーニ)第26号 2010-08-17発売。

faust.jpg作曲:シャルル・グノー
指揮:エーリヒ・ビンダー
演出:ケン・ラッセル
演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
出演:ファウスト:フランシスコ・アライサ(テノール)
メフィストフェレ:ルッジェーロ・ライモンディ(バス)
マルグリート:ガブリエラ・ベニャチコヴァー(ソプラノ)
ヴァランタン:ウォルトン・グレンロース(バリトン)
シーベル:ガブリエレ・シーマ(ソプラノ)
収録場所:ウィーン国立歌劇場 《1985年収録》
収録時間:約2時間56分(2枚組)

日本語字幕付きの初発売。もちろん画質も格段によくなっていて、前には見えなかったものも見えます。日本語字幕と画質向上のお陰で、感動のレベルが間違いなくあがりました。

↓はじめて注目の台詞のひとつ

*赤ん坊を抱くマルグリートのそばを通り過ぎるかつての仲間たち
「行ってしまった
以前なら私も一緒に笑っていた
でも 今は・・」

「外国の色男は消えたんですって あははは」

「隠れていたのね ひどい
昔は他人の罪をこんなにひどくは言わなかった
でもいつか私たちの罪が無慈悲に裁かれるようになり
今は私が恥をさらしている・・」

以下、旧記事

字幕なしのビデオで観ましたが、とにかくおもしろいです。近いうちにDVDが出るかもしれないといううわさです。

有名な映画監督ケン・ラッセルの演出。心理描写にバレーが効果的に使われるのが面白いですし、目がスロットマシーンになっている黄金の子牛等々、目が離せません。マルガレーテが修道女というのは、かなりスキャンダラスだったかもしれません。彼女の終生請願式の様子まで本物さながらに演じられています。司教やら司祭、本物かしらと思ってしまうほどです。メフィストフェレスは、前回、紹介したパリの悪魔同様、スマートで小粋な上に、ユーモラスです。この二人の歌手、どことなく似ているようで、間違えてしまう人もいるみたい。パリ・オペラ座の「ボリス・ゴドノフ」では、一人はボリス、一人はイエズス会士で出演していますが、ライモンディ二役か!と思い込んだ人がいるようです。パリの映像では、シベールはあまり存在感がなかったのですが、こちらではとても印象的です。脚が悪いから、徴兵免除なんだろうとか、芸が細かいですし、違和感なく若い男性に見えるところがいいです。ヴァランタンはやはり朴訥な感じ。マルガレーテは、本物の修道女みたいに見えますから、余計にその転落が哀れです。

エリック・ビンダー指揮 ウィーン国立歌劇場1985年  
ケン・ラッセル演出 ビデオ(ベルカント・ソサエティ)

ファウスト:フランシスコ・アライサ
メフィストフェレス:ルッジェーロ・ライモンディ
マルガレーテ:ガブリエラ・ベニチャコヴァ
ヴァランタン:ウォルトン・グレンロース
シベール:ガブリエレ・シーマ

関連記事:
役についての歌手のコメント集
ファウスト
『ファウスト』(パリ・オペラ座1975年)
『ファウスト』(NHK招聘イタリア・オペラ1973年)
『ファウスト』(コヴェントガーデン2004年)  
 


nice!(0)  コメント(11)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 11

keyaki

>メフィストフェレスは、前回、紹介したパリの悪魔同様、スマートで小粋な上に、ユーモラスです
そうそう、これは分身ではなくめんどうみのいい兄貴分という設定ですね。男性同士ってこういう関係けっこう普通にありますよね。ほんとおかしくてニヤニャして見ちゃいます。

パリの方のメフィストのロジェ・ソワイエ、ほんと声も似てるんですよね。彼もパリで、ドン・ジョヴァンニとして人気だったそうです。エヴァーディング演出のドン・ジョヴァンニでもありましたが、テレビ中継放送の時は、ライモンディだったんですよね。
by keyaki (2005-08-25 10:06) 

Sardanapalus

ライモンディとソワイエ、
>二人の歌手、どことなく似ているようで、間違えてしまう人もいるみたい
>声も似てるんですよね
へえ~そんなに似てるんですか!同時期に歌っていてそっくりと言うのはなかなかないことですよね。ソワイエさんは未見なので、これもチェックしないと(笑)

>シベール
>脚が悪いから、徴兵免除なんだろうとか、芸が細かい
おっ、この設定はコヴェント・ガーデン(マクヴィカー)も採用していましたよ。やっぱり若い男が徴兵されない理由づけをしたい演出家はそういう方向に持っていくんでしょうか。
by Sardanapalus (2005-08-25 19:25) 

TARO

キリスト教圏の人が「修道女」という設定に、どういう感じ方をするものなのかが、やはり私なんかには実感としてわからないのですね。
euridiceさんのようにミッション系の教育を受けた方の場合は、やはり欧米人の感じる切実さみたいなものを、理解しやすいんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう?

もっともプレミエ時の批評では「いまどき修道女の堕落って、ケン・ラッセルは少し古過ぎるんじゃないか」みたいな批判があったように記憶してますが。
by TARO (2005-08-26 01:16) 

euridice

>キリスト教圏の人....
どうなんでしょうか・・ キリスト教圏と言っても、相当様変わりしているみたいですが、それでも、潜在意識に沈み込んだ根っこみたいなものは強いでしょうけど ・・>古すぎる みたいな批判があったのですか、なるほどと思います。

まだまだ熱心な、あるいは、惰性的信者はいっぱいいると思うんですけど、相当以前から、「私はクリスチャンではない」とはっきり言う明らかに一応キリスト教徒の若い西洋人もいて、はじめはちょっとびっくりしたこともありますし、あるスペイン人修道女は、スペインは今や「布教国」よ、なんて言ってましたし・・・ ヨーロッパ全体、少なくともいわゆる「教会離れ」は加速しているんじゃないかしら?? 例外はポーランドかな? 

>本物の修道女みたいに見えますから、余計にその転落が哀れです。
と書いたのですが、これはちょっともやもやしてます。彼女が強烈な罪悪感に捕われているらしい部分は、非常に納得の行くものになっていると感じるのですが、フィナーレの「救われる」というところでは、そこはかとない違和感があります。「修道女」より「ただの貧しい娘」のほうが、説得力があるような気がするんです・・・
by euridice (2005-08-26 07:24) 

TARO

そうですね。そういえばアバドもキリスト教徒じゃないと公言してますね。
ケン・ラッセルはイギリス人ですが、なぜかカトリックなので、宗教的なものにはこだわりたいのかもしれませんね。

>潜在意識に沈み込んだ根っこみたいなもの

これはあるでしょうね。私は無宗教ですが、根っこには何かありそうですもんね。
(無宗教という言葉を使うと、必ず怒り出す人がいますね。「外人に無宗教というとなんたらかんたら・・・」。あれはなんなんでしょう?)
by TARO (2005-08-26 13:19) 

Sardanapalus

TAROさん>
>キリスト教圏の人
>ケン・ラッセルは少し古過ぎる
イギリス在住者ですので少しだけ。はっきり言って日常的に教会に行く人は殆どいません。クリスマスのミサすらも、微妙です。スペインからの留学生には、頑張って教会を探している子がいっぱいいますが、イギリス人、ドイツ人あたりはほぼ無関心ですね。そんな風潮ですから、こういった演出を古臭いと感じる人がいても当然でしょう。

>ケン・ラッセルはイギリス人ですが、なぜかカトリック
一応イングランドの北部はカトリックも多いんですよ~。
by Sardanapalus (2005-08-26 20:22) 

NO NAME

Sardanapalusさん、こんにちは。

>はっきり言って日常的に教会に行く人は殆どいません。クリスマスのミサすらも、微妙です。

あらら、そうなんですか。私たちはなんだかんだでお寺に行きますけども(お盆、お彼岸、法事だなんだと)、もしかすると日本人よりもっと、宗教との関わりは希薄なんでしょうか?

頑張って探さないとカトリック教会が見つからないというのも、驚きです。(スペインだからカトリックの教会という意味ですよね?)

この演出はプレミエとは違うキャストで見てるんですが、私にとってはマルガレーテを修道女にされても、ものめずらしさ以上のものがないなあ・・・という感じだったんです。でももしかすると、ヨーロッパの人たちも結構そんな受け止め方だったのかもしれませんね。

>一応イングランドの北部はカトリックも多いんですよ~。

それもビックリです。あるいはケンは改宗だったかも(ちょっと記憶が定かじゃないんですが)。
by NO NAME (2005-08-26 23:16) 

TARO

すみません。上の NO NAME は TARO です。
by TARO (2005-08-26 23:17) 

euridice

宗教の本質じゃないところに背を向けるようになるんでしょうか。政教分離も進んだ事でしょうし・・・ 単純に言えば「教会離れ」だと思います。ある意味「教会」が変われば、回帰もまたありうるかと・・

日本人がお寺に行くのって、亡くなった人のためで、そこが、キリスト教の教会とはずいぶん違うと思います・・・

>あるいはケンは改宗だったかも
改宗・・の場合、やはり信仰は激しく意識的になるでしょうね・・
「教会」との関係は、個々に違うと思いますけど・・・
by euridice (2005-08-27 05:03) 

TARO

euridiceさん

>日本人がお寺に行くのって、亡くなった人のためで、そこが、キリスト教の教会とはずいぶん違うと思います・・・

そうですね、まさにここが日本人の宗教観の根本になってるところかなと思います。
私は霊なんていうのは全く信じてませんが(だったら、お盆シリーズはありゃなんだ!)、それでも亡くなった方の「成仏を願う」というような気持ちは、普通にありますし。多くの人がそうなんじゃないかと思いますね。

そういう意味では神との契約とか、一神教の人々の宗教とのかかわりとは、根本的に別物ですね。
欧米人の教会との関係というのも、なかなか日本人にはつかみづらいものの一つです。
by TARO (2005-08-27 15:16) 

keyaki

なかなか奥の深い話で盛り上がってたんですね。
こちらからもTBさせていただきますね。
by keyaki (2006-09-10 23:39) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 1