SSブログ

論評集-8 [1983年刊伝記]

「百年目のパルジファル」1982年
(ちなみに、1985年の公演が録音されました~CD)
8388.jpg バイロイトの緑の丘における百年記念「パルジファル」は1982年、マスコミの間では、期待感を持って待たれており、その後は、それ相応に注目された。ゲッツ・フリードリヒが、その指標であるシュツットガルトの「パルジファル」に従って、肯定すべきユートピアを演出した。ゲッツ・フリードリヒ、「私たちは、『パルジファル』の権利と義務、憂うつ、優柔不断、柔和などを際立たせなくてはならない。こういうものは、ワーグナーのユートピアへの挑戦のすばらしい部分である。当時はもちろんのこと、今日では、もしかしたら、もっとずっと意味があるかもしれない」
 題名役はこのような見解に基づいてとらえられるべきであるが、何人かの評論家が題名役に注目した。「ツァイト」紙のハインツ・ヨーゼフ・ヘルボルトは、「百年記念の年に、『パルジファル』に遭遇した人は極めて正確に拍子を計算した」と述べている。そして、同時に、ペーター・ホフマンを「声管でも、支配的なものに対して新しい可能性を意識的に際立たせる者」と見ている。

8389.jpg 「ペーター・ホフマンは夢のパルジファルだ・・・ 聖杯城で、震えながら床にうずくまり、クリングゾールの乙女たちの誘惑を夢の中の出来事のように体験し、自らの罪をその身に引き受けようとする激しい感情爆発に支配されている。それに、彼は、キスの場面で子どもが成人の男に変わるのを、即座に直感的に意識させることさえできる。更に、ホフマンは、声に陰影をつける才能と、息のカーブ上を声がフォルテからピアニッシモまで下降することを可能にしている卓越した音造りによって歌唱と吟唱両面においてこの役をまばゆいばかりに造形し尽くしている」(エーリッヒ・ラップル、北バイエルン・クリーア)

 「ゲッツ・フリードリヒは、第一幕と第二幕で、この題名役の俳優をみごとに用いている。ペーター・ホフマンは、フリードリヒの手の内で、うっとりするほど若い、生き生きしたパルジファルであるばかりでなく、完璧な『純真さ』にもかかわらず、貴族的な荒々しさ、運命的な能力を持つ者という印象を与える。ということは、要するに、理想的なパルジファルだということだ」(ヨアヒム・カイザー 南ドイツ新聞)

 「ヴィントガッセンとの比較に耐えるような風格にまで、今や、ペーター・ホフマンも成長している。彼は最初のパルジファルから長い道のりを歩んで来た今、その卓越したジークムントをさえはるかに超えるものとなっている。メタリックで緻密なテノールの声は朗々と輝くばかりに、豊かな陰影を伴って、これまで以上に、鳴り響き、反抗的な愚か者から、新しい社会の知的で同情心を持った人物へと変容するこの役に対する精神的な要求は、演劇的な説得力をもって、眼前に展開される」(フリッツ・シュライヒャー、ニュールンベルク・ニュース)

gfprfact3bw.jpg 「第二幕のクンドリーとパルジファルの場面は、これ以上はあり得ないほど刺激的である。ゲッツ・フリードリヒはここで声の傑出したペーター・ホフマンを演技的にも大きく成長させている」(W.ブロンネンメーツァー、ニュールンベルク・ツァイトゥング紙)8390.jpg

 「まず最初に、ペーター・ホフマン。かつてだれも彼がこれほどすばらしく歌うのを聴いたことはないだろう。非常に美しい愚鈍な少年(ぼんやりとした知性はすでに備わっている)であれ、苦悩のうちに成熟した救済者であれ、この深遠なワーグナーの主人公が、今や完璧に、彼のものになっている」(E.リンダーマイヤー、tz ミュンヘン)

 「外見からは、間違いなく、若々しい、スポーツマンタイプの理想的事例、そして輝くばかりのヘルデンテノールの声の、題名役のペーター・ホフマンは、まさに優秀なパルジファル歌手である。彼は、そのヘルデンテノールの性質を持った、あるときは鋼のような、またあるときは絹のビロードの光沢と力のある声によって、救済の道を求める騎士を、非常な説得力で、舞台上に出現させた」(ハンネス・S・マッハー、ノイエ・プレス、コーブルグ)

 「ペーター・ホフマンは、バイロイトがずっと前から目にしてきたパルジファルのうちで、最も若者らしいパルジファルだ。満足すべき叙情的な声と危険な力の使用の間を行き来する性質をもったテノールで、ジークムントとオーバーアマガウ村の受難劇のキリストの中間的な様式化が行われている」(テア・レトマイア Thea Lethmair、アウグスブルク・アルゲマイン・ツァイトゥング紙)

 「題名役のペーター・ホフマン。初めは何というかあまりにも控えめに感じられる軽いヘルデンテノールを耳にする。それは彼の登場が与える美しい若者の姿にあまりふさわしくない。だが、しとめられた白鳥を前にして、稲妻のように同情を体験する、鍵となる場面は、感動的に演じられた。その場面は、ホフマンが第二幕で成し遂げるであろことを予感させ、花の乙女たち及びクンドリーとの遭遇の場面で、彼は優れた歌う俳優に成長している」(H.H.シュトゥッケンシュミット、フランクフルト・アルゲマイン・ツァイトゥング紙)

 「ペーター・ホフマンは題名役を、力強い高音の、第三幕での多少の弱まりを除けば、常に冴えて、若々しく、はつらつとしたテノールで、優れて献身的且つ強力に歌った」(ハンス・ベーア、「マイン・ポスト」 ヴ ュルツブルク)

 「・・・レヴァインと共演の題名役、ペーター・ホフマンを前にすれば、だれもがカラヤンの下でのザルツブルク登場のことを考えるが、彼は耳に心地よかった。彼のテノールは、若干の堅さがあるが、非常に柔軟になっていたので、今回は高音でそれほど労力を要していない」(ミヒャエル・ミューラー、ミュンヘン・メルクーア)

  「さらに、このような冷静で明確な姿勢と、根源性はペーター・ホフマン(非常に需要のあるワーグナー・テノールで、おまけになんと非常に積極的に活動しているロック歌手だ!)のパルジファルに特有であり、雄弁で輝くばかりの声の美しさ、まさに理想的な身体表現と体つきは、苦しみとつらい自己発見を通して知を得、社会的責任に目覚める、若い、純粋な愚か者にふさわしい。パルジファルの苦痛に満ちた自己発見過程及び知を得る過程、すなわちパルジファルの苦悩を味わい尽くす試練の経験と終局的に非常に人間らしい優柔さを伴う未来への希望の描写は、充満する活気と理解を要求する明瞭さによるものだ」(エッカート・シュヴィンガー、ノイエ・ツァイト、ベルリン/ドイツ民主共和国)

 ペーター・ホフマンは、すでに1980年、カラヤンの下、ザルツブルク復活祭上演で、パルジファルとして観客を魅了した。  「ペーター・ホフマンはタイトルロールを体現した。テノール仲間で彼をしのぐことができる歌手はおそらくいない。彼の『Erloeser! Heiland! Herr der Hulden! 救い主よ!救済者よ!恩寵の主よ!』は、ヘルゲ・ロスヴェンゲの夢のような舞台を完璧に実現し、コジマ・ワーグナーがはっきりと要求した、彼が本来的な響きとして有している開放的なテノールに加えて『バリトン的な』声以外の面でも人々を魅了した。これは、選ばれていた王権に至るあらゆる苦悩に満ちた成長過程がスムーズに展開していく、役に対する並外れた認識によるものだ。そして、私たちは、やっと!この作品が『アンフォルタス』ではなく、『パルジファル』と名付けられた所以を理解したのだった」(オルフェウス 1980年5月号)
gfprfbw01.jpg gfprfbw02.jpg gfprfbw03.jpg gfprfbw04.jpg
 ニューヨークも、この年、パルジファルとしてのペーター・ホフマンを体験している。「ペーター・ホフマンは、ここでは、はじめて、パルジファル役を歌う。ここ、メトロポリタン歌劇場は、セクシーで、スポーツで鍛えた筋骨たくましい若いテノールである彼を、『純粋な愚か者』として迎える。彼はテニス・スターのビョルン・ボーグのようで、より徹底的な分析にも耐え得る、カリスマ性を有している。極めて優秀な歌手兼俳優として、ホフマンは、オペラ・ファンたちをして、なぜ彼らが彼のことを『とにかく信じられないほどすばらしい』と思うのかという、その理由さえ、忘れさせるだろう」(1982年4月7日付け ニューヨーク・ポスト)

8391.jpg 「題名役のペーター・ホフマンは、金髪の魅力的な、まさにうっとりさせられる身体を持った存在の、本物の騎士のイメージだった。しかも、素晴らしいテノールの声を備えたりっぱな体格の若者だった」(1982年4月7日付け ニューヨーク・タイムズ)

 1982年、パリ、ガルニエ宮は、ペーター・ホフマンのローエングリンで開幕した。「ペーター・ホフマンは、間違いなく、現代最高のローエングリン歌手である。『ローエングリン』は、ワーグナーの朝焼けであるが、それはまた、ペーター・ホフマンの朝焼けでもある」(1982年2月2日付け フランス・ソアレー)

 「非常にすばらしい声を持った、際立った金髪の、とても美しいローエングリン、ペーター・ホフマン、彼は、この非常に静的な役が許す範囲の、ほとんど日常的なごく普通の身振りしかしないにもかかわらず、それでも表情豊かであることができる」(1982年1月31日付け ル・モンド)

 1982年、ペーター・ホフマンは、モスクワのボリショイ劇場で、ローエングリンを歌った。
註:
オーバーアマガウ村の受難劇:多分このサイトにある行事のことを示しているのでしょう。http://passionplay.tabata3.com/
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。