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R.シュトラウス「エレクトラ」新国立劇場 [劇場通い]

2004年11月17日(水)
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R.シュトラウス「エレクトラ」新国立劇場
このオペラ、いくつかの映像をつまみ食いしただけでした。認識していた音楽は、エレクトラの叫び声「アガメムノン」だけ。物語はギリシャ悲劇、サルトルの「蠅」などでどちらかと言うとオレステスに引かれていました。オペラではオレストは所詮脇役です。さて、今晩のオペラ、はじめて全体的なものが見えたという感じです。エレクトラが突出して素晴らしかったです。本当に彼女の歌(もちろん全体像を含めて)よかったです。容姿も動作も歌もエレクトラにぴったり、王女の気品がにじみでていました。叫ぶばかりでない、美しい悲しみにあふれた旋律には心底感動してしまいました。このオペラが大好きになったというわけではないですけど・・・

R.シュトラウスのオペラで、実際の舞台を見たのは、「サロメ」に続いて、二つ目です。これまでの、映像、録音鑑賞歴を言えば、 「エレクトラ」は、ゲッツ・フリードリヒ演出、ベーム指揮の映画版が最初で、「サロメ」も同様でした。これらの題材は、聖書、ワイルドの戯曲、ギリシャ悲劇などで、興味を持っていたものですから、やはりオペラもあるならとにかく見てみたいという好奇心は抑え難かったというわけです。

 「サロメ」は、カラヤン指揮のCD、そして、二番目に見たベルリン・ドイツ・オペラの映像で、ほんとに素晴らしいと思いました。新国立劇場の二つの公演(同じ演出、シーズン違い)、新日フィルの定期演奏会(コンサート形式ですが、簡単な舞台、演技付き)に行きましたが、映像&CDを超えませんでした。

 さて、「エレクトラ」ですが、映像(上記映画版、クプファー演出、アバド指揮のウィーン、メトロポリタン歌劇場の三つを視聴)ではひととおり見た、聴いた、の域を超えませんでしたが、舞台への期待感は持たせてくれた作品というレベルで、今回の公演に臨みました。エレクトラの登場と最初の声から、はっとしました。これは大当たりかも・・・。
 場内に入ったときから、舞台にアガメムノンの巨大なマスクが置かれていたのは、席が1階の前のほうだったので、じっくりと観察しましたが、これは、ウィーンの映像でも似たような状況だったと思いました。はじまったとき、これが消えて、あのすっきりした舞台になっていて、なんとなくほっとしました。あの舞台、構図的にも色彩的にも、そして明るさ加減もとても気に入りました。クプファーの演出は、もちろん映像ですから、比較するべきではないのでしょうが、暗すぎてほとんど何も見えないのですが、何かごちゃごちゃした感じで落ち着きません。
 アガメムノン殺害の凶器だった斧、アガメムノンを象徴する衣類、妹とエレクトラの衣装の差など、衣装と小道具の扱い方も、明確でよかったです。衣装と扮装に違和感がなかったのもほんとうによかったです。こういうものに加えて、舞台上の歌手の動き方、所作など全てが、歌詞と状況をそのまま表現していて、非常にわかりやすかったと思います。
 感動の源は、やはりエレクトラの歌と、オーケストラの演奏の絡み合いだったと思います。クプファー演出のエレクトラ(好きなエヴァ・マルトン)より、はるかに聴きやすく美しかったです。
王妃は私のイメージでは、もうちょっと強烈なほうがいいかしらという印象でした。顔を隠すメークなら、もっと徹底的に化粧してほしかったです。中途半端な感じで、もどかしかったです。映画版の王妃(アストリッド・ヴァルナイ)が強烈過ぎるのかもしれません。

(今、思い返してみると、本来的には深い母性的な人格が紆余曲折を経て崩壊し、苦しんでいる様子が自ずと伝わっていました。険悪ながらも切れることのない母と娘の自然な関係を感じました。二人のずれた対話の中にはある種のユーモアがあって、客席からふっと笑いが起こったりもしていました。映画版の強烈な王妃にもやはりこういうことは感じられます。オペラの森では、これが全く伝わってきませんでした。2005.3.24追記)

オレストには、映像では、失望させられたり、笑わせられたりしてしまうのですが、そんな中では、そこそこよかったかもしれません。もうひとり映像ではどうでもいいとしか思ったことがないのですが、ハッとさせられてしまったのが、エギストでした。エギストとエレクトラの場面、とっても好きでした。エギストが魅力的だなんて、すばらしいじゃないですか?

 それにしても、一度しか行けなかったのがとても残念です。(2004.11.24記)
エレクトラ:ナディーヌ・セクンデ
妹、クリソテミス:ナンシー・グスタフソン
母、クリテムネストラ:カラン・アームストロング

母の夫、エギスト:リチャード・ブルナー
弟、オレスト:チェスター・パットン
演出:ハンス・ペーター・レーマー
指揮:ウルフ・シルマー

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