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出会い〜ローエングリン(2) [PH]

 ローエングリン役は、ジークムント(ワルキューレ)、パルジファルと並んで、P.ホフマンがもっとも頻繁に演じたものです。初めて演じたのは、この順序で、三番目、1975年のシーズンから5年契約を結んだシュトゥットガルト歌劇場でした。それ以来、ハンブルク、ミュンヘン、コヴェントガーデン、マンチェスター、パリ、モスクワ、チューリッヒ、ヴェネチア、ミラノ、ニューヨーク、サンフランシスコ、バイロイト音楽祭、ザルツブルク復活祭音楽祭など、ヨーロッパとアメリカの多くの劇場に出演しました。出演を記録するのに熱心でないようで伝記にもそういったリストなど一切ないため、詳しいことはわかりません。

 中でもゲッツ・フリードリヒ演出のバイロイト音楽祭(1979〜1982)のローエングリンは評判になりました。最後の年にはテレビ放送用の録画が行われ、翌年のワーグナー没後百年に合わせて放映されました。オペラがこの時ほど大勢の視聴者を得たのは珍しい事だったそうです。

 P.ホフマン自身が「特別に上出来だと心から誇りに思っている」のは、1982年、サンフランシスコでの『ローエングリン』だそうです。「ラジオで中継放送され、運のいいことにホフマンの手元に録音がある」そうです。是非聴いてみたいものです。
 カラヤンとのローエングリン(1984年ザルツブルク復活祭音楽祭)もラジオ放送されています。バイロイト音楽祭の上演は日本でも毎年NHK-FMで放送されました。

 伝記の著者によれば、ホフマンは、「オペラのわざとらしさ」の中に説得力のある「自然な動き」をもたらすことができた歌手です。オペラの登場人物と観客の現実との乖離が、オペラという音楽ジャンルが拒絶される理由であることが多いのですが、P.ホフマンのオペラへの決定的な貢献のひとつは、その演技とカリスマ性によってこの距離をうめることに成功したことでした。本当らしさが生まれ、それによって、観客は舞台上の人物と自分を同一視することが可能になり。オペラは新しい観客を獲得し、永遠に繰り返される同じような上演に飽き飽きしていたオペラ・ファンは音楽劇に対する新たな接し方を発見したのでした。

ホフマンは架空の人物を伝説の近寄りがたい敬虔な雰囲気から解き放ち、肉体的な苦痛や悲嘆、喜びや疑問を感じる者に、つまり、人間化したのです。この「人間になること」はバイロイトにおけるローエングリンでもまたはっきりと示されています。神々しい騎士の近寄りがたさを強調するのではなく、感情豊かな心の願望とあこがれ、失望と傷つきやすさが表現されています。

わずかの映像と録音でしか知らないのですが、以上のようなことに私も全面的に同感できます。
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keyaki

幸いなことに、ワグネリアンでない私は、ペーター・ホフマン以外のローエングリンを見ていません。
ビデオクリップ見ました。
最後まで逆光のままで、姿が見えないままで終わるのかと思っちゃいました。
by keyaki (2005-05-18 15:15) 

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