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論評集-9 [1983年刊伝記]

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 マスコミの論評は、オペラ分野の専門評論を除いて、1982年という年は一年中、ワーグナーの映画、テレビ・ショー、ロック・レコードのような「異種の」芸術活動一色に塗りつぶされていた。オペラ評論家が、「金髪の、スポーツで鍛えた逞しいペーター・ホフマンのために、長い拍手喝采があった。全てのオペラ・グラスが絶え間なく彼に向けられていた」(トニ・バイリー ドイツ通信社)という具合に、パリで新オープンしたガルニエ宮でのローエングリンのペーター・ホフマンの業績を拍手喝采で、考察していた間に、大衆紙は、この「金髪の大物」の私生活に対する関心を強めはじめる。記者たちは、彼のそばにいる女性「デビー」・サッソンと並んで、六年前から、夫と別居して、彼女自身、舞台キャリアを築いているアンネカトリン・ホフマンにも興味を示している。ペーター・ホフマンの人生の中で、この二人の女性との間にあった私的な時間についても書かれる。『鏡の中の女性』誌は考察する。「最初の大成功のあと、ワーグナーとバイロイトへの出演がうまくいって間もなく結婚生活は終った。アンネはシュツットガルトで冷静に見ている。『私の夫のように突然、一躍有名になるような人は、特別の人生を送らざるをえないものです』 昨年の夏、彼女はバイロイト近郊の彼の城館を訪ねた。その時には、彼女も、職業面だけでなく、『たとえ何であれ自分自身のものを築いていた』。彼女は、シュツットガルトの小さな劇場、Theater des Westens で歌手として、舞台に立っている」

 『ラジオ時計』誌は、「女性たちが夢見る男」であるこの歌手から、「穏やかなスーパーマン」を作り出す。そして、彼は自らこう述べる。「むしろ中世に生まれたかった。それは、まだ、男性的な美徳が問われた時代だった。つまり、人が自分の言動に責任を持つこと、市民として自己の信念を主張する勇気や、何物にも惑わされない一途さなどだ。現代はすべてがあまりにもなまぬるい」この記事の中心にお金と財産というテーマが据えられている。「私にとって金銭とは奇妙なものだ。私はお金が全然ないときにしか、その価値を感じない」 さらに、彼は、田舎の住居を巡る自然のやすらぎに触発されて、告白する。「金を稼がなければならないという理由で、時間がないと言うのは、非常に矛盾しているのだけれど、時間があったら、その時は、『グリーンピース』に関わりたい。小さな城館を所有しながら、無欲について話すことはなかなかできるものではない」

 彼は、その最初の劇映画、リヒャルト・ワーグナーの生涯についての映画の中で、トニー・パルマー監督の下、作曲家ワーグナー役のリチャード・バートンと共に、カメラの前に立った。彼はワーグナーの最初のトリスタン歌手として出演し、撮影の休憩時間にこのアメリカ人の俳優と仕事や、ワーグナーや、このザクセンの音楽を非常に愛好したヒットラーについて語り合った。この場面は、ペーター・ホフマンに関する「『リング』を巡るロック」というテレビ映画に残された。ブント誌が取材した。「ホフマン、『仕事をする間に、ますます興味をもったことは、歌手の私に関して、ワーグナーがどう思っていたのだろうかということです』 バートン、『その時、ワーグナーは、あなたのことを、注目に値する声をもった注目に値する歌手だと思ったでしょう。私は誓って言いますが、ワーグナーは、あなたのことを、これこそ、その男、私が望んだ男だと思っただろうと思います。あなたは並外れて優れた俳優です。ローレンス・オリビエ卿と、ヴァネッサ・レッドグレーヴと、そして私と映画で共演したのです。あなたに言いたいのは、あなたは、これから先の人生で常に、何かをするだろうということです。このあなたの役を撃破できる映画は今後ともないでしょう』」ついでに言うと、この映画で、ペーター・ホフマンは、最初のトリスタン歌手、ルートヴィッヒ・シュノール・フォン・カロルスフェルトの役のために、芝居用のお腹をしっかりと括りつけて、とても太った状態になっている。それに、顔一面のヒゲづらで、彼だとはほとんどわからないところだ。

8331.jpg 秋には、「オペラ愛好者のためだけではない音楽作品」である「ホフマンの夢」がドイツ第二テレビ放送(ZDF)で、放映された。
 「彼がクラシック音楽(E-Musik)と娯楽音楽(U-Musik)の境界を揺さぶっているのは全く困ったことだ。それにしても、『ローエングリンから『イェスタデイ』までのごった煮シチューは、多面的というよりは、むしろ中途半端に聞こえる」という具合に、批評の評判はよくなかった分、それだけいっそう、視聴者には極めて好評だった。「すばらしい!全てが調和していた!」「この放送はとにかくすごかった。多種多様な歌を歌う、驚異的な声に耳を傾けるのは、最高だ」「ただ単に退屈なオペラを歌うだけでなく、その才能を、それとは違う傾向の音楽のためにも使う男が、ついに登場したのだ」(ゴング誌、読者欄からの引用)ヨアヒム・フッフスベルガーとの対談の夕べに際して、南ドイツ新聞は、彼のことを、「魅力的な話し上手」であると書いている。また、ニュールンベルク・ニュースは、視聴者は「オリンポスの山から神の如き者が降りて来て、彼らの楽しみに奉仕する」のを好ましく思うということを認めている。註:
ワーグナーの映画:TV映画:ワーグナー偉大なる生涯、監督 :トニー・パルマー、1983イギリス 配役、ワーグナー:リチャード・バートン/コジマ:バネッサ・レッドグレーヴ/シュノール・フォン・カロルスフェルト:ペーター・ホフマン/マチルデ・フォン・カロルスフェルト:ギネス・ジョーンズ/その他:ローレンス・オリビエ/ジェス・トーマス/ハインツ・ツェドニク/CS放送(クラシカジャパン)で全編放映されました。
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