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舞台のハプニング 銃声がしない・・・ [PH]

歌手の伝記から、ちょっとおもしろいかな? のエピソード 6

『魔弾の射手』には、とにかく問題がある。ハンブルクでは鉄砲の発射装置の不首尾が繰り返しあった。

この時も銃声がしなかった。カスパーが『撃て!』と叫ぶ。それに基づいて、間違って魔弾が飛び出して銃声がすることになっているのだ。この発砲の音がすることはとにかく重要だ。そうでなければ、ワシは落ちてこないから、マックスはワシの羽を手にしない。ワシの羽なしで、どうしてアガーテの部屋に行くというのだろうか。

是が非でも、銃声問題を解決しなければならない。安全装置を外して、押す、だめだ、まさにまだ安全、前後に押す、舞台横をのぞく、そこにはピストルを持った『緊急時用射撃手』が立っている、ところが、彼は私を友好ムードでじっとみつめて、にこにこと目配せしている、つまり、私が彼を相手にふざけているのだと思っているのだ。私がどんな緊急事態に陥っているのか、彼は全く気が付きもせず、この『緊急時射手』は、のんびりとピストルを手にして、何も知らずに、そこにもたれている。

カスパーはもう何回目だろうか、「さあ、とにかく撃て!」と言っている。私は「だって、行かないんだ、ちくしょうめ」とささやく。「わかってるが、俺に何をしろっていうのかい」とカスパー。そして、また怒鳴る「撃たないのか!」私「だって」カスパー「だから、撃てよ!」

  結局、私たちは舞台にいるにすぎないわけで、ただ単にくそったれの銃声が出ないという理由だけで、なんだって絶望する必要があるだろうか。とにかく先に進むしかないのだ。

観客はすでにくすくす笑い出している、カスパーもくすくす笑いを始めている、その合間に、再三再四私に撃てと催促している、そして、突如、私は新たな視野の中にいる、こういうことが瞬時に経過する。よく考えれば、私はこう考えるべきだったのだろう。それじゃ、なぜここでだれも発砲しないのか。言い換えれば、結局大事なことは、ドンという音を立てることなのだ。そこで、私は自分で銃を構えて大声で「パンッ」と叫んだ。その結果、ワシは落ち、地獄の苦しみから解放されたのだった。

観客は笑い転げていた。さらに、事態に気がつくと、もう笑いが止まらなくなった。とうとうマックスはこう言わざるを得なかった。「それでも、この猟銃は、他の猟銃と変わりありません」


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gillman

オペラにはハプニングがありますよね。僕も昔マンハイムで魔弾の射手を見たときやはり銃声がしなかったことがあります。もっとひどかったのは1971年の9月、ニュールンベルグ歌劇場に「ニュールンベルグのマイスタージンガー」を見に行ったとき、いい席が手に入ったんですが、乱闘のシーンのところでハンス・ザックス役が本当に殴られて怪我をしてしまい、公演は中止と言うことがありました。後日、リファンドできましたが今でも残念です。
by gillman (2005-07-27 18:51) 

euridice

gillmanさん、いらっしゃいませ。
面白い体験、うらやましいです^^;

それにしても、>乱闘のシーンで本当に怪我人が出て、公演中止っていうのは残念ですね。代役が見つからなかったのかしら?それとも、そんなことがあったのに・・・って理由かしら?

ネコちゃんが三匹もいるんですね。みんな可愛い!!
うちのはチャーちゃん系で、写真と同じような仕草をよくします。
by euridice (2005-07-28 07:37) 

おさかな♪

オケの練習で、ヨハン・シュトラウスの「狩り」でも、1回間に合わなかったので、楽器以外のものでタイミングよく音を出すのって難しいんだなぁと思いました。
それにしてもホフマンさんって、舞台度胸もあるんですね♪ 素敵です・・・。
by おさかな♪ (2005-07-30 02:44) 

euridice

>舞台度胸
これがないとやれないでしょうね^^;
マネージャーの弟氏が、オペラ歌手のような仕事、自分にはとてもできないと言ってます。
by euridice (2005-07-31 07:14) 

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